断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。

喜楽直人

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15.最高のエンディングはファーストダンスから

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「王太子殿下。あなた様は、それほど遠くない未来において、この国を導く最も高貴な存在、君主として或らねばならない御方です。能力という才能が足りなければ、努力という才能で補わなくては。才能もない努力もしない君主に国が導けるとでも? 全てにおいて自信のない、そんな君主についていかなくてはならない部下や国民は、不幸だと思いませんか?」



 お飾り二代目社長に困らせられた鬱憤を、今こそ晴らしてくれようぞ! わははははは。

 自信ないから、周りに流されまくってコロコロ意見変えるし、すぐ逆切れするし。

 下にいる人間は本当に苦労するんだよ。

 せめて、協力したくなる人格者になって欲しいなと思う。これ、私の夢の中だから言えるんだけど。

 社長本人を前にしたら絶対に言えないけど。



「……すまない。そうか、そうだな。王太子になりたくてなった訳じゃないと言い訳していたが、国民にだって君主を選ぶことはできないんだな。私には、才能だけでなく、覚悟も足りなかったのか」



 いえ、君主は選べるよ。

 その地で働く農民ですら、家財一切もって夜逃げはできる。全部一からやり直しになるけど。

 だからこそ、そこまでするには決断に時間が掛かるんだよ。

 正社員になっちゃった後の転職と一緒だね。



「もう、殿下の隣に立つことはございませんが、いつまでも応援しております」



 エドワルド殿下に腰を抱かれながら、元婚約者にリップサービスという甘い言葉で飾り立てたトドメを刺した。あんまり直球だと恰好悪いモノね?

 相手を思いやる風を装いつつも、『てめぇの出番は永久にねぇ』と言ってやれた。

 うむ。満足。

 自分を振った男より格上でエロい男を侍らし、その差し出された手を撥ねつける。最高だ。





「では、アルテシア嬢。今度こそ、私とダンスを踊ってくださいますか?」

「よろこんで」



 どこか、遠くを見つめるような顔をしたメインヒーローを放り出して、推しから差し出された手を取る。



 私は、ふたたび始まった音楽に合わせて、くるくるとステップを踏んだ。



 

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