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フェインゼロス帝国篇
閑話 兄の手紙とお菓子
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「エド兄さま!お手紙とお菓子が届いたわ!」
「レオ兄様から!?」
王宮の隠し部屋に住みはじめて数カ月、隠遁生活に飽きてきた頃にそれは届いた。
少しの隙間があれば侵入してくる蝙蝠男によって、居室のテーブルに籠いっぱい詰まった菓子が鎮座されていた。
「シュー菓子となにかしらコレ。ツヤツヤの緑のものが入ってるわ、甘い香草みたいね」
手紙そっちのけでお菓子に食いつくミルを、破顔して見つめるエドワードは兄からの手紙を開封する。
「あぁ兄様、元気そうで良かった。……ふふ、獣王国は楽しかったようですね」
冬の間の冒険話を、掻い摘んで手紙で報せてきたレオのことを思い浮かべて、エドワードは羨ましいと笑う。
「いつか旅を御一緒できたらいいな~」
「ふえ?エド兄も冒険ひゃになるの?ならミルもなれる?」
草餅に食らいついていたミルフィは、頬に餡子を付けて手紙を覗き込む。
巨大な根っこを倒してキャンプで一儲けした箇所が目に入る。
「やーね、レオ兄ったら。どこへ行っても食道楽で稼ぐのね!抜け目ないんだから」
「食いしん坊はミルと同じじゃないか?」
するとミルフィは顔を真っ赤にして「違うわ!私はお菓子が好きなレディよ!」と抗議した。
「ふん、意地悪いうならエド兄の分もたべちゃうからね!」
「シュー菓子はミルにあげるよ。緑のは食べたい」
控えていたメイドが紅茶を淹れなおそうとしたが、エドワードが制した。
「この茶葉で淹れてくれないか?兄の一押しらしいから、淹れ方はこのメモを参考にして」
「珍しい緑の茶葉ですね、畏まりました」
手紙には「草餅を食べるなら緑茶を」と書かれていて、籠に見慣れない袋が添えられていたのだ。
「東国の茶なのか、兄様がそういうならきっと美味しいんだろうな」
茶器から青く少し渋そうな香りがたった。
紅茶とは違う香の緑の茶は、一口含むと薄っすら甘みが舌に残った。
「なるほど、甘い餅菓子が引き立つね。渋味が良い感じだ」
「どっちも良い香ね!気にいったわ!」
ミルは兄の分まで欲しがったが、草餅だけは譲らないエドワードだった。
「不思議な菓子だな、モチモチで……中の赤茶パテが甘くてクリームとは違うんだな」
「エド兄?だいじょうぶ?」
「え?何がだい」
ミルは心配顔でハンカチを取り出しエドワードの頬を優しく撫でた。
知らずに涙が溢れていたことに、エドワードは自分に驚いた。
「エド兄も泣くのね、吃驚したわ」
「はは……そりゃボクだって子供だもの……泣くことだってあるさ」
”レオ兄に会いたいわね”
ミルフィが頑強に固められた鉄柵の窓を覗いて呟やいた。
「ミル、抱っこしようか?寂しい時はハグが一番効果があるんだよ」
「……寂しくないもん!泣いてないわ!……ふぇ、……ゴミが入ったんだもの!えぐっエディのバカ!」
勝気な彼女もまた声を殺して泣いていた。
「そうか、ならば寂しいボクを慰めてよ」
「……仕方ないわね!エド兄は泣き虫なんだから!」
小さな体を丸めるようにして、兄の膝にチョコりと乗ったミルフィは堰を切ったように泣き出した。
「おうちへ帰りたいのぉぉぉー!……ひっく、お庭で駆けっこしたいの……ふぇええん!」
「うん、そうだね。レオ兄様がきっと取り戻してくれるよ」
エドワードは泣きじゃくる妹の背をポンポン優しく叩いて慰める。
