双子の聖女

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
5 / 6

旅仕度

しおりを挟む
「行く当てがない旅だけど、いっそ他国へ行ってみたいわ」
「それは何故ですか?」


「だってこの国には聖女クラリスがいるもの安泰でしょ?似非とはいえ私にも力があるわ、聖女がいない国へ行けばお役に立てると思うの!」


自分を卑下していうクラーラに連れとなったアレンは眉を下げて「自己評価が低すぎる」と呟いた。
それから国境越えは想像以上に厳しいのだとアレンはクラーラに教えた。


「まぁ。そうだったの……世間知らずでごめんなさい」
「いいえ、ずっと教会に閉じこもっていたのですから仕方ありませんよ」
相変わらず敬語のままのアレンはそう言う。


「国々を渡るのに方法は一応ありますよ、頑張れますか?」
「ええ!広い世界を見たいもの、なんでもやるわよ」

彼女の目に覚悟を見たアレンは、では行きましょうと手を引いた。
今から出向くところは荒くれ者が多いから離れない様にと注意してクラーラを案内する。


やがて厳格な建物に辿りついた二人は、緊張の面持ちで門を潜った。


「ここは?」
「冒険者ギルドです、誰にも平等に身分証と仕事をくれるところですよ」

「平等!素晴らしいことだわ!」
「まぁ、落ち着いて。クラーラ様は偽名で登録しましょう。聖女の名は知れ渡ってますから」
「うん、わかったわ!」



登録専用の窓口へ向かい二人は能力テストを受けた。

アレンは火属性能力、クラーラ改め”ララ”は闇以外の属性持ちと鑑定された。
聖女とは知らないギルド職員たちは大騒ぎしてララを専属冒険者にと勧誘した。
白魔法に特化した彼女は貴重な人材なのだ。


それをやんわり断ったララはアレンと普通の冒険者としての身分証を手に入れた。
「さすがとしか言いようがないです、クラ……ララ様」
「褒め過ぎよ、アレンの火魔法は強いのでしょ?冒険者としてならそっちが凄いわよ」


お互いを褒め合いながら街道を急いぐ、長旅をするならと節約を徹底した。
当面の生活費を教会から退職金として受け取っていたララではあるが、アレンに「無駄遣い禁止」と言われそれを素直に受け入れていた。

しかし、譲れないものもあった。


「旅をするならテントは必要ですね、それから保存食を買いだめしましょ」
「テントってその布でできた臭いの?」

雑貨店にやってきた二人は折りたためるテントを探していた。
アレンが安価で丈夫そうなテントを指差していた、雨を弾くために油が塗られていて少し臭い。


「どうせならこっちが良いわ、二人で入ってもゆったりしてる」
ララが欲しがったのは少し値が張るドーム型だった、初期投資だからとララは言う。

「で、でも」
「長く使うなら断然こっち!安いほうは突風がきたら飛ばされそうだし、きっとすぐ破れてしまうわ」

見た目頑丈そうだが手に取ればペラペラの素材で布地の織り目も荒かった。
それでもドーム型は持ち運びに不便だと渋るアレンに「問題ないわ」というララ。


小柄なララが背負えるわけがないとアレンと店員が苦笑いした。
「もう、馬鹿にして。はい、代金よ」さっさと支払いを済ませてしまうララ。


少し拗ね彼女は頬を膨らませて、買い取ったドームテントをひょいと消してしまった。

「えええ!?今なにをしたのですか!」
「なにって収納したのだけど?」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

破滅は皆さんご一緒に?

しゃーりん
恋愛
帰宅途中、何者かに連れ去られたサラシュ。 そのことを知った婚約者ボーデンは夜会の最中に婚約破棄を言い渡す。 ボーデンのことは嫌いだが、婚約者として我慢をしてきた。 しかし、あまりの言い草に我慢することがアホらしくなった。 この場でボーデンの所業を暴露して周りも一緒に破滅してもらいましょう。 自分も破滅覚悟で静かにキレた令嬢のお話です。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

乙女ゲームは始まらない

みかん桜
恋愛
異世界転生した公爵令嬢のオリヴィア。 婚約者である王太子殿下の周囲に、乙女ゲームのヒロインを自称する女が現れた。 だが現実的なオリヴィアは慌てない。 現実の貴族社会は、物語のように優しくはないのだから。 これは、乙女ゲームが始まらなかった世界の話。 ※恋愛要素は背景程度です。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...