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兄と弟
しおりを挟む「ねぇ、兄さん。あの店にお嫁さんは行ったきりなの?挨拶したいんだけど」
弟で騎士をしているアドリアノが久しぶりに帰宅した、彼は寄宿舎暮らしでほとんど家にいないのだ。
「ああ?挨拶だと……そんなもの要らないさ、あの女は平民だからな、用が済んだらそのうち離縁する」
「そんな酷い!まるで飼い殺しじゃないか」
生真面目な彼は苦言を行ってくるが兄のボニートはどうでもいいと相手にしない。
「ようするにアイツが持っている商才を買っただけなんだ、面白いものを売っている。傾いた商売がうなぎ上りさ」
「……兄さん」
アドリアノは軽蔑の眼差しを送るがどこ吹く風だった、彼は黙っていても金が入る金蔓が出来たと喜んでいる。
「そのうち酷い目に合うからね」
「ふん、酷い目とはなんだ?教えてくれよ、アハハハハッ」
***
アドリアノは気の毒な嫁の様子を見るべく店に立ち寄った。どんな子だろうと興味もあった。彼女は店の外で何かを必死に焼いていた。もっと近くで見たいと思った。
「いらしゃいませ!」
「あ、ああ。あのそれは何だい?」
「カルメ焼きと言います、おひとつ如何?」
「カルメ……面白いなひとつ貰おうか」
早速と焼き始めた彼女はジュウジュウと砂糖を煮溶かして、白い粉を入れるとかき混ぜる。するとどうだろう、ぷっくりと膨らんでそのまま固まった。
「どうぞ、お熱いですから気をつけて」
「うん、ありがとう」
それはカリッとした食感で舌の上でフワリと解けた。焦げた砂糖が香ばしい。彼は夢中になってそれを食べた。
「やぁ、甘いなひとつで満足だ」
「ふふ、そうなんです。クセになるけど一個で十分ですよね」
彼女はニコニコと笑みを浮かべてそう話す、興味がわいた彼は身分を明かすことにした。
「まあ、ボニート様の弟君でしたか申し遅れました、ハンナレッタと申します」
「こちらこそよろしくハンナレッタ、兄が申し訳ない……その」
口籠る彼に対して「いいんです」と少し悲し気に言う。2年後には解放されるからと笑うのだ。
「最初からそういう契約なのです、店を立て直すという条件で」
「ふぅむ、売り上げの取り分についてはちゃんとしてる?後で泣きをみるよ」
純売上に対して1割程度貰えると言った、だがそれは可笑しいと彼はいうのだ。
「交渉については一任してくれないか?悪いようにはしないよ」
「ええ?宜しいのですか?」
「ああ、もちろん。いくらなんでも兄は取り過ぎだからね。何も手伝わない癖に図々しい」
彼は早速動いた、商業ギルドの友人に頼み込み間に入って貰うのだ。
兄は最初ブツクサと文句を垂れいたが違法行為に当たると臭わせると譲歩し諦めた。
「いいか、4割だ!それ以上は譲らないからな!」
「ああ、良いよ。兄さん英断に感謝するよ」
「ふん!」
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