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彼女の周りは敵だらけ
カサンドラ・アドラムが10歳の時、遥か昔に失われたと謂れる魔法の力を発現させた。
しかも全属性持ちである、王族は彼女を手に入れるべく動いて年齢が近い第二王子と婚約させた。
もちろん、当人は了承していないが、大人達はみんな勝手に話を纏めていった。
「冗談じゃありませんわ!私の人生は私だけのもの!」
反抗しまくる少女に手を焼く侯爵は「18歳までに王子を好きになれないなら逃げて良い」と条件をつけた。
これは父と娘だけの密約である、約束を破ったら容赦しないとカサンドラは宣言した。
無敵な娘に父は頷くほかない、機嫌を損ねれば彼女自身が災厄となる可能性があるからだ。
だが一方で「たかが小娘如き手の平で転がしてやる」と彼女を侮る王族は何かと下らない注文をつけて王城へ呼び出した。
「余の頭に髪の毛を復活させよ」
「は?焼野原のままで良いんじゃないですか?似合ってますよハゲ」
「な!無礼な!」
小娘に鼻で笑われた王は騎士に捕えて折檻しろと命令したが、魔法を自在に操る少女に敵うわけがなかった。
屈強な兵らが伸されて山積みにされるのを見た王は土下座して謝る他ない。
「ごめんなさい!この通り!だから臣下を殺さないでください!」
「ならば下らないことで呼び出さないでくれます?慈悲で一本だけ生やしてあげますよ」
「い、いっぽん?ハゲの方が良いではないか」
みっともなく頭頂部に1本だけ生えた髪の毛は、王が歩く度にユラユラそよいで笑いを誘った。切っても抜いてもすぐに生えてくるので諦めるしかなかった。
「あぁ嫌だ、見苦しい!愛人でも作って蟄居しようかしら」
「王妃!余を捨てないでぇ!」
そんな王妃もかつては下らない要望をカサンドラに言いつけて酷い目に合っていた。
『若返らせて』と願ったのだが、そんな都合の良い魔法はないと怒られた。治癒魔法は傷を癒すためのものだと半日に及び滔々と説教を食らうはめになった。
「よろしですか王妃、治癒魔法は重篤な病や怪我に苦しむ者にですね云云かんぬん」
「はぃぃ~許してください!」
「恐ろしい子、この私を正座させて泣かせるなんて」その日のことを思いだす度に王妃は身震いした。
***
王族と少女カサンドラは付かず離れずな関係を保っていたが、貴族達は別だった。
社交界デビューした15歳からカサンドラは口さがない貴族から攻撃されたのだ。
なかでも王子妃を約束された事を妬む声が一番強い、年頃の令嬢から様々な嫌がらせを受けた。夜会に出ればかならずドレスに染みができた。
通りすがりにワインなどを気づかぬ程度浴びせてくるのだから質が悪い。
しかし、この程度では彼女は怯まない。
彼女の有する浄化魔法を使ってしまえば染み抜きなど造作もないことだ。
一番堪えるのは嫌味である、容姿のことはもちろん性格の悪さなどを無理矢理に捏造して噂をばらまかれるのだ。
気にしなければ良いだけだが、耳に入れば良い気分ではない。
わずか16歳にして胃潰瘍を患った、これもまた治癒魔法で凌げたが友人ひとり出来ない寂しさは魔法では払拭できない。
しかも、庇ってくれるべき母親と妹まで彼女の才能と約束された将来に嫉妬を向けるのだ。
「お姉様はなんでも出来るのですから、何をされても平気でしょ?」
「そうよ、妹のアマリアが可哀そうだわ。この子がいくら努力しても魔法が使えないのですからね」
とんでもない言いがかりだが、魔法の才能を譲り分ける事が出来ないのだからどうしようもない。
事情を知る父親はただ申し訳なさそうに俯くだけで何もしてくれない。
