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約束の週末の昼、空は相変わらずの曇天だったが雨は降っていない。
彼はカスミソウに縁どられた真っ赤な薔薇を抱えて噴水広場に立っていた。
「め、目立つ!」
最初違う人かと思ったが、周囲にそれらしい人物は見当たらない。
背格好を見るにあの人で間違いないだろう。髪色も同じだし。
長身ですらりと長い足、髪は少し長いハニーブラウン、高い鼻とやや垂れ目の青い瞳。顔面偏差値はかなり高い。
その彼が薔薇の花束なんて持っていたら注目される。
行き交う老若男女が無遠慮に視線を送る、”どこの劇団俳優かしら”などと呟き見知らぬ老婦人が頬を染めて通り過ぎた。
「た、たしかに俳優みたい……私この人と食事にいくの?コワイ、帰っていいかな」
躊躇って遠目で見ていた私をみつけて、グランプさんが手を振りながら駆け寄って来た。
一番良い服を着てきたけど、ビシッと濃紺スーツを決めている彼の前では地味すぎた。
「こんにちはアネリ!待ち遠しかったよ!はい、これを受け取って!」
ばさりと花束を渡された私はしばし固まる。
「アネリどうかした?気分が悪いかな薔薇は嫌い?」
「ぶえ!?だ、だいじょぶですよ……えへへ綺麗な薔薇ですねぇ」
変な声が出てしまった……恥ずかしい。
とんでもない美しい顔が目の前にきたから吃驚した!どうしてこんな美形だと今まで気が付かなかったの!?
彼をちらりと見て、ああそうかと理解した。
普段の彼はボサボサの無造作ヘアに、無精髭がジョリジョリと生えていた。
ちょっと薄汚れた丸眼鏡を鼻の途中にかけていたわ、整えただけでこんなに豹変するのね。
「もはや別人じゃない!」私は小声で抗議する。
「え?なにか言った?行きつけのレストランなんだけどタンシチューが凄く美味しいんだ。アネリと食べたらきっと美味しさが2倍、いいや100倍以上になるよ!」
はえぇえ……何言ってんですこの美形さんは!?
グランプさんは腕をくの字に曲げて「行こう?」とエスコートしてくれる。
おずおずと手を委ねて「よろしくお願いします」と言うのがいっぱいいっぱい。
なのに
「もっとしっかり掴んで?はぐれちゃうよ」
ええ、はぐれたいですね。雑踏に紛れて逃げたいです!
***
連れて行かれたレストランは庶民の私には敷居が高かった。
ドレスコードは大丈夫かしらと青くなる。
黑服のギャルソンが彼をみかけて優雅にお辞儀した。
「いらっしゃいませ、グランプ様」
「やぁ、いつもの席はあいてる?」
もちろんでございますとギャルソンは豪華なボックス席へ案内する。
かなり奥にあったそこは大きな窓があって、庭園を一望できる。
「はわわわわ……庶民の私がきていいのかな」
恐縮して震えている私をグランプさんが肩にそっと触れて緊張しなくて良いんだよ。と微笑む。
そんなん無理ですよ……
坐ったソファはお尻がずっぽり埋まるほどふんわりで叫びそうになったが耐えた。
運ばれた料理はとろりとしていて、歯がいらないほど柔らかい。
緊張し過ぎてたけど注がれたワインを呑んだらリラックスしてきた。
「わぁなんて美味しいの!これがタンシチュー?」
「そうだよ、気に入ったかい?」
「はい、もちろんです!ありがとうグランプさん」
「ディーンと呼んで?もしくはディー、それから敬語もなし」
「で、でも役付きの騎士様に不敬では……それにあの友人でも恋人でもないのに」
私がそう言って顔を伏せるとグランプさんがとんでもない発言をした。
「じゃあ恋人になってよ、なんなら婚約者とかどう?」
「ぶええええ!?」
彼はカスミソウに縁どられた真っ赤な薔薇を抱えて噴水広場に立っていた。
「め、目立つ!」
最初違う人かと思ったが、周囲にそれらしい人物は見当たらない。
背格好を見るにあの人で間違いないだろう。髪色も同じだし。
長身ですらりと長い足、髪は少し長いハニーブラウン、高い鼻とやや垂れ目の青い瞳。顔面偏差値はかなり高い。
その彼が薔薇の花束なんて持っていたら注目される。
行き交う老若男女が無遠慮に視線を送る、”どこの劇団俳優かしら”などと呟き見知らぬ老婦人が頬を染めて通り過ぎた。
「た、たしかに俳優みたい……私この人と食事にいくの?コワイ、帰っていいかな」
躊躇って遠目で見ていた私をみつけて、グランプさんが手を振りながら駆け寄って来た。
一番良い服を着てきたけど、ビシッと濃紺スーツを決めている彼の前では地味すぎた。
「こんにちはアネリ!待ち遠しかったよ!はい、これを受け取って!」
ばさりと花束を渡された私はしばし固まる。
「アネリどうかした?気分が悪いかな薔薇は嫌い?」
「ぶえ!?だ、だいじょぶですよ……えへへ綺麗な薔薇ですねぇ」
変な声が出てしまった……恥ずかしい。
とんでもない美しい顔が目の前にきたから吃驚した!どうしてこんな美形だと今まで気が付かなかったの!?
彼をちらりと見て、ああそうかと理解した。
普段の彼はボサボサの無造作ヘアに、無精髭がジョリジョリと生えていた。
ちょっと薄汚れた丸眼鏡を鼻の途中にかけていたわ、整えただけでこんなに豹変するのね。
「もはや別人じゃない!」私は小声で抗議する。
「え?なにか言った?行きつけのレストランなんだけどタンシチューが凄く美味しいんだ。アネリと食べたらきっと美味しさが2倍、いいや100倍以上になるよ!」
はえぇえ……何言ってんですこの美形さんは!?
グランプさんは腕をくの字に曲げて「行こう?」とエスコートしてくれる。
おずおずと手を委ねて「よろしくお願いします」と言うのがいっぱいいっぱい。
なのに
「もっとしっかり掴んで?はぐれちゃうよ」
ええ、はぐれたいですね。雑踏に紛れて逃げたいです!
***
連れて行かれたレストランは庶民の私には敷居が高かった。
ドレスコードは大丈夫かしらと青くなる。
黑服のギャルソンが彼をみかけて優雅にお辞儀した。
「いらっしゃいませ、グランプ様」
「やぁ、いつもの席はあいてる?」
もちろんでございますとギャルソンは豪華なボックス席へ案内する。
かなり奥にあったそこは大きな窓があって、庭園を一望できる。
「はわわわわ……庶民の私がきていいのかな」
恐縮して震えている私をグランプさんが肩にそっと触れて緊張しなくて良いんだよ。と微笑む。
そんなん無理ですよ……
坐ったソファはお尻がずっぽり埋まるほどふんわりで叫びそうになったが耐えた。
運ばれた料理はとろりとしていて、歯がいらないほど柔らかい。
緊張し過ぎてたけど注がれたワインを呑んだらリラックスしてきた。
「わぁなんて美味しいの!これがタンシチュー?」
「そうだよ、気に入ったかい?」
「はい、もちろんです!ありがとうグランプさん」
「ディーンと呼んで?もしくはディー、それから敬語もなし」
「で、でも役付きの騎士様に不敬では……それにあの友人でも恋人でもないのに」
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「じゃあ恋人になってよ、なんなら婚約者とかどう?」
「ぶええええ!?」
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