幼い妹は親の名を呼ぶことはしなかった。
震える小さな身体は何かを察しているのだろう。
「レオ兄様から!?」
王宮の隠し部屋に住みはじめて数カ月、隠遁生活に飽きてきた頃にそれは届いた。
少しの隙間があれば侵入してくる蝙蝠男によって、居室のテーブルに籠いっぱい詰まった菓子が鎮座されていた。
「シュー菓子となにかしらコレ。ツヤツヤの緑のものが入ってるわ、甘い香草みたいね」
手紙そっちのけでお菓子に食いつくミルを、破顔して見つめるエドワードは兄からの手紙を開封する。
「あぁ兄様、元気そうで良かった。……ふふ、獣王国は楽しかったようですね」
冬の間の冒険話を、掻い摘んで手紙で報せてきたレオのことを思い浮かべて、エドワードは羨ましいと笑う。
「いつか旅を御一緒できたらいいな~」
「ふえ?エド兄も冒険ひゃになるの?ならミルもなれる?」
草餅に食らいついていたミルフィは、頬に餡子を付けて手紙を覗き込む。
巨大な根っこを倒してキャンプで一儲けした箇所が目に入る。
「やーね、レオ兄ったら。どこへ行っても食道楽で稼ぐのね!抜け目ないんだから」
「食いしん坊はミルと同じじゃないか?」
するとミルフィは顔を真っ赤にして「違うわ!私はお菓子が好きなレディよ!」と抗議した。
「ふん、意地悪いうならエド兄の分もたべちゃうからね!」
「シュー菓子はミルにあげるよ。緑のは食べたい」
控えていたメイドが紅茶を淹れなおそうとしたが、エドワードが制した。
「この茶葉で淹れてくれないか?兄の一押しらしいから、淹れ方はこのメモを参考にして」
「珍しい緑の茶葉ですね、畏まりました」
手紙には「草餅を食べるなら緑茶を」と書かれていて、籠に見慣れない袋が添えられていたのだ。
「東国の茶なのか、兄様がそういうならきっと美味しいんだろうな」
茶器から青く少し渋そうな香りがたった。
紅茶とは違う香の緑の茶は、一口含むと薄っすら甘みが舌に残った。
「なるほど、甘い餅菓子が引き立つね。渋味が良い感じだ」
「どっちも良い香ね!気にいったわ!」
ミルは兄の分まで欲しがったが、草餅だけは譲らないエドワードだった。
「不思議な菓子だな、モチモチで……中の赤茶パテが甘くてクリームとは違うんだな」
「エド兄?だいじょうぶ?」
「え?何がだい」
ミルは心配顔でハンカチを取り出しエドワードの頬を優しく撫でた。
知らずに涙が溢れていたことに、エドワードは自分に驚いた。
「エド兄も泣くのね、吃驚したわ」
「はは……そりゃボクだって子供だもの……泣くことだってあるさ」
”レオ兄に会いたいわね”
ミルフィが頑強に固められた鉄柵の窓を覗いて呟やいた。
「ミル、抱っこしようか?寂しい時はハグが一番効果があるんだよ」
「……寂しくないもん!泣いてないわ!……ふぇ、……ゴミが入ったんだもの!えぐっエディのバカ!」
勝気な彼女もまた声を殺して泣いていた。
「そうか、ならば寂しいボクを慰めてよ」
「……仕方ないわね!エド兄は泣き虫なんだから!」
小さな体を丸めるようにして、兄の膝にチョコりと乗ったミルフィは堰を切ったように泣き出した。
「おうちへ帰りたいのぉぉぉー!……ひっく、お庭で駆けっこしたいの……ふぇええん!」
「うん、そうだね。レオ兄様がきっと取り戻してくれるよ」
エドワードは泣きじゃくる妹の背をポンポン優しく叩いて慰める。
幼い妹は親の名を呼ぶことはしなかった。
震える小さな身体は何かを察しているのだろう。
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