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番を求める獣
その世界には多種多様の種族が棲んでいた、とりわけ対極な存在であったのは人族の国々と獣人の国だ。僅かな親交はあれど深く関わることは避けている。見た目はもちろんだが身体能力があまり違い過ぎたからだ。
そして、その生き方も大きく異なった。
どの種族よりも体力があり、大きな体躯にも恵まれていて身体能力に優れていた獣人族は他を見下してる傾向があった。逆に獣人ほどの力がない人族は智慧に恵まれて豊かな暮らしを築き上げている。こうして、年数を重ねていくうちに文化の違いは大きく開く結果になった。
小柄な人族は何処よりも大きく豊かな街を造った、それは山のように高い建造物と魔道具と言う便利なもので埋め尽くされていた。力が足りないのならばそれを補うものを造れば良いのだという考えだ。
優れた技術を磨きあげた彼らは他の種族を凌駕する力を手に入れたのである。しかし、獣人たちは「小さき者は大きなものを造りたがる滑稽な輩である」と小馬鹿にする。
その矮小なる者たちが世を征服するどの力を有する事になるとはまだ知らない。
獣人が統べる国の一つに、”フォルヴェス”という名の中規模の国があった。
そこの第一王子シンギル・イェナ・フォルヴェスが運命の番を見つけたことで大きく時代が動くことになる。
獣人の中には極稀に魂で惹かれ合うという唯一無二の伴侶を娶る者がいる。成人したある日、それに目覚めたシンギル王子は「西の人族の国に番がいる」と咆えた。
奇しくも彼は遠い先祖の人間の血を引く隔世遺伝の姿で生まれて、見目がとても人族に近かった。豊かな赤い髪を持ったその青年は所謂先祖返りという者だった。大きな体躯は獣人のそれだが体毛が極端に少ない。だが、残念なことに賢くはなかった。
時代の流れか物珍しさなのか、彼の精悍な顔つきは獣人のメスを引き付ける。毎夜、閨を共にする者に困ったことはないほどモテた。
「だが私は変わる時が来たようだ!番以外の者と交わることはもうしないぞ!」
「ほう、随分殊勝なことよ。それで番のメスは手に入れられそうか?」
父王に問われた王子は一瞬言葉に詰まるが、交渉の途中だと言って遠い目をした。部下に探らせた所、番の正体は隣国の姫カリノ・コルジオンという人族の王女だと知った。
「番とは良いものですよ父上、遠く離れていても心の奥底で逢瀬しているような……それでいて切ない。狂おしいほどに愛しいのです。惹かれるのは姿かたちではないのですよ」
恍惚とした表情で熱く語る息子に、父王は「余は十分に満たされて居る」と鼻で笑う。正室はもちろん、側室、愛妾を15人も持つ王は番がいなくとも愛に溢れた人生を謳歌している。
王は直接会ったこともない相手にすっかり懸想している息子の異常さを見て若干畏怖する。
「私は結婚したら愛妾など持ちませんよ、番だけで良いのです」
「知らん、価値とは個それぞれであろうが、どう押し付けられても考えは変わらんよ」
「父上……」
互いに愛の在り方が違い過ぎてしまった親子は分かり合うことは叶わないようだ。
「それよりお前、番が応じなかったらどうするのだ?添い遂げられなかった番はそれは耐え難い悲しみに苦しむと伝承にあるが」
「おや父上、それはどちらかが儚くなった場合ですよ。番は引き合うものです、抗えない運命なのですよ。先方が私を拒絶するなどあり得ないことだ」
王子はただ闇雲に番の女性を欲したわけではなく子細を調べた上で発言しているようだった、だがそれでも父王はあまりに傾倒するのは危険なことだと警告した。
「不測の事態に備えることを念頭に置いて行動するように、お前は大切な世継ぎなのだからな、例え番を得られなくとも腐ってはならん」
「――わかっておりますよ、父上」
父王の警告は頭ではわかってはいるものの、やはり番という存在を知った王子はどこか浮ついていた。
そして、その生き方も大きく異なった。
どの種族よりも体力があり、大きな体躯にも恵まれていて身体能力に優れていた獣人族は他を見下してる傾向があった。逆に獣人ほどの力がない人族は智慧に恵まれて豊かな暮らしを築き上げている。こうして、年数を重ねていくうちに文化の違いは大きく開く結果になった。
小柄な人族は何処よりも大きく豊かな街を造った、それは山のように高い建造物と魔道具と言う便利なもので埋め尽くされていた。力が足りないのならばそれを補うものを造れば良いのだという考えだ。
優れた技術を磨きあげた彼らは他の種族を凌駕する力を手に入れたのである。しかし、獣人たちは「小さき者は大きなものを造りたがる滑稽な輩である」と小馬鹿にする。
その矮小なる者たちが世を征服するどの力を有する事になるとはまだ知らない。
獣人が統べる国の一つに、”フォルヴェス”という名の中規模の国があった。
そこの第一王子シンギル・イェナ・フォルヴェスが運命の番を見つけたことで大きく時代が動くことになる。
獣人の中には極稀に魂で惹かれ合うという唯一無二の伴侶を娶る者がいる。成人したある日、それに目覚めたシンギル王子は「西の人族の国に番がいる」と咆えた。
奇しくも彼は遠い先祖の人間の血を引く隔世遺伝の姿で生まれて、見目がとても人族に近かった。豊かな赤い髪を持ったその青年は所謂先祖返りという者だった。大きな体躯は獣人のそれだが体毛が極端に少ない。だが、残念なことに賢くはなかった。
時代の流れか物珍しさなのか、彼の精悍な顔つきは獣人のメスを引き付ける。毎夜、閨を共にする者に困ったことはないほどモテた。
「だが私は変わる時が来たようだ!番以外の者と交わることはもうしないぞ!」
「ほう、随分殊勝なことよ。それで番のメスは手に入れられそうか?」
父王に問われた王子は一瞬言葉に詰まるが、交渉の途中だと言って遠い目をした。部下に探らせた所、番の正体は隣国の姫カリノ・コルジオンという人族の王女だと知った。
「番とは良いものですよ父上、遠く離れていても心の奥底で逢瀬しているような……それでいて切ない。狂おしいほどに愛しいのです。惹かれるのは姿かたちではないのですよ」
恍惚とした表情で熱く語る息子に、父王は「余は十分に満たされて居る」と鼻で笑う。正室はもちろん、側室、愛妾を15人も持つ王は番がいなくとも愛に溢れた人生を謳歌している。
王は直接会ったこともない相手にすっかり懸想している息子の異常さを見て若干畏怖する。
「私は結婚したら愛妾など持ちませんよ、番だけで良いのです」
「知らん、価値とは個それぞれであろうが、どう押し付けられても考えは変わらんよ」
「父上……」
互いに愛の在り方が違い過ぎてしまった親子は分かり合うことは叶わないようだ。
「それよりお前、番が応じなかったらどうするのだ?添い遂げられなかった番はそれは耐え難い悲しみに苦しむと伝承にあるが」
「おや父上、それはどちらかが儚くなった場合ですよ。番は引き合うものです、抗えない運命なのですよ。先方が私を拒絶するなどあり得ないことだ」
王子はただ闇雲に番の女性を欲したわけではなく子細を調べた上で発言しているようだった、だがそれでも父王はあまりに傾倒するのは危険なことだと警告した。
「不測の事態に備えることを念頭に置いて行動するように、お前は大切な世継ぎなのだからな、例え番を得られなくとも腐ってはならん」
「――わかっておりますよ、父上」
父王の警告は頭ではわかってはいるものの、やはり番という存在を知った王子はどこか浮ついていた。
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