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第六章 ハンカチ屋奪還作戦
お母様との再会
しおりを挟む薄い水色の髪の毛をゆったりと纏めて、屋敷の入り口に佇むお母様。社交界でコペランディの至宝と呼ばれる、緑色の澄んだ瞳はゆったりと細められた。
わたくしは、リーナ、ニムルスと共に馬車を降りる。
時に厳しく、時に優しく、時に少しイタズラなお母様。ころころと変わる感情豊かな愛されるために生まれたような、そんなお方。
時に翻弄されてきたけれど。
会いたかった。ずっと、会いたかった。
「お母様!!」
はしたないと思いつつも歩調は早まる。ああ、あと数歩でお母様の胸に飛び込める。帰ってきた。わたくしは、帰ってきたんだわ!!
きぃん。
……え。
目の前で、お母様が何か棒状のものをを振りかぶっている。それを止める、横一閃の銀の閃き。
ふわりと、ピンクベージュのさらりとした薄い膜が視界を覆う。
「よく、止めましたね。リーナちゃん、だったかしら」
「……あなた誰。うちの従業員に何するの」
ちょっと待って従業員ではないわ!
ぎちぎちと何かが軋む音がする。わたくしとお母様の間に飛び込んできたリーナの影になって、何かは見えない。
「わたくしは、ロザリー……ロザリア・ハルデンツェルトの母。サランフェリス・ハルデンツェルト。この屋敷の主人の妻ですわ。ロザリーがお世話になっているようね。本当に頼もしいわ」
ぎちっとした音が止んだ。しゃらんという音が鳴って、リーナがすっと脇に退ける。二人の視線はわたくしを通り過ぎて、先ほどまで乗っていた馬車に止まった。わたくしもつられて馬車を見る。
……あれ?従者達が、捕まえた暴漢の縄を、解いている……?
え?どうして?縛り直すの?
「ふぅん。そういうこと。持っている武器の質が同じだものね。なら、邪魔しないわ」
リーナは、わたくしを見てにやっと嗤う。
少し後ろに下がったニムルスも、いつものにやにやした顔。
う、これ、いつもの嫌な予感。この二人がこの顔をしている時は、ろくなことがない。
「さぁ、ロザリー!お母様とのかんどうのたいめんをもういちど!!」
「いけ、ロザリー!愛するお母様の元へ!!」
ばっと、二人同時に手を広げてわたくしを送り出す。
……何か、あるのね?
目線をお母様に向けると、やっぱりいつもの優しい完璧な微笑み。わたくしが2年間、会いたくて会いたくてたまらなかった、お母様。
思わず駆け出しそうになる。ダメ。抑えて。
努めて優雅に歩を進め、お母様の前で、スカートを摘み膝を折る。
「思えば長き年月を、焦がれる思いで過ごしておりました。時は流れ、こうしてまたお会い出来る日をどれ……」
ふぉん。
風を切る音に、体が反応した。手に馴染んだ杖は、右手側の腰にしっかりとついている。咄嗟に抜き取り、体の前面に横向きにする。
ぎいん!
そこに、あったのは。30センチ程の短剣を振りかぶったお母様の姿。
どうして。
ふっと、コペランディの至宝たる緑の宝石が嬉しげに細められた。くすくすと、いつもの悪戯っぽい煌めきがそこには見えた。
「強く、なったわね。ロザリー」
ぐっと、お母様はわたくしの杖と交わった短剣に更に力を込める。
……勝てる気がしない。
私は、身体強化をしているのに。
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