3 / 6
兄と弟
しおりを挟む「ねぇ、兄さん。あの店にお嫁さんは行ったきりなの?挨拶したいんだけど」
弟で騎士をしているアドリアノが久しぶりに帰宅した、彼は寄宿舎暮らしでほとんど家にいないのだ。
「ああ?挨拶だと……そんなもの要らないさ、あの女は平民だからな、用が済んだらそのうち離縁する」
「そんな酷い!まるで飼い殺しじゃないか」
生真面目な彼は苦言を行ってくるが兄のボニートはどうでもいいと相手にしない。
「ようするにアイツが持っている商才を買っただけなんだ、面白いものを売っている。傾いた商売がうなぎ上りさ」
「……兄さん」
アドリアノは軽蔑の眼差しを送るがどこ吹く風だった、彼は黙っていても金が入る金蔓が出来たと喜んでいる。
「そのうち酷い目に合うからね」
「ふん、酷い目とはなんだ?教えてくれよ、アハハハハッ」
***
アドリアノは気の毒な嫁の様子を見るべく店に立ち寄った。どんな子だろうと興味もあった。彼女は店の外で何かを必死に焼いていた。もっと近くで見たいと思った。
「いらしゃいませ!」
「あ、ああ。あのそれは何だい?」
「カルメ焼きと言います、おひとつ如何?」
「カルメ……面白いなひとつ貰おうか」
早速と焼き始めた彼女はジュウジュウと砂糖を煮溶かして、白い粉を入れるとかき混ぜる。するとどうだろう、ぷっくりと膨らんでそのまま固まった。
「どうぞ、お熱いですから気をつけて」
「うん、ありがとう」
それはカリッとした食感で舌の上でフワリと解けた。焦げた砂糖が香ばしい。彼は夢中になってそれを食べた。
「やぁ、甘いなひとつで満足だ」
「ふふ、そうなんです。クセになるけど一個で十分ですよね」
彼女はニコニコと笑みを浮かべてそう話す、興味がわいた彼は身分を明かすことにした。
「まあ、ボニート様の弟君でしたか申し遅れました、ハンナレッタと申します」
「こちらこそよろしくハンナレッタ、兄が申し訳ない……その」
口籠る彼に対して「いいんです」と少し悲し気に言う。2年後には解放されるからと笑うのだ。
「最初からそういう契約なのです、店を立て直すという条件で」
「ふぅむ、売り上げの取り分についてはちゃんとしてる?後で泣きをみるよ」
純売上に対して1割程度貰えると言った、だがそれは可笑しいと彼はいうのだ。
「交渉については一任してくれないか?悪いようにはしないよ」
「ええ?宜しいのですか?」
「ああ、もちろん。いくらなんでも兄は取り過ぎだからね。何も手伝わない癖に図々しい」
彼は早速動いた、商業ギルドの友人に頼み込み間に入って貰うのだ。
兄は最初ブツクサと文句を垂れいたが違法行為に当たると臭わせると譲歩し諦めた。
「いいか、4割だ!それ以上は譲らないからな!」
「ああ、良いよ。兄さん英断に感謝するよ」
「ふん!」
67
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる