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呪いは続くよ、どこまでも

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一方的な断罪劇から王族の異変が続いた話はすぐに広まった。
急な王位継承、元王が床に伏し虫の息に、元王妃は幼児退行する原因不明の病に罹ったと大騒ぎなった。

マニエの呪いに慄いた貴族達は、挙って牢獄塔へやってきて食品や衣類などを献上するようになる。
それはまるで女神へ参拝するようだと看守たちは噂した。


「こんなこと望んでないのだけど」
静かに生活したかったマニエはウンザリだと言って、山と積まれた贈答品を睨んだ。

きょうも勝手にやってくる貴族達の中に、良く知る顔が見えた。
口元を隠してはいたが、かつての友人を忘れるわけがない。


「裏切り者の貴女が慰問にくるなんて、嫌だわ天変地異がおこるじゃないの」
「ばんだぞせいべごうばったのぼ!だんどかしばざいぼ!」

「なんて?」

タオルなどでグルグル巻きにした口元からは、判別不明のダミ声しか聞こえない。
そして若干臭い。


「アンタのせいで!アンタのかけた呪いのせいで王子に捨てられそうなのよ!なんとかしなさいよ!」
止む無くタオルを剥ぎ取ったチェニーの口からブワリと異臭が放たれた。

周囲にいた貴族たちは悪臭に悲鳴をあげて堪らずにそこから退避していった。
「あら、やっと静かになったわ」
騒がしさに辟易していたマニエは安堵の顔をした。


「ちょっと聞いてるの!?早く呪いをときなさいよ!じゃないと」
「……じゃないとどうなるの?」


余裕綽綽のマニエは興味なさそうに欠伸して、カウチに寝そべった。
彼女には悪臭は届かないらしい。


「処刑してやるわ!」
「へぇ、そんな権利がチェニーにあるかは知らないけど、私が死んでも呪いはとけないわよ?」

「な、なんでよ!なんでこんな酷いことを」
冤罪でマニエを陥れたことなどスッカリ忘れた頭で彼女は喚いた。

「相変わらずスカスカな脳みそをしてるのね……私がなぜここにいると思っているの?貴女のせいよね?」
「……くっ!それはマニエが私の邪魔をするから」


反省の色がまったくないチェニーに、話すことは何もないとマニエは空間を遮断しようと立ち上がった。
「待ってよ!待ちなさいよ!恨むにしてもこの呪いは酷いわ!なんとかして!」
「じぶんのことばかり主張して、恥ずかしくないの?」


呪いをなんとかしないと籠城するとまで言いだした悪臭娘にマニエは仕方なく動いた。

「……呪いは消せないけど上書きは出来るわ、その代わり反省しないなら悪化するわ。それでも良くって?」
「わかったわ!だから早くこの臭いを取って!」


「そう、あくまで呪いの上書きですからね。気を付けなさい」
マニエはそういうと小さな声でチェニーにかけた呪いの質を変えてやった。


「ふん!これでここに用はないわ!あら、これって流行りのレース日傘じゃないの!ここにいては必要ないでしょ?私が貰っておいてあげる!じゃーね!負け犬マニエ!」


なにかを勘違いしたまま、チェニーは嬉しそうに鼻歌まじりに塔から下りて行った。


「ほんと、馬鹿な子」

呪いの上書きと言っただけで、改善されたわけではないのに……

マニエは誰にも聞こえない声で呟いた。
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