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第3話
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――次の日。
予定通り、午前中で仕事が終わったので、おれは昼食をとった後にホームセンターに寄って家に帰ることにした。
ネットで見た猫用忌避剤、それに昨日廃棄したほうきとチリトリの代わり、そして単三電池……
久しぶりにホームセンターに行ったら、なんだか楽しくなって、ついいらないものまで買い込んだ気もする。
とりあえず、家に帰ったらこの猫用忌避剤とやらを撒いて、それでひと眠りしよう。なにせ今週は休みなしだったので、また明日から仕事だ。
しかも今回のクレームのせいで会社内のスケジュールが押してしまったので、来週も休みが潰れそうな予感がする。
「……あれ?」
アパートにだんだんと近づいていくにつれ、おれはあることに気が付いた。
なんか――人が多くないか?
胸の中にだんだんと不安がこみあげてくる。鼓動に比例して、自然と足早になる。
そして、おれはアパートの前に到着した時、ギクリと足を止めた。
アパートの前に白黒の塗装の車――パトカーが止まっていたからだ。
しかも、そのパトカーの周りには、何人もの人たちが物珍しそうな顔でアパートを見つめて、なにごとかをヒソヒソと囁きあっている。
「ひどいわねぇ……まだ一歳にもなっていない赤ん坊だっていうじゃないの」
「びっくりよね! でも、赤ん坊は無事だって。ホントよかったわよね」
「でも、このへんって人通りがすくないから、飯田さんがたまたま外に出なかったら気づかなかったかもしれないわね。本当にひどいことする人がいたもんよね、置き去りだなんて……」
おれの顔は一気に蒼白になった。
震える声で「すみません、通してください」「アパートの住人なんです、すみません」と周りの人たちに謝罪しながら、人ごみをかき分けて前に進んだ。
彼らは道を譲ってくれたものの、好奇心に満ち満ちた視線でおれを見つめてくる。
そして――
「…………ッ!」
なかば予想していたことではあったが――
おれの部屋の前には、紺色の制服を着た警察の人が二人、そしてアパートの大家さんが立って何事かを話していた。いや、話しているというよりは、大家さんが聴取をされているといった感じだ。
アパートの前にも警察官の人が立っており、やじうまが中に入らないように目を光らせている。すると、その人がおれに目をとめた。
「もしかして、アパートの住人の方ですか?」
「はい。あの……おれ、そこの103号室の人間なんですけれど、その……」
自分の住んでいる部屋番号を名乗った瞬間、警察の人の顔色がさっと変わったのが分かった。そして「こちらへどうぞ」と言われて手招きをされる。
言葉とは裏腹に、有無を言わせない口調だった。
予定通り、午前中で仕事が終わったので、おれは昼食をとった後にホームセンターに寄って家に帰ることにした。
ネットで見た猫用忌避剤、それに昨日廃棄したほうきとチリトリの代わり、そして単三電池……
久しぶりにホームセンターに行ったら、なんだか楽しくなって、ついいらないものまで買い込んだ気もする。
とりあえず、家に帰ったらこの猫用忌避剤とやらを撒いて、それでひと眠りしよう。なにせ今週は休みなしだったので、また明日から仕事だ。
しかも今回のクレームのせいで会社内のスケジュールが押してしまったので、来週も休みが潰れそうな予感がする。
「……あれ?」
アパートにだんだんと近づいていくにつれ、おれはあることに気が付いた。
なんか――人が多くないか?
胸の中にだんだんと不安がこみあげてくる。鼓動に比例して、自然と足早になる。
そして、おれはアパートの前に到着した時、ギクリと足を止めた。
アパートの前に白黒の塗装の車――パトカーが止まっていたからだ。
しかも、そのパトカーの周りには、何人もの人たちが物珍しそうな顔でアパートを見つめて、なにごとかをヒソヒソと囁きあっている。
「ひどいわねぇ……まだ一歳にもなっていない赤ん坊だっていうじゃないの」
「びっくりよね! でも、赤ん坊は無事だって。ホントよかったわよね」
「でも、このへんって人通りがすくないから、飯田さんがたまたま外に出なかったら気づかなかったかもしれないわね。本当にひどいことする人がいたもんよね、置き去りだなんて……」
おれの顔は一気に蒼白になった。
震える声で「すみません、通してください」「アパートの住人なんです、すみません」と周りの人たちに謝罪しながら、人ごみをかき分けて前に進んだ。
彼らは道を譲ってくれたものの、好奇心に満ち満ちた視線でおれを見つめてくる。
そして――
「…………ッ!」
なかば予想していたことではあったが――
おれの部屋の前には、紺色の制服を着た警察の人が二人、そしてアパートの大家さんが立って何事かを話していた。いや、話しているというよりは、大家さんが聴取をされているといった感じだ。
アパートの前にも警察官の人が立っており、やじうまが中に入らないように目を光らせている。すると、その人がおれに目をとめた。
「もしかして、アパートの住人の方ですか?」
「はい。あの……おれ、そこの103号室の人間なんですけれど、その……」
自分の住んでいる部屋番号を名乗った瞬間、警察の人の顔色がさっと変わったのが分かった。そして「こちらへどうぞ」と言われて手招きをされる。
言葉とは裏腹に、有無を言わせない口調だった。
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