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大団円
しおりを挟む「お姉様大好き~!好き好き!」
「まぁ、カメリアったら」
いつものように戯れている姉妹だが、それをジッと見つめ恨めしそうにしているアドニスの姿があった。横恋慕によるストーキングかと思われたが違った。
「うぅ、ルアナ……どうかその手で私を叩いて、打ってくれないだろうか蹴りでも良い!」
開いてはいけない扉を開けてしまった王太子はドM化していたのだ、側近達はそんな彼の変化に戸惑いを隠せない。
「あのぉ、殿下、どうしてそのような事ばかり」
「そうですよぉ、まるで変態じゃないですか」
「ん?ああ、そうだな新しい境地に落ちたというか、ドハマりしたというか」
クネクネと恥ずかしそうに「ああ、あの足に踏まれたい」と呟き悶絶する様は異様だった。
呆れる側近たちは「これは駄目だ」と判断して生暖かい視線を送る。
そんな様子を見咎めたルアナはまたカメリアの事を諦めていないのかとイライラしていた。とんだ誤解である。
「アドニス様、何を厭らしい目で妹を見ていますの!失礼だわ」
「い、いや違うぞ!ボクが見ていたのは」
「だまらっしゃい!そこにお座りなさいませ!」
「はい!喜んで!」
どこかの居酒屋店員かと思う掛け声とともに、鎮座してお小言と鉄槌を期待する王太子である。彼女が怒れば怒るほどにアドニスは喜びに満ち溢れるのだ。
「宜しいですか、カメリアは貴方になんの興味もないのです!わかりますか?」
「はい!その通りです!申し訳ありません!」
「ほんとうにわかってます?」疑心暗鬼の彼女はアドニスを睨みつける。
「もちろんです、この命にかけまして!」
「んまあ!巫山戯ているのですか!反省の色が見られませんね!」
「パシーンッ!」
「あああ、もっと……もっと責めて欲しい……」
その言動が益々と巫山戯ていると彼女を怒らせるのだ、こうして至福?の時を過ごした王太子は満足気に「良かった」と漏らす。
***
「なんだかんだと大団円ですね」
「そうかぁ?」
側近のベルトットとガイルは新郎側の席に参加してことの成り行きを見守っている。今日は待ちに待ったアドニス王太子とルアナ嬢の結婚式だ。王侯貴族達が見守る中、彼らは夫婦になった。
「くう~、お姉様が綺麗!絶世の美女、いいえ女神様のようだわ!アンポンタンの王太子には勿体ない!あぁ、いっそお姉様を奪還して私が……」
「おいおい、不穏なことは言わない様に」
「だってぇ」
ウェディングアイルを歩いてきた父が困った顔で娘を窘める、その横には不服そうな母ペネロペがいる。
「あの場所はカメリアちゃんのものになるはずだったのに!」
「お母様、まだそんな事を言ってますの?親子の縁を切りましょうか?」
「ひぃ!じょ冗談よ……ホホホ」
このように紆余曲折あったが、無事に挙式をあげた王太子夫妻だった。国中から祝福を受けて幸せそうである。
「ああ、ボクは三国一の幸せ者だ」
「使い方を間違えてます、三国一の花嫁ですわ」
「そうか、ならば世界一の幸せものだな!ハーハハハハッ!」
「まったく……なんて愚か、私がキッチリ締めないと」
アドニス王太子の本当の気持ちを知ってか知らずか、ルアナは難しい顔をしている。
「ほら、国民にボク達の晴れ姿を見せつけないと微笑んで?」
「あらまぁ、一体どういうこと」
「愛しているよ、ルアナ」
「ええ!?」
初めて心のうちを聞かせたアドニスはウットリした顔でルアナを見ていた。信じられないものを見るように彼女は彼を見返す。
「あ、あの……アドニス?」
「愛しているんだ、本当だよ!ボクのルアナ」
その後、バルコニーから手を振るルアナ王太子妃殿下の顔が茹蛸のようになっていたと国民たちは噂した。
豪華絢爛に飾られた披露宴の席でカメリアは少々ショボくれていた、無理もない大好きな姉が嫁いでしまったのだから。
「はぁ~これからは滅多に会えないのねぇ寂しい……寂しいわお姉様」
「ならば私の妃にならないか?」
「え……バルドリック様、そのようなお戯れは」
「戯れではない、どうだろうか前向きに考えてくれないか?大切にする!」
「えええ~……嫌です」
まだシスコンが抜けないカメリアは即答でお断りしたのだが、その後何度もプロポーズを仕掛けてくるバルドリックに根負けして受け入れるのは別の話である。
完
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みんなの感想(1件)
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あの・・・・・・。
余計なことかもしれませんが「大団円」ではないですか?大大円は違うのではと思います。
勘違いしていたら申し訳ありません。
申し訳ありません、誤字でした。