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珍婚旅行
しおりを挟む「新婚旅行は1カ月は必要だと思うのぉ!これは譲れないわ」
ベネッタは早速と無理難題を言い放つが、宰相は温厚そうな顔で「宜しゅうございます」と答えた。
「なんなら永遠にどうぞ」と小さく呟いた。
「え?なんて言ったの?」
「いいえ、存分に旅立たれたら良かろうと思いますよ」
「そう!話がわかるじゃない!聞いたリオ、早速行きましょうよ」
テベリオ王太子に抱き着いて我儘が通ったことを嬉しそうに話すベネッタは、何処へ行こうかとあれこれ考えている。
「そうか、そうだね。実はプランを考えていたんだ」
「まぁ!流石私のリオだわ、とっても嬉しい」
第二妃アンドレイナの事など眼中にないのか、ふたりは連れだってキャイキャイとはしゃいで部屋を出て行った。頭の悪いふたりを見送って「お好きなだけ楽しんで」と微笑む。
事情を知らない侍女たちは蔑ろにされているアンドレイナを見てヒソヒソとやっていた。仕えるべき主に対して取るべき態度ではない。それを見咎めた彼女は「彼女たちに暇を」と侍女長に言う。
「まったく、どいつもこいつも」
早速と大人しく働くアンドレイナだが彼女はこれ幸いと思っていた。山のように積まれた書類をカサカサと音を立てて捌いて行く。
「ふふ、なんと愚かなんでしょう。転がされているとも知らず」
きっとこの場にいても王太子夫妻は「やっておけ」と書類も見ずに丸投げにすることだろう。そして、一番上にあった新婚旅行の予算について「出来る限り低予算、必要最低限で」と書き記した。
「あんな馬鹿達に予算など裂いてあげないわ」
***
夫妻が一番最初に訪れたのは花の都と呼ばれる町だった。
とても古いが落ち着いた雰囲気が漂う、まさに古都と呼ばれるに相応しい場所だ。いま時分は桜が満開である。
「わぁ、素敵だわぁ。まるで妖精が棲んでいそうよぉ!」
「はは、ベネは可愛い事をいうな妖精などと」
「うっふふふぅ、そうお?」
気を良くした彼女は「あの木が欲しい」と言った、古都の名物でもある桜の木を寄越せといったのだ。いくらなんでも伝統ある桜の木を所望されても無理だと側近らは言う。
「どうしてぇ!?ちょっと手折るくらい良いじゃないのぉ!ドケチィ!」
「桜の木はとても繊細でして、折った箇所から枯れることもございます。齢50年の立派な木を折るなど」
「きぃい!何よう!リオぉ何とかしてよぉ」
「ええ、しょうがないな」
癇癪を起した彼女を宥める為に桜を模した首飾りを買った。
それは珊瑚を使った逸品だった、機嫌を直した彼女はつぎつぎと買い求める。低予算と聞いていた側近らは顔色を青くする。
「殿下、そのように使われては後半がきついですよ?」
「いいじゃないか!彼女が喜んでいるのだから!それより今日宿泊する宿の手配をしろ!スイートだぞ」
「はぁ……」
側近の提言を無視して初日からやらかす彼らに従者らは頭を抱えるのだ。
「ふふふ、ちょっとくらい良いわよね」
その日の晩、宿をこっそり抜け出したベネッタは桜の木の下にいた。目の前には月の光を浴びて輝く淡い花。
手折ろうと差し伸べたがグニャリと曲がって上手くいかない。幾度も挑戦しているうちに、まだ蕾だった花が飛び散った。桜は無惨にも全て落ちてしまう。
「んもう何よ、仕方ないわ別の枝を……」
その時、小さな者たちが花の影からこっそり伺っていた、それは花の妖精だった。怒り狂った彼女たちはベネッタを狙い定める。
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