取り立てて大きな実害がないため、彼女は泣き寝入りするしかないのだ。物理でももって攻撃されたほうが余程楽なのである。
「叩かれたら反撃できるのに、悔しいったらないわ」
益々と孤立していく彼女は夜会や茶会を毛嫌いするようになって顔をみせなくなった。
婚約者の第二王子ブルーノは催しごとがある度にエスコートに現れたが形ばかりに思えた。
世界でも希少な魔法使いである彼女を国に留ませるためだけに親切そうな振る舞いをしていると思うのだ。
なぜそこまで彼女が捻くれたかと言うと、王子もまた彼女が夜会で攻撃にあっていても見ぬふりを貫いていたからだ。
人前で取り乱したくない彼女は控室に閉じ籠り涙を拭っていた時だけ、王子は訪ねてくる。
さも”キミのことを慮っている”という体で現れるのが、とても悔しくて嫌だった。
「放っておいてください!今更なんですの?先ほどワインを浴びせられたのを見ていたでしょう!卑怯者、優しいふりをしても無駄ですわ」
「……カサンドラ」
名指しで呼ぶなと叫んだ彼女は部屋を飛び出して行く。
彼女の心は限界を超えていた。
しかも全属性持ちである、王族は彼女を手に入れるべく動いて年齢が近い第二王子と婚約させた。
もちろん、当人は了承していないが、大人達はみんな勝手に話を纏めていった。
「冗談じゃありませんわ!私の人生は私だけのもの!」
反抗しまくる少女に手を焼く侯爵は「18歳までに王子を好きになれないなら逃げて良い」と条件をつけた。
これは父と娘だけの密約である、約束を破ったら容赦しないとカサンドラは宣言した。
無敵な娘に父は頷くほかない、機嫌を損ねれば彼女自身が災厄となる可能性があるからだ。
だが一方で「たかが小娘如き手の平で転がしてやる」と彼女を侮る王族は何かと下らない注文をつけて王城へ呼び出した。
「余の頭に髪の毛を復活させよ」
「は?焼野原のままで良いんじゃないですか?似合ってますよハゲ」
「な!無礼な!」
小娘に鼻で笑われた王は騎士に捕えて折檻しろと命令したが、魔法を自在に操る少女に敵うわけがなかった。
屈強な兵らが伸されて山積みにされるのを見た王は土下座して謝る他ない。
「ごめんなさい!この通り!だから臣下を殺さないでください!」
「ならば下らないことで呼び出さないでくれます?慈悲で一本だけ生やしてあげますよ」
「い、いっぽん?ハゲの方が良いではないか」
みっともなく頭頂部に1本だけ生えた髪の毛は、王が歩く度にユラユラそよいで笑いを誘った。切っても抜いてもすぐに生えてくるので諦めるしかなかった。
「あぁ嫌だ、見苦しい!愛人でも作って蟄居しようかしら」
「王妃!余を捨てないでぇ!」
そんな王妃もかつては下らない要望をカサンドラに言いつけて酷い目に合っていた。
『若返らせて』と願ったのだが、そんな都合の良い魔法はないと怒られた。治癒魔法は傷を癒すためのものだと半日に及び滔々と説教を食らうはめになった。
「よろしですか王妃、治癒魔法は重篤な病や怪我に苦しむ者にですね云云かんぬん」
「はぃぃ~許してください!」
「恐ろしい子、この私を正座させて泣かせるなんて」その日のことを思いだす度に王妃は身震いした。
***
王族と少女カサンドラは付かず離れずな関係を保っていたが、貴族達は別だった。
社交界デビューした15歳からカサンドラは口さがない貴族から攻撃されたのだ。
なかでも王子妃を約束された事を妬む声が一番強い、年頃の令嬢から様々な嫌がらせを受けた。夜会に出ればかならずドレスに染みができた。
通りすがりにワインなどを気づかぬ程度浴びせてくるのだから質が悪い。
しかし、この程度では彼女は怯まない。
彼女の有する浄化魔法を使ってしまえば染