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良くある政略結婚でルシアナ・アシュトン侯爵令嬢はダナトー伯爵家三男ニコラスを婿として迎えた。
婚約前の見合いの席ではニコラスは温厚で優しい笑みを浮かべる17歳の美青年だった。ルシアナは愛はなくともこの人ならと婚約を承諾したのだ。きっと幸せな家庭が築けると夢を描いた。
だが、そんな物は幻想に過ぎなかった。
結婚してから彼の態度は徐々に冷えたものになっていき、半年後には妻とほとんど口を利かなくなった。何がいけなかったのかと彼女は悩みなんとか交流を試みるが「うるさい」と一言発して逃げられてしまう。
「なんてこと、子を授かったというのに……父の愛を知らずに育つ子になってしまうわ」
ルシアナは膨らみだした下腹を撫でながら、せめて私だけでもたくさんの愛情を注ごうと目を閉じた。悲しんでいては母体と腹の子に悪い影響が及ぶと思ったからだ。
夫の愛情を諦めた妻は機嫌を覗う事をやめた。
纏わりつかなくなった妻の変化を感じたニコラスは「ふん」と鼻を鳴らし、これで好き勝手に行動できると嗤う。侯爵家の仕事はそつなく熟していた彼は義両親に咎められはしなかった。誰かの目がある時は夫らしい振る舞いを演じていた、どこまでも姑息で卑怯な男である。
すっかり関係が冷えた夫婦は幸せそうな仮面を被って生活するのであった。
ニコラスの態度が豹変したのは理由がある、家督を継ぐのは妻であり、やがて生まれるであろう子が爵位を継ぐことを知ったからだ。婚姻した自分が爵位を継げると勘違いして入り婿となった彼は憤慨した。
血を重んじる貴族にとって血縁でない男子はただの伴侶にすぎない、己の知識不足を恨むべきだが、ニコラスは逆恨みをしたのだ。
「こんなことがわかっていれば、あんな女となど結婚しなかった!」
暇になると愛人の家に入り浸り婚家の愚痴ばかりを吐くようになって酒を煽り爛れた情交に溺れる。愛人の名はメイジー、平民だが特殊な才能を生かしてそれなりの財を作っている。容姿も良くて金を持っている彼女をニコラスは気に入っているのだ。
「なぁ仕事は順調か?」
「えぇ、お陰様で。最近は王族にも私の薬を献上しているのよ」
「そうか、お前が調合する魔法薬は副作用も無く素晴らしいものな」
王族に覚え目出度いと聞いたニコラスは益々とメイジーを可愛がり、その反面で妻ルシアナの存在が邪魔だと思うのだ。
「あぁいっそ離縁を……しかし侯爵家相手だからな慰謝料も莫大だろう」
「あら、邪魔ならば消しちゃえば良いのよ」
魔法薬師メイジーは蠱惑な笑みを浮かべてニコラスを不義の道へと誑かすのだった。
「薬は毒にもなるの、知っているでしょう」
婚約前の見合いの席ではニコラスは温厚で優しい笑みを浮かべる17歳の美青年だった。ルシアナは愛はなくともこの人ならと婚約を承諾したのだ。きっと幸せな家庭が築けると夢を描いた。
だが、そんな物は幻想に過ぎなかった。
結婚してから彼の態度は徐々に冷えたものになっていき、半年後には妻とほとんど口を利かなくなった。何がいけなかったのかと彼女は悩みなんとか交流を試みるが「うるさい」と一言発して逃げられてしまう。
「なんてこと、子を授かったというのに……父の愛を知らずに育つ子になってしまうわ」
ルシアナは膨らみだした下腹を撫でながら、せめて私だけでもたくさんの愛情を注ごうと目を閉じた。悲しんでいては母体と腹の子に悪い影響が及ぶと思ったからだ。
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「こんなことがわかっていれば、あんな女となど結婚しなかった!」
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「あぁいっそ離縁を……しかし侯爵家相手だからな慰謝料も莫大だろう」
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「薬は毒にもなるの、知っているでしょう」
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