完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
1 / 12

落とした手鏡

しおりを挟む
アメリア・エンドルフ公爵令嬢は学園に入学して半年経つが、平凡が過ぎる日々に飽きていた。
少し頑固な彼女には婚約者がいない、釣書きが来ても悉く無視をしていた。
両親のような恋愛結婚を望んでいたが、一向に恋の予感はまったくなくて絶望している。
「兄が家督を継ぐもの、私はいっそ職業婦人にでもなろうかしら?」
好きでもない男と無理矢理結婚しても幸せになれる気がしないと思うのだ。

そんな彼女が貴族生徒用のカフェに向かう途中の廊下で声を掛けられる。またご機嫌伺いの生徒かとウンザリした。だが、社交用の笑顔を貼り付けて振り向き「なにか?」と言った。
背後には何かを拾ったらしい男子生徒が微笑んで立っていた。見覚えのない人物に頭を傾げる。
ネクタイの色から同学年の平民クラスの子だと理解する。

「いきなり失礼、手鏡を落とされたようなので」
「あ、あら。ありがとうございます」
分厚い絨毯が敷かれた廊下では落下音が小さすぎて聞こえなかったようだ。ウッカリさに恥ずかしいと思うアメリアだが彼の発する言葉に固まる。

「割れてなくて良かった、……今日もとても美しいね」
「え!?」
面識のないはずの生徒に容姿を褒められた彼女は吃驚した、”今日も”という箇所に過剰に反応してしまったのだ。
「あ、あの……今日もというのは」
「ええ、いつも見ているから。はい、どうぞ落とさないでね」
彼は爽やかに微笑むと反対方向へと去って行った、平民故なのか敬語なしの気さくな態度にアメリアは新鮮さを感じた。

「お名前くらい聞いておけば良かったわ」
お礼も碌に言えないまま別れてしまったことを彼女は後悔する。
「公爵令嬢として礼節に欠ける言動だったわ……」
ちゃんとお礼をしたいと思った彼女の頬には薄っすらと紅がさしていた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おにょれ王子め!

こもろう
恋愛
レティジアは公爵令嬢で、王子フリードの婚約者。しかし現在、フリードとの関係はこじれまくっている。 見た目は気が強そうだが実は泣き虫なレティジアは人知れず毎日涙を流し、フリードはなんだかイライラしている。 そんな二人の前に現れるのは……!

運命の人は貴方ではなかった

富士山のぼり
恋愛
「パウラ・ ヴィンケル……君との婚約は破棄させてもらう。」 「フレド、何で……。」 「わざわざ聞くのか? もう分かっているだろう、君も。」 「……ご実家にはお話を通されたの?」 「ああ。両親とも納得していなかったが最後は認めてくれた。」 「……。」 「私には好きな女性が居るんだ。本気で愛している運命の人がな。  その人の為なら何でも出来る。」

わたくしを許さないで

碧水 遥
恋愛
 ほら、わたくしは、あなたの大事な人を苛めているでしょう?  叩いたり罵ったり、酷いことをしたでしょう?  だから、わたくしを許さないで。

裏切られた令嬢は婚約者を捨てる

恋愛
婚約者の裏切りを知り周りの力を借りて婚約者と婚約破棄をする。 令嬢は幸せを掴む事が出来るのだろうか。

【改稿版】婚約破棄は私から

どくりんご
恋愛
 ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。  乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!  婚約破棄は私から! ※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。 ◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位 ◆3/20 HOT6位  短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……? 基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。

絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした

松ノ木るな
恋愛
 アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。  もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。

私の何がいけないんですか?

鈴宮(すずみや)
恋愛
 王太子ヨナスの幼馴染兼女官であるエラは、結婚を焦り、夜会通いに明け暮れる十八歳。けれど、社交界デビューをして二年、ヨナス以外の誰も、エラをダンスへと誘ってくれない。 「私の何がいけないの?」  嘆く彼女に、ヨナスが「好きだ」と想いを告白。密かに彼を想っていたエラは舞い上がり、将来への期待に胸を膨らませる。  けれどその翌日、無情にもヨナスと公爵令嬢クラウディアの婚約が発表されてしまう。  傷心のエラ。そんな時、彼女は美しき青年ハンネスと出会う。ハンネスはエラをダンスへと誘い、優しく励ましてくれる。 (一体彼は何者なんだろう?)  素性も分からない、一度踊っただけの彼を想うエラ。そんなエラに、ヨナスが迫り――――? ※短期集中連載。10話程度、2~3万字で完結予定です。

処理中です...