完結 愛人の子 それぞれの矜持

音爽(ネソウ)

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「なんの事か私にはさっぱりですわ、暴漢を仕掛けたと言いますが、そもそもマリュス子爵など交流がございません」
一連の首謀者と見られるマチルド・バイヤールはそう言って事情聴取を取る騎士にソッポを向いた。今回はオリオール家の私兵が動いて捜索した為に尋問官は携わっていない。それでも太々しい夫人の対応は騎士たちをウンザリさせる。


「お家騒動のようなものらしいが、夫人には手を焼く。高位貴族だから余計だ。爵位が上の者が聴取するように訴えろ、流石に逆らえないだろう」
「は、そのように手配いたします。それにしても愛人の娘を貶めたいとは今どき珍しくもないでしょうに」
「……余計なことは言うな貴族の矜持は複雑なのだ」
騎士隊長は面倒そうに書面にサインすると次官に手渡す。


一方で事件に巻き込まれたマリュス子爵家では、バイヤール卿が自ら出向き謝罪に伺っていた。
「この度は御令嬢を巻き込み申し訳ないことをした、相応の賠償をさせていただきたい」
ゆっくりと腰を落とすバイヤール卿に子爵は「滅相もない」と大慌てである。

「しかし、我が家の御家騒動に巻き込んだのは事実、遠慮されては困るのだ」
「は、はあ。では娘が誘拐された事件を無かったことに……実害がなかったとはいえ娘が傷物などと噂がたっては困りますので」
「それはもちろんだ!我がバイヤール家の名誉にかけて事件の子細は闇に葬る。もちろん加担した者には相応の罰をあたえよう」
こうして互いの家は事件の事には触れない約束を交わして幕を閉じた。


「もう頭を上げてくださいな、ロザリー様」
「でも、私の身代わりになって……あぁなんという事でしょう恐ろしいわ」
さめざめと泣くロザリーをアルメルは慰めて「もう終わったことです」と苦笑した。御令嬢は思ったよりも豪胆でいざとなったら刺し違えても反撃しますと述べる。

「まぁ、アルメル様ったら頼もしい」
「ふふ、まあ実際は震えて何も出来なかったのだけど、でもこうして私は無傷ですわ」
彼女は力瘤を作ってみせて笑うのだ、それを見たロザリーは漸く安堵の表情を見せる。

***

「それでバイヤール卿は離縁すると言ったのだって?事件の悪質さを鑑みれば打倒だと思うが」
セレスタン・オリオールは気難しい顔をしてそう言う、彼は事件当時、私兵を投じて活躍したことをひけらかすことなく言い募る。
「うん、キミには世話になった、妹が必死の形相で友人を助けて欲しいと泣きついてきたと時は驚いた。何事かと思ったよ」
心痛な面持ちのクレマンは複雑な胸中なことだろう、実母がこれほどまでに思いつめていたとは想像していなかった。

事件の首謀はだいたいの辺りをつけて動いたのが功を奏した。
やはり日頃から粘着していたアルメルとアルファノが関与していた、闇ギルドも一網打尽にと行きたいところだがそうは事は運ばない。

「ただの妨害だと軽く見てしまった、従妹のアリソンの事もそうだ。まさかロザリーの事を辱める気だったとはね」
それに加担したアルファノ・ロドニクスも憎き敵として認定していた。加虐的だと聞かされた時は拳を握り締めて殴りたいと思った。

「まあ後は彼女の心のケアになるのだが、そこは安心してくれ給え」
セレスタンはにっこり微笑むと楽し気にしていた。
「それはどういう……?あ、まさか」


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