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第五章 婚約志望者の秘密
5.ハンカチ会議 2
しおりを挟むエリサさんが、休業の看板を立てに行く。腰のところまでの扉じゃなく、反対がわにある本当のちゃんとした扉を、しっかりと閉めた。
「エリサ、対策は」
「ばっちりよ」
「さすがだな。勘がいい」
親父がエリサさんをほめる。
ディアスさんもまんざらでもなさそうだ。
この三人は、あと俺の母さんも含めて過去、パーティを組んでいたことがある。親父が家出……もといがいゆう、していた頃の話だ。
信頼してるんだな。そういうの、いいよな。
「えーと、仮定のお話になるのだけど、もしアリスの父親が本当にカーライル家当主だった場合、やっぱり面倒なことになるわね」
そう。気づけ。ロザリーは手を出しちゃいけない。だからアリスはロザリーに魔石を返した。わかってたから、俺たちを頼らなかったんだ。
誰かが説明したんだろうな。どこまでバレてるかが問題だけど。
「え、でも、アリスの母ちゃんは侍女だぞ。侍女とお貴族様は結婚しないんじゃないのか」
カイル。君はそのままでいてくれ。
うーん、できれば説明したくないな。そういうわけにもいかないけど。
「低位の貴族は、侍女を第二夫人のように扱うことが、あるのよ。おてつきというの。
高位の貴族になると使用人も貴族家の出の方が多くなるから、きっちり娶るのですけれどね」
うん、そうなんだ。平民が侍女をしている時に、たまに起こる問題だ。
「多くは、平民と貴族は結婚しないわ。手をつけて、子供ができたら、お腹が目立つ前にある程度の金額を渡してさようなら、よ。ひどいものね。
お父さまが本当にいなかったのなら、アリスはその例なのでしょう。……知らなかったわ」
侍女は、女性の仕事としては人気だけど、危険もつきまとう。お手つきになって更に捨てられたら、仕事がなくて食いぶちを稼ぐことに苦労するだけじゃない。
その家の妻に、子供の命を狙われることすらある。
それでも、女性の仕事の口は多くない。
政争なんてしていないで、こういうことを解決しないといけないのに。
「半分実子なのなら、ちょっと手を出しにくいわね……。肝心の伯爵家の血は、ちゃんと入っているのだから。
そこを攻めようと思ったのだけど、どうしようかしら」
いやだから攻めないでくれ。今はまずい。頼むからおうちの人に相談してくれロザリー。
そこに意外な発言が、カイルから飛び出した。
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