完結 愛人の子 それぞれの矜持

音爽(ネソウ)

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仄暗い部屋の中でアルメル嬢は気が付いた、薄ボンヤリする頭で何が起こったのか整理する。
茶会の後、サロンからでて御不浄を済ませ身支度を整えた。それから、薔薇園の方へ向かう途中で……。
なんとか起き上がろうと身を捩るが両手両足を縛られており、口には猿轡が掛けられている。

「ひっ」
急に意識が戻ると現実を叩きつけられて恐怖が襲ってきた、ガタガタと震える令嬢は足元に侍女が眠らされていることに気が付く。
「んー!んんー!んんんんん!」
どうにか侍女を起こそうと必死な令嬢は藻掻いたがどうにもならない。いつしか涙目になってフルフルと嗚咽を漏らすことしかできなくなった。


すると誰かがやって来る足音に気が付いた、足音は複数あり再び恐怖が湧き上がる。
「ちゃんとロザリーなんでしょうね、それにしても無様な様子を見てやりたいわ、オホホホ」
女の声がした聞き耳をたてたが声に覚えがない、どういうことだろうと彼女は思う。

「ああ、あの儚げな美少女をこの手で抱きしめてあげられるなんて……ふふ、私は果報者だよ」
男の声は興奮しており、妙にテンションが高い、やはり聞き覚えがない。
バン!と乱暴に扉が開きヅカヅカと入ってくる音がした、アルメルは身を固くして恐怖に目を閉じた。寝転ぶそこは壁際で、出入り口から背を向けている。

「さあ、その姿を見えてくれよ。Missロザリー。ふふふ」
グイッと肩を掴まれて反転すれば誘拐犯が目の前に現れた、目を瞑ったままの彼女は息も出来ずに震えるしかできない。
「ん?なんだ……猿轡のせいかな、どうにも違うように見えるのだが」
「ッ!」

太り肉ふとりじしの体格に気がついた男は素っ頓狂な声をあげて「違う!人違いじゃないか!」と宣った。それを聞いた女が「なんですって」と驚愕した。

「人違いってどういうことよ!あぁ、本当だわロザリーではないわ!どうしてこうなるのよ」
癇癪を起したらしい女は瓦礫の山に当たり散らし、ガランガランと音を立てた。
「だから言ったのよ、闇ギルドの連中は信用ならないって!何もかもめちゃくちゃだわ」
「う、そういうなよ、まさか人違いで拐してくるなんて思わないじゃないか」

アルメルを余所に喧々諤々とやらかす二人は今すぐ闇ギルドに文句をつけてやろうと息巻いていた。
「とにかくこの処遇はどうするの?」
「そうだな……顔を知られたのは大分拙い、脅しをかけた所で誰かに漏らす危険がある……ヤルか」
「やる?どういう事よ」
「決まっているさ、殺すんだよ」

最後の一文を聞いたアルメルは「ひぃぃ」と声を上げた、じりじりと後退するもそれは無駄な抵抗というものだ。
「殺すってそんな無茶な……ね、ねえ乱暴にするしか方法がないの?」
「呆れたなキミは誘拐劇に加担した時点で覚悟を決めるべきだった」
「そ、そんな!私は嫌がらせ程度できれば良いって」

急に風当りが悪くなったことで女の方が狼狽していた。ロザリーを辱めることが出来れば良かったのにと宣う。
「そんなそんな!私は嫌よ!そんなむごたらしいことは!」
「はあ、何もキミが何かしろなどとは思わないよ、闇ギルドの連中にやらせれば良い」
大柄な男はクツクツと笑い、残酷なことを言う。

「あぁ、ごめんよ。人違いで殺されるなんて怖いよね?でも仕方ないんだ」
「……!」
舌なめずりをしてアルメルの顎を取った男は柔らかな笑みを浮かべていた。虫も殺さぬような優男は二面性を持っているようだ。加虐嗜好を持った男は張り手をしようと手を翳す。

だが、アルメルの頬には痛みはやってこなかった。
代わりに男のくぐもった声が「うぐっ」と響いて彼女を驚かせた。

「そこまでだ、悪辣非道なことをやらかすとはな呆れたぞアルファノ・ロドニクス。並びにアリソン・オドラン、誘拐の角でお縄につけ」
セレスタン・オリオールはアルファノに鉄拳を食らわしていた。さらには私兵を連れて屋敷中を包囲していた。


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