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蔓延する噂と虚実
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「ごきげんよう、姫巫女。ご一緒しても良いかな?」
学食にて先にテーブルを陣どっていたドナジーナとそのコバンザメ軍団のところへ向かいリカルデルは親し気に声をかける。あの王子が自ら話しかける様子を見た生徒たちはどよめく。
「ま、まぁあ!リカルデル様、やっと私の魅力に気が付いて?うふふ、嬉しいわ!どうぞ隣へ」
「ありがとう、お邪魔するよ」王子は言われるままに席に着いてにこやかに礼を述べる。
侍っていた輩が突然のことに”どういうことか”と驚愕の表情を浮かべる、そんなことは丸っと無視をして王子は定食を持ってきた側近に「すまない」と声をかけて食事を始める。
真横に憧れのキミを招いたドナジーナは瞳を輝かせてウットリと見惚れて食べかけのパンを皿に落とす。
「おいおい、そんなに見つめられたら穴が空いてしまうよ」
「うふぅ、だって麗しい王子が側にいたら当然そうなりますわ!なんという眼福、そして至福のひと時」
頬を桃色に染め上げた彼女は王子の拝顔をやめようとはしない。
「ちゃんと食べて、キミの可憐な顔が窶れてしまっては皆が悲しむよ?」
「え、あらそうですわね!ちゃんと食べなきゃ!」
諭された姫巫女は再び食事を開始してモシャモシャと咀嚼する、だがとても褒められた所作ではなく見苦しい食べ方をする。王子の胸中では『豚が餌を貪っているようだ』と軽蔑をしていた。
特にスープを啜る音がひどくて王子は食欲が減退していくのが辛かった。
一方、リカルデル王子とは別行動をとるフィオナは学友と共に食事の席にいた。場所は食堂ではなくカフェである。軽食しかでないが彼女らには十分なようだ。
「よろしかったのフィオ様」
「え?あぁ食事のことなら別にそれにここのデザートはとても美味しいのが揃っているでしょ」
フィオナはそう言って笑い二つ目のケーキにとりかかる。
「王子のことですわ、今日の彼の行動はどうかと思いますのよ。講義の際も姫巫女と座っていましたし、婚約者を蔑ろにしているように見えました」
「そう?学友の一人として接している程度でしょ、気にしてないわ」
「う~ん。フィオ様がそうおっしゃるのなら……でも困ったことがあったら相談してくださいね?」
「ありがとう嬉しいわ」
友人の気遣いに感謝してフィオナは美しい笑みを浮かべる、王子と同様に計画のことを知る彼女は至って落ち着いている。
これはただのパフォーマンスなのだと抵抗する心に言い聞かせるのだ。
誑かされる被害者が増えないようドナジーナの側にいて牽制し監視役を担うことになったリカルデル王子は言いたくもない台詞を吐いて過ごす。己に嫌悪しつつも愛を試される試練だと思い耐えた。
だがその行動は事情を知らない他人から見れば巫女を慕っているように映る。そうなれば良くない噂を嬉々として囁く迷惑な厄介者は出てくるものだ。
「王子は侯爵令嬢から姫巫女へ心が移ろうた」と誰かが一言いえば忽ちに学園内に広がって行く。疑心暗鬼でいる者も少なからずはいたが、やはり多くの者はそれを信じた。
「あぁ……理由はわかっていても常に行動して彼女に微笑んでいる姿を見るのは辛い」
心から信じたいがそれを疑う気持ちが消えてくれないとフィオナは苦しみだした。王子の気持ちはともかくとして、度々に王子と姫巫女が寄り添うように行動をしているのを目にすればモヤモヤしたものは浮かんでしまう。
放課後、中庭を散策する巫女と侍る男女達、その筆頭にいるのはリカルデル王子である。
偶然に出くわしたフィオナは思わず目を背けてしまう、やり過ごして逃げるように去って行く婚約者の姿に気が付いた姫巫女は厭らしい笑みを浮かべてケラケラと笑った。
行動とは逆に王子の瞳に悲しみの色が滲む、任務とはいえ彼女を悲しませているのだとわかってしまえば王子自身の心も抉られた。
「後で詫びのカードでも送ろう」
「え?何か言いましたか?」
無遠慮にも王子の腕に手を絡ませる姫巫女に、内心は嫌悪しつつ笑みを浮かべる王子はなんでもないさと言う。
「すっかり暑くなってきたと思ってね、避暑はどこにするか悩ましい」
「そうなのですね!私はやっぱり海が見える街かしら父様が所有する別荘は山ですのよ、静かな湖畔も涼しいでしょうけどやっぱり海がいいわ!」
王都から大分離れている海へは、移動も宿泊にもかなり金がかかる。姫巫女の装いから察するに湯水の如く散財しているとわかる。特注らしい制服は一般生徒のものとは仕立てが丁寧で色合いも違う、そしてさりげなく付けている装飾はダイヤとルビーを無駄に散りばめている。
王子でさえタイピンやボタンに宝石など加工したりはしていない、民の血税は他の有意義な事に使うものだという姿勢だ。
王子はそれを見る度に顔が歪みそうになったが悟られない様に取り繕う。それでも苦悶の表情が僅かに出てしまい、口数はどんどん減った。
「断然に海よ!ね?王子もこの夏は共に遠出しましょうね」
