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第一章:神の裁きは待たない
1-3.祝宴
しおりを挟むその祝宴は日付が変わっても続いた。
誰もが幸せに酔い、大いに飲んで食べ、幸せな婚約を祝う声が上がり続ける。
広いパーティ会場では若い二人の婚約を祝う声と笑い声がそこかしこから上がる。
給仕たちは祝杯を重ねる客の間を忙しなくけれどもどこか優雅に新しいグラスや料理が次々と運ばれていった。
客たちは美酒や豪華な食事に時間を忘れて酔いしれた。
祝宴に参加していた令嬢たちも、幸せそうな婚約者たちにあやかりたかったのだろう常より長く会場へとどまっていたが、ようやく全員が自邸へと帰っていったようだ。
主賓として彼女たちより先に下がってしまう訳にはいかなかったピアもようやく帰れるようになった訳だが、まさか日付が変わってしまっているとは気が付かなかった。
予定ではピアはゾール侯爵邸へと戻る筈であったが、あまりに遅くなったこともあり、王宮内に泊っていくようにアルフェルトは勧めた。
「こんな夜更けに馬車に乗るなんて。危ないよ? 夜盗に遭うことはなくとも、足元が不安だろう? せっかくピアにも正式に部屋が用意されるようになったのだから、泊っていきなよ」
本来の予定では、ピアがゾール侯爵家へ養女として迎えられた事が縁となり嫡男であるエストに見初められて婚約者となったポラス家の縁者で富豪の娘カロラインが最後までピアに付き添い、揃って同じ馬車で帰る予定であった。
しかし、やはりどこかで複雑な思いを抱えていたのであろうエストが早い時間に悪酔いしてしまった為に、婚約者として付き添う為に先に帰ってしまっていた。
「そうね、お城でお世話になった方が良いのかもしれません。私が安全にゾール侯爵家へ戻れたかどうか、ご心配を掛けることもなくなりますものね」
アルフェルトの勧めに少し躊躇してみせたものの、ピアも暗い夜道が不安であったのだろう。結局は申し出を受けて、まだ男たちが祝宴を続けている中を部屋に下がっていった。
その後ろ姿を惚れ惚れとしながら見つめるアルフェルトの肩を、友人が掴んだ。
「幸せ者発見だ。俺にもお裾分けしてくれよ」
「誰が分けるか。ピアは俺の最愛だ。絶対に譲らん」
友人たちと軽口を交わしながら、勧められるままにアルフェルトは新しいグラスに口を付けた。
ピアはピリアとなってからも、その愛称をピアとして親しい人たちからはそのままピアと呼ばれていた。後ろの会場からはアルフェルトはもう心を隠す必要は無いのだと幸せそうに甘い声で何度もその名を口にする声が聞こえてくる。それをピアは満足げに耳にしながら、王宮の廊下を進む侍女の後ろをついて歩いていった。
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