手癖の悪い娘を見初めた婚約者「ソレうちの娘じゃないから!」

音爽(ネソウ)

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お馬鹿同士の出会い

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「まったく不愉快極まりない!相手が公爵家だからと毎回なぜ俺が向かわなければならん!」
ルワンは庭園をノシノシと歩き不平を漏らす、侍従達は黙って後を追う。決して諌言など口にしない、癇癪を起されたら面倒だからだ。

「なにが初恋だ、あんなすかした女など一生好きになるものか!だいたいだな……うわっ!」
「きゃっ!?」
ルワンが垣根を曲がろうとした時だ、誰かとぶつかってしまった。
カッカしていた所に邪魔が入り激高するルワン。

「誰だ!転んだら汚れるだろうが!洗濯代を請求するぞ!」
「ひっ……申し訳ございません……わたし、わたし、あぁどうしましょう」
薄茶の髪をツインテールに結んだ小柄な女性が、縮こまって座り込んでいた。
焦げ茶の大きな瞳を潤ませルワンを上目つかいで見つめている、それは庇護欲を掻き立てる姿だった。
小花を散らしたレモンイエローのドレスがとても似合っている。

「な、なんて可憐で愛らしいんだ!キミ、名前は?」
「え?わたしはミルフィです……失礼しました」
少女は恥じらうような仕草で困った困ったとしきりに呟き、ポロポロ涙を流した。

「あぁすまない、怒ってないよ。それより素敵なドレスを汚してしまったね。そうだ、お詫びに新しいのを買いに行こう」
「え!?で、でも困ります。わたしは洗濯仕事がありまして」
(困ったわ、洗濯前のお嬢様のドレスをこっそり着てたのバレちゃう!クビだわ!)


「なんだって?令嬢のキミが洗濯させられてるなんて!そんなの許されない!そうか、きっとあのクソブスがやらせてるんだな!あの気が強そうな相貌はやはり性悪なんだ!」
「え……?」
(何言ってんのコイツ!?わたしのこと令嬢と間違えてんの?バカ?)

「さあさあ、遠慮は要らないよミルフィ嬢。流行りのドレスを仕立てようじゃないか!」
ぐいぐい押しの強いお貴族様に洗濯メイドはアワアワ、身分を正すのも言えず馬車に押し込められてしまう。
それに丁寧な扱いを生まれて初めて体験した少女は浮かれた。加えて見目だけは上等の腹黒令息にうっとり見惚れてしまう。

プラチナブロンドにアイスブルーの整った顔立ちは、絵本で読んだ憧れの王子そのものだった。
(だ、だいじょうぶ!ほんのちょっと夢を見るだけよ、いまだけ仮初の姫気分を味わうだけ)

「それくらい神様も許してくれるわよね……」
揺れる馬車の中、小さな呟きは誰にも聞こえない。
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