空気が読めないらしい姫巫女と取り巻きたちは「良い夏季休暇となるだろう」と勝手に盛り上がっていた。
学食にて先にテーブルを陣どっていたドナジーナとそのコバンザメ軍団のところへ向かいリカルデルは親し気に声をかける。あの王子が自ら話しかける様子を見た生徒たちはどよめく。
「ま、まぁあ!リカルデル様、やっと私の魅力に気が付いて?うふふ、嬉しいわ!どうぞ隣へ」
「ありがとう、お邪魔するよ」王子は言われるままに席に着いてにこやかに礼を述べる。
侍っていた輩が突然のことに”どういうことか”と驚愕の表情を浮かべる、そんなことは丸っと無視をして王子は定食を持ってきた側近に「すまない」と声をかけて食事を始める。
真横に憧れのキミを招いたドナジーナは瞳を輝かせてウットリと見惚れて食べかけのパンを皿に落とす。
「おいおい、そんなに見つめられたら穴が空いてしまうよ」
「うふぅ、だって麗しい王子が側にいたら当然そうなりますわ!なんという眼福、そして至福のひと時」
頬を桃色に染め上げた彼女は王子の拝顔をやめようとはしない。
「ちゃんと食べて、キミの可憐な顔が窶れてしまっては皆が悲しむよ?」
「え、あらそうですわね!ちゃんと食べなきゃ!」
諭された姫巫女は再び食事を開始してモシャモシャと咀嚼する、だがとても褒められた所作ではなく見苦しい食べ方をする。王子の胸中では『豚が餌を貪っているようだ』と軽蔑をしていた。
特にスープを啜る音がひどくて王子は食欲が減退していくのが辛かった。
一方、リカルデル王子とは別行動をとるフィオナは学友と共に食事の席にいた。場所は食堂ではなくカフェである。軽食しかでないが彼女らには十分なようだ。
「よろしかったのフィオ様」
「え?あぁ食事のことなら別にそれにここのデザートはとても美味しいのが揃っているでしょ」
フィオナはそう言って笑い二つ目のケーキにとりかかる。
「王子のことですわ、今日の彼の行動はどうかと思いますのよ。講義の際も姫巫女と座っていましたし、婚約者を蔑ろにしているように見えました」
「そう?学友の一人として接している程度でしょ、気にしてないわ」
「う~ん。フィオ様がそうおっしゃるのなら……でも困ったことがあったら相談してくださいね?」
「ありがとう嬉しいわ」
友人の気遣いに感謝してフィオナは美しい笑みを浮かべる、王子と同様に計画のことを知る彼女は至って落ち着いている。
これはただのパフォーマンスなのだと抵抗する心に言い聞かせるのだ。
誑かされる被害者が増えないようドナジーナの側にいて牽制し監視役を担うことになったリカルデル王子は言いたくもない台詞を吐いて過ごす。己に嫌悪しつつも愛を試される試練だと思い耐えた。
だがその行動は事情を知らない他人から見れば巫女を慕っているように映る。そうなれば良くない噂を嬉々として囁く迷惑な厄介者は出てくるものだ。
「王子は侯爵令嬢から姫巫女へ心が移ろうた」と誰かが一言いえば忽ちに学園内に広がって行く。疑心暗鬼でいる者も少なからずはいたが、やはり多くの者はそれを信じた。
「あぁ……理由はわかっていても常に行動して彼女に微笑んでいる姿を見るのは辛い」
心から信じたいがそれを疑う気持ちが消えてくれないとフィオナは苦しみだした。王子の気持ちはともかくとして、度々に王子と姫巫女が寄り添うように行動をしているのを目にすればモヤモヤしたものは浮かんでしまう。
放課後、中庭を散策する巫女と侍る男女達、その筆頭にいるのはリカルデル王子である。
偶然に出くわしたフィオナは思わず目を背けてしまう、やり過ごして逃げるように去って行く婚約者の姿に気が付いた姫巫女は厭らしい笑みを浮かべてケラケラと笑った。
行動とは逆に王子の瞳に悲しみの色が滲む、任務とはいえ彼女を悲しませているのだとわかってしまえば王子自身の心も抉られた。
「後で詫びのカードでも送ろう」
「え?何か言いましたか?」
無遠慮にも王子の腕に手を絡ませる姫巫女に、内心は嫌悪しつつ笑みを浮かべる王子はなんでもないさと言う。
「すっかり暑くなってきたと思ってね、避暑はどこにするか悩ましい」
「そうなのですね!私はやっぱり海が見える街かしら父様が所有する別荘は山ですのよ、静かな湖畔も涼しいでしょうけどやっぱり海がいいわ!」
王都から大分離れている海へは、移動も宿泊にもかなり金がかかる。姫巫女の装いから察するに湯水の如く散財しているとわかる。特注らしい制服は一般生徒のものとは仕立てが丁寧で色合いも違う、そしてさりげなく付けている装飾はダイヤとルビーを無駄に散りばめている。
王子でさえタイピンやボタンに宝石など加工したりはしていない、民の血税は他の有意義な事に使うものだという姿勢だ。
王子はそれを見る度に顔が歪みそうになったが悟られない様に取り繕う。それでも苦悶の表情が僅かに出てしまい、口数はどんどん減った。
「断然に海よ!ね?王子もこの夏は共に遠出しましょうね」
空気が読めないらしい姫巫女と取り巻きたちは「良い夏季休暇となるだろう」と勝手に盛り上がっていた。
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