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商売

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初日は店内の清掃で忙しかった、せっかく立派でも不衛生極まりなかったのだ。
俄然やる気満々なハンナレッタだったが、肝心の従業員たちがソッポを向いている。誰も彼も平民出の女主人を舐めているのだ。

「あの、皆さんも手伝ってくださいな」と声を掛けたのだがけんもほろろな態度で返された。
「はあ?勝手にやれば良いだろう、俺は帰るよ」
「私もぉ、掃除なんてだるくって」

彼らはそう言って帰ってしまう。

「はぁ、仕方ないわね」
ハタキをパタパタやっていると下女の子達がやってきて手伝いますと申し出てくれた。

「まあ!ありがとう助かるわ!」
「いいえ、掃除は私たちの仕事ですから」
「そうです、ここの人たちは意地悪で道具を貸してくれないんです」

「そうだったの、えーとお名前は?」
下女の子らはスーヤとラベンと名乗った、仕事が出来て嬉しいと彼女らは張り切ってくれた。賃金の分は働いて当たりり前ですと彼女らは笑う。


掃き掃除と雑巾がけをすれば見違えるほど綺麗になった。
「あとは窓ふきね、頑張りましょうね」
「はい!」
「はいです」

***

二日目、掃除をサボった従業員たちは何喰わぬ顔をして店内にいた。小奇麗になった店をみて「ふん」と鼻を鳴らす。
「どうせ、客なんてこないのにさぁ」
「ほんとだよな」
彼らはまったくやる気を見せず店の奥の従業員休憩室に入り浸りだった、ハンナレッタは呆れていないものとした。

「さて、商売ですよ~美味しいものを提供しなくちゃ!」
「美味しいものですか?」
下女の二人は興味津々の様子だ、ここは軽食を売る店だと聞いている。ならば駄菓子でもいいはずだという。

「これはね膨らし粉をいれて焼いたものです、それにこのソーセージをいれて」
「わあ」
ジュウジュウと焼けて行く丸いものに釘づけた、甘い生地にソーセージを入れてソースを絡めれば似非タコ焼きの出来上がりだ。

「面白い味です!不思議」
「おいしい……」

彼女ハンナレッタには前世の記憶があった。理由はわからないが兎に角転生したらしい。
「次はカルメ焼きを作りますよ~甘くてサクサクなんです」

そう言うと彼女は店先に出て準備をした、簡易コンロとお玉を使って砂糖を煮溶かして最後に重曹を入れた。
「これがタイミングが難しいのよねぇ……」
クルクルと回して焼き上げれば香ばしい香りが漂うカルメ焼きが出来た。


「はい出来ました!ご賞味あれ、熱いから気を付けてね」
「いただきます」
「……だきます」

そのうちに道を行く人々が食いついてきた、不思議に膨れる駄菓子に興味を惹かれたらしい。
「なんだ、なんだ!?面白いなぁ」
「甘くてカリカリ……」

「ちょっと私にも焼いて頂戴な!」
「こっちにも!」
「毎度あり~」

こうして客足は伸びて久々の大繁盛となったのである。



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