本編完結 堂々と浮気していますが、大丈夫ですか?

音爽(ネソウ)

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後日談

村おこし

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「でへへぇ」
腑抜けた顔を晒すのはクリストフである、見事に初夜を決めた彼は満面の笑みなのだ。結婚して七日目、漸く執政に戻るもこの調子なのだ。政務をこなしているが表情筋が緩みっぱなしで、側近が「やめてください」と諌言する。

「あ~悪い、ついな……次の事案はどれだ?」
「はい、こちらに」
仕事を溜めることはしないのだがどうにも締まりのない顔をする、側近はヤレヤレというように席に戻った。油断をするとすぐに「でれぇ」としてしまうのが難点だ。まったくもうと肩を竦める。


休憩に入ると彼は「う~ん」と背を伸ばす、猫背が癖になっているのかかなり辛そうだ。
「休憩に行ってきます」
「うん、ご苦労さん」
文官たちを見送ると自身も休憩へと出向いた、廊下を行くと見慣れた背を見つけて嬉しそうに声をかけた。

「チャチャ!こんな所で奇遇だね!」
「いやだわクリス、私もこの周辺で働いているのよ」
苦笑して答えるアリーチャは何かの瓶を持っていた、赤茶色のずんぐりとしたものだ。それは何だと尋ねれば、とある地方の果実だという。

「ロエヌベリーと言いますの、とても酸味が強いのですが砂糖や蜂蜜で加工すると美味しいのです」
「ほお、それは聞いたことが無いな」
ロエヌベリーは地方都市でしか出回らない、なのでクリストフが知らなくとも別に普通だ。なぜそんなものを嫁にきたばかりのアリーチャが知っているのかと疑問だ。

「私も最近知りましたの、ロエヌベリーは本来捨てられてきたのですもの。やはり酸味がね……」
「なるほど、そのままで食せないなら仕方ないな」
同じ籠に入っているロエヌベリーと思わしき実を見つめてそう言った。赤黒い実はブツブツとしていて気味が良いとは言い兼ねる。

染色などに使われて来たらしいが、発色が良いとは言い兼ねた。次第に廃れてきたのだとアリーチャは言う。
「でもこのほど栄養価が高いというデータが取れたのです!これを捨てるなんてもったいない!」
「は、はあ」
どうやら村おこしに使うべきだと息巻いているのだ、興味を持ったクリストフは是非話を聞かせてくれと頼み込む。

「では、休憩がてら試供品をお試しください」
「うん、そうさせて貰おうか」


***

ジャム、飲料、それからクッキーと製品化にこぎつけた。中でもジャムは定評があり是非にうちの商店でとひっぱりだこだ。
「良かったわ、こんなに評判が良いなんて」
「ああ、たしかにこのジャムは素晴らしいよ、とても良い香りで美味しい」
アリーチャ夫妻はニコニコと午後の茶の席で例のジャムを楽しんでいた。なかでもクロテッドクリームとの相性は抜群だ。

「ん~美味しい!いくらでも入ってしまうわ」
「ふふ、あまり食べ過ぎないでね、ふくよかなキミも良いけど」
「え……私太った!?」
「え、いいや」
彼女は青褪めてしまいプルプルと震えていた、クリストフの否定の言葉も届かないのか「太い私」とブツクサいっている。

そこへ、経理担当がやってきてこう述べた。
「ジャムの収支報告ですが、どうも可笑しいのです」
「おかしいとは?」
口を拭って聞き返すアリーチャは何事かと疑問に思った。売り上げは順調で飛ぶ鳥を落とす勢いだと聞いていた。もとより雑草並みに強い品種のロエヌベリーは放っておいても増えて行く。それだというのに……。

「どうも中抜きをされている様子です、余計な仲介者がいるようで……はい」
「なんですって?」
激しく怒ったアリーチャは「なんということ」といきり立った。




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