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悪夢を見た朝に
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その晩、彼女はとても不愉快で悲しい夢を見て魘されていた。
『嫌よ行かないで!私は貴方がいれば何も要らないの!お願いよ!あの事は何も咎めないから!だから、お願い……貴方だけは側にいてよ』
見覚えのない面差しの男性が誰かの視点を通して自分を見てくる、その人物はとても冷たい目をしていた。縋って来る女性を心底毛嫌いしてるようだ、無関係のはずの己の心が泣き叫ぶ女と同調して悲愴感でいっぱいになった。
待ってという哀願を無視してその男性は『忘れろ』と言って去って行く。なんて慈悲の欠片もないことか。
誰かが号泣する声が頭にガンガン響いて辛い心で狂いそうだ。
『見捨てないで』と自分の口から零れた、泣く女と同調し過ぎた彼女は苦しくて仕方がない。
「ううん、変な夢ねぇ……」
頭痛のせいで目覚め、漸く悪夢から解放された彼女はボンヤリした視界に映るいつもの天井を見て息を吐いた。苦しかった心中がまだ奥の方でドクドクと煩い。そして、頭の下の枕が涙で濡れて酷く冷たかった。
「好きでない男に捨てられる夢を見たわ……とっても不快」
朝の支度に訪れた侍女に悪夢のことを打ち明けた、彼女は苛立ちながら顔を洗い口を漱いだ。
「まぁ、フィオ様!それは良くないですね。一日が台無しになってしまいますよ」
「そうでしょう?たかが夢のくせにこれほど神経を疲弊されるなんてね」
目覚めても青い顔色のままな主を見て、夢占いをしないかと侍女が誘う。
「夢占い、私はそういう荒唐無稽なのは信じないのよ」
「まぁまぁ、そうおっしゃらず!間もなく王都学園に入園なさるし小物などを揃えに街へでますでしょ?出先の次いでですわ」
そう言われた彼女フィオネ・ステラロザーデ侯爵令嬢は「気晴らしになるのなら」と了承する。
実は占いをしたいのは侍女の方で、街でよく当たると言う評判の店へ行きたいらしいのだ。
「ふふ、可愛いところがあるじゃない。ねぇアリネ?」
「そりゃあ年頃ですから、恋占いに興味があります!お屋敷に若い男達はいますが何か違うんですよねぇ身分も合わないし」
朝食を摂ってすぐに二人は街へ出ていた、馬車に揺られながら今日一日の過ごし方について話し合う。年齢が近いことから令嬢と侍女は友人のように親しい。
占いの館にはすぐに着いたが、かなりの人気で長蛇の列が出来ていた。令嬢がうんざりした顔をしたので侍女は慌てて予約しておきましょうと提案した。
「うん、そうね。時間を無駄にしては勿体ないから」
共に来ていた執事が列に並び順がきたら予約しておきますとお辞儀をした、申し訳ないと思ったフィオネは予約の手付金と褒美を手渡す。
「さぁ、私達は雑貨店巡りをしましょうか。新しいハンカチが欲しいのよ、それから手帳と筆をね」
「はい!参りましょう!」
***
予約が取れたという報せを持って執事が合流し、指定された午後二時に占いの館へ再度訪れた。
出入り口は小さいのに入館してみるとかなり奥行きがあり驚かされる。
「何か空間魔法でもかけてあるのかしら?」
「さすがお嬢様、御名答です!望みの占いによって部屋が異なってドアの色が違うんですよ」
「まぁ、手の込んでいる事」
桃色のドアは当然の如く恋占い、黄は健康、緑は商売、青は総合運。そして目当ての夢占いは黒に星が描かれたドアだった。
侍女のアリネは迷わず桃のドアへ突進していった。主そっちのけで消えたので執事と護衛が文句を言う。
「いいのよ、気にしてないわ。待たせてしまうけどごめんね」
「お気になさらず、仕事でございますから」
執事は腰を折ると「どうぞ、楽しんでください」と言った。フィオネは手をヒラヒラ振るとドアを開けて占いに挑む。
入室するとすぐ目の前に小さなテーブルセットが目に入り、対面に占い師の老婆がニコニコと笑って「ようこそ」と言って招き椅子にどうぞと促す。緊張が解れた彼女はさっそく椅子に腰を下ろした。
「さて、どのような夢をご覧になられた?」
「はい、実は――」
客人の話を粗方聞くと占い師は表裏が真っ白なカードを五枚並べて、一つだけ選ぶように指示をした。
違いがわからないまま彼女は右から二番目のカードを指差した、これが気になると述べる。
指差したカードをヒラリと返すと真っ白だったはずの面に暗紫の星が三つ並んで描かれているではないか。魔法の一つだろうと思うフィオネはさほど驚かない。
「ふむ、未来を暗示する夢と出たわねぇ、もし、あなたに恋人や将来を約束した殿方がいるのなら別れが近いのよ」
「え……」
身に覚えがあった彼女は占いの結果を聞いて固まってしまう。夢の中で見た、泣いて縋る女性の姿を思い出し凍り付いた。
「そんな……あの方と別れて、人生の道が違えてしまうなんて」
