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呪術師
しおりを挟む一方、その頃。
中々戻らないリモンド・ヘイヤールに苛立ちながらブツブツと文句を垂れるベネッタがいた。彼女は宿の一室に籠り呪われた己の身体を叩いた。「ゴイン」という硬質な音が耳障りだ。
「おい、ベネッタそんな事をしても呪いは解けないぞ。安静にしているんだ」
若干呑気そうな声に苛立った彼女は反論する。
「安静にですって!?大人しく寝ていれば治るとでも言うの!きぃ~!治らないのでしょう!誰でもいいから呪いを解いてよ!」
「そ、そんなことを言っても……」
丸太のようになり木肌を剥き出しにした彼女はまるで桜の木のようだ。じわじわと呪いが浸食していて、自慢の顔にいまにも飛び火しそうな勢いだ。
オロオロするばかりで役に立たないテベリオに憤慨するベネッタは「もう待てない」と熱り立って呪術師に頼もうと言った。呪術師はどこの都市にもいて、その術で治している。だが、べらぼうに高い治療費をふっかけてくるのだ。
たたでさえ旅費を無駄遣いしていた彼らはそれだけは避けたかった。だが、そうも言ってられない。
「まったく!大方アンドレイナのヤツがゴネているのでしょう、腹立たしいことだわ!」
「そ、そうだな!新たに旅費をだすよう申請しようじゃないか」
そうと決めた彼らは呪術師のいる見世へと向かうのだった。
***
「おやおやぁ、これは見事な呪いだこと。いっひひひ……」
初老の女がベネッタの呪われた体を見分してそう言った、古都に住む呪術師の中で一番安いところを探したのだ。そうはいってもやはり治癒代はかなり高かった。
「どうなの?解けそうなの?」
「まぁまぁ、そう急く出ない。古い桜の妖精たちに呪いを食らったのだ。焚き木とお香と術代で50万だ、即金で頼むよ、1ギニでも足りなかったら治癒は断る」
「50万ギニ!?高い……」
花の妖精は特に質が悪いという、それだけ長く棲んでいて呪怨もきついらしい。手折ろうとした桜の妖精が強く怒ったのだと老婆は言う。
「わ、わかったわ……支払うから」
「まいど」
こうして呪術師に金を支払うと早速と術者はお香を焚きだした。良くないものが呪いに集まるのでそれを掃うのだという。お香は目に染みてかなり臭かった。三日三晩にお香を焚いて焚き木がくべられた。
「ヌマニ アラーダ ヘイヤ ヌマニ アラーダ ヘイヤ」
わけがわからない呪文を唱える呪術師に彼女は首を傾げる。
「こら!呆けてないで貴女も呪文を唱えなさい!」
「ひい!ウマニ アラダ……」
「違う!ヌマニ アラーダ ヘイヤだ!」
「うわ~ん!ヌマニ アラーダ ヘイヤ!」
そして四日目の朝にやっと呪いが解けたベネッタだったが、その相貌は怖ろしくゲッソリと憔悴しきっていて見られたものではなかったらしい。
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