公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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トラブルプランツ スタンピード篇

日和見な影

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獅子王の抱える隠密が音もなく闇を滑空していた。
素早く飛翔し、真っ黒な被膜を広げる彼らを目視するのは容易ではない。


影はとある建物の軒裏に逆さにぶら下がった。
閉められたカーテンでその姿は隠れ、気取られる心配はない。

『さてさて、猿共の浅知恵とやらを集めねばねェ』
超音波と鋭い聴覚で室内の様子を探る、誰の気配も感じなかった。
それから、窓枠の僅かな隙間へ液体のように体を変化させるとまんまと侵入する。


床にべたりと落ちると人型になり、家探し開始である。
先ずは監視魔道具を無効化させる、破壊ではないので疑われようがない。
奇しくも猿たちが作った魔導遮断機キャンセラーがここで役立つのである。

一番に厳ついデスクを最初に漁った、ふたつ穴の鍵付きの引き出しに指先を充てた。
『俺に鍵は通用しないよォ』

ドロリと指を液状に変化させて二つ同時に鍵を回した、すると奥からカチリと音が鳴る。
スルルと開けた引き出しには帳簿と僅かな金銭が入っていた。

『これで騙せる?浅いねェダメダメだねェ』
容易く二重になっている箇所を外して笑う。


隠し引き出しから大量の魔道具図面を発見し、口にライトを咥えると小型キャメラにおさめていく。
もちろんそれは非公開なうえに違法な魔道具図案だった。


『ふっふーん、いいねいいね!いっそ王に渡さず他国に流せば一財産できるねェ』
牙を剥き出しにして狡賢い笑みを零す、だが『なーんてね欲は身を亡ぼすからねェ』と肩を竦めた。


それから、戸棚や書棚を粗方物色して回ると、腑に落ちない顔をする。
『足りないねェ、うんうん。悪知恵猿がこの程度の秘密しか持たないはずがないねェ』


床と壁を音波で探る、すると書棚の奥に空間があることに気が付いた。
『秘密はドォーコだ?コレかな、アレかな?クヒヒヒヒヒッ……』

声なき笑いを頭の中に響かせて、物色する影は細身でしなやかな身体をクネクネさせて楽しそうに探す。
すると不自然なところに気が付いた。


『おやおやァ……おかしいね、おかしいねェ。ランプなのに何故に煤の臭いがしないのかなァ?クヒヒ』
目をつけたランプの下方に僅かな筋を発見する。


視力が悪い彼は指先の感触でそれをなぞりほくそ笑んだ。
『クフ、痕跡はっけーん!ほんとうの秘密を見せておくれよ』


彼がランプを下げると書棚が音もなく動くのを見て、思わず歓喜の声を上げそうになった。
空間の先の実験室になんなく入り込む。
キャンセラーを起動はしたが、監視魔道具はなかった。


『ふんふん、学のない俺にはなんの実験やらサッパリだねェ』
彼はやむを得ず、実験中と思われる機器の写真をおさめ、ガラス瓶に残る液体をサンプルとして少量入手した。

それから実験日誌を撮影して満足に頷く。


「お邪魔さまァ」


僅か5分の仕事だった。
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