幼馴染で婚約者の顔を思い浮かべた彼女は堪えられずに涙を零した。占いなど信じていなくとも、やはり悪い結果がでれば悲しいものなのだ。
『嫌よ行かないで!私は貴方がいれば何も要らないの!お願いよ!あの事は何も咎めないから!だから、お願い……貴方だけは側にいてよ』
見覚えのない面差しの男性が誰かの視点を通して自分を見てくる、その人物はとても冷たい目をしていた。縋って来る女性を心底毛嫌いしてるようだ、無関係のはずの己の心が泣き叫ぶ女と同調して悲愴感でいっぱいになった。
待ってという哀願を無視してその男性は『忘れろ』と言って去って行く。なんて慈悲の欠片もないことか。
誰かが号泣する声が頭にガンガン響いて辛い心で狂いそうだ。
『見捨てないで』と自分の口から零れた、泣く女と同調し過ぎた彼女は苦しくて仕方がない。
「ううん、変な夢ねぇ……」
頭痛のせいで目覚め、漸く悪夢から解放された彼女はボンヤリした視界に映るいつもの天井を見て息を吐いた。苦しかった心中がまだ奥の方でドクドクと煩い。そして、頭の下の枕が涙で濡れて酷く冷たかった。
「好きでない男に捨てられる夢を見たわ……とっても不快」
朝の支度に訪れた侍女に悪夢のことを打ち明けた、彼女は苛立ちながら顔を洗い口を漱いだ。
「まぁ、フィオ様!それは良くないですね。一日が台無しになってしまいますよ」
「そうでしょう?たかが夢のくせにこれほど神経を疲弊されるなんてね」
目覚めても青い顔色のままな主を見て、夢占いをしないかと侍女が誘う。
「夢占い、私はそういう荒唐無稽なのは信じないのよ」
「まぁまぁ、そうおっしゃらず!間もなく王都学園に入園なさるし小物などを揃えに街へでますでしょ?出先の次いでですわ」
そう言われた彼女フィオネ・ステラロザーデ侯爵令嬢は「気晴らしになるのなら」と了承する。
実は占いをしたいのは侍女の方で、街でよく当たると言う評判の店へ行きたいらしいのだ。
「ふふ、可愛いところがあるじゃない。ねぇアリネ?」
「そりゃあ年頃ですから、恋占いに興味があります!お屋敷に若い男達はいますが何か違うんですよねぇ身分も合わないし」
朝食を摂ってすぐに二人は街へ出ていた、馬車に揺られながら今日一日の過ごし方について話し合う。年齢が近いことから令嬢と侍女は友人のように親しい。
占いの館にはすぐに着いたが、かなりの人気で長蛇の列が出来ていた。令嬢がうんざりした顔をしたので侍女は慌てて予約しておきましょうと提案した。
「うん、そうね。時間を無駄にしては勿体ないから」
共に来ていた執事が列に並び順がきたら予約しておきますとお辞儀をした、申し訳ないと思ったフィオネは予約の手付金と褒美を手渡す。
「さぁ、私達は雑貨店巡りをしましょうか。新しいハンカチが欲しいのよ、それから手帳と筆をね」
「はい!参りましょう!」
***
予約が取れたという報せを持って執事が合流し、指定された午後二時に占いの館へ再度訪れた。
出入り口は小さいのに入館してみるとかなり奥行きがあり驚かされる。
「何か空間魔法でもかけてあるのかしら?」
「さすがお嬢様、御名答です!望みの占いによって部屋が異なってドアの色が違うんですよ」
「まぁ、手の込んでいる事」
桃色のドアは当然の如く恋占い、黄は健康、緑は商売、青は総合運。そして目当ての夢占いは黒に星が描かれたドアだった。
侍女のアリネは迷わず桃のドアへ突進していった。主そっちのけで消えたので執事と護衛が文句を言う。
「いいのよ、気にしてないわ。待たせてしまうけどごめんね」
「お気になさらず、仕事でございますから」
執事は腰を折ると「どうぞ、楽しんでください」と言った。フィオネは手をヒラヒラ振るとドアを開けて占いに挑む。
入室するとすぐ目の前に小さなテーブルセットが目に入り、対面に占い師の老婆がニコニコと笑って「ようこそ」と言って招き椅子にどうぞと促す。緊張が解れた彼女はさっそく椅子に腰を下ろした。
「さて、どのような夢をご覧になられた?」
「はい、実は――」
客人の話を粗方聞くと占い師は表裏が真っ白なカードを五枚並べて、一つだけ選ぶように指示をした。
違いがわからないまま彼女は右から二番目のカードを指差した、これが気になると述べる。
指差したカードをヒラリと返すと真っ白だったはずの面に暗紫の星が三つ並んで描かれているではないか。魔法の一つだろうと思うフィオネはさほど驚かない。
「ふむ、未来を暗示する夢と出たわねぇ、もし、あなたに恋人や将来を約束した殿方がいるのなら別れが近いのよ」
「え……」
身に覚えがあった彼女は占いの結果を聞いて固まってしまう。夢の中で見た、泣いて縋る女性の姿を思い出し凍り付いた。
「そんな……あの方と別れて、人生の道が違えてしまうなんて」
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