公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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人魚の街篇

夢見る少年

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岩に張り付いた貝をゴリゴリ削ぎ、やや錆びたナイフで開く。

獲れたての岩ガキをパクリと噛む「んー!ここは天国か!」とろりとした旨味と磯の風味が堪らない。



「人間にもこれを好む者がいるなんてね」

「そう?見た目がアレだからかな、一見は岩の欠片だしね」

俺達の日々のご飯は現地?で済ますスタイルになった、たまに火は使うけどね。





マルメディに看病されて数日、俺はすっかり体力を戻した。

それから自分の置かれてる状況を把握する、ここは地球じゃなくて異世界という事。

25歳ではないこと、別の名があったかもしれない事。

転生者かもしれない事。(これは否定しようもない)



いろいろ思うことがあるけど、海の中の生活は案外暮らしやすくて静かだ。



彼女は半魚人で、疎まれて生活してることを聞いて心が痛む。

半魚だなんて卑下するけど、彼女はとても綺麗だし献身的でとても優しい女性だ。

くるくると踊るように泳ぐ彼女は、降り注ぐ陽の光に煌めいて女神のよう。

夢を見てるみたいだと思った。





「足にヒレが着いてて気持ち悪いでしょ?」

「絹を纏っているみたいで綺麗だよ、鱗だって虹色に光って宝石みたいだ」

マルメディはありがとうと小さく言って微笑み返す。



うーん、見た目がクソガキの俺では口説きに聞こえないよな。

小さな手足と薄い胸にガッカリする、記憶に残る自身はイケメンじゃないけどもうちょい……。

でも割れた鏡に映った自分は美少年と言えなくもない?





もうちょいワイルドさがでれば。

「マル。大人になるまで待ってて!頑張るから」

「……?よくわからないけどわかったわ、ふふ。頑張ってソータ」



マルの年齢を聞いたけど要領をえなかった。

「人魚族は成年から以降は数えないの、泡と消えるその日まで気ままにノンビリ暮らすものなのよ」

成人後はほとんど見た目が変わらない、それが原因で「不老不死の妙薬」の材料として狙われた時期があったという。



「ふふ、いまでは夢物語よ。それに不老不死になったとして不幸なだけだわ」

その言葉になにかチクリとした、なぜなのかわからないが……。

マルもなにか思い出したのか、とても悲しい顔で揺れる海面を見上げていた。





「ソータ、陽があるうちにベッドを整えちゃいましょう。きっと砂と貝殻が転がり込んでるわ」

それから俺達は昆布を刈り取り新しい海藻シーツを貼り付けた。



のんびりゆったり、なんて静かで優雅な日々。

でもどうしてだろう、なにか大切な事を忘れてしまったようで……。



「颯太」ではない別の名で俺は呼ばれていた気がした。

いいや、呼ばれてた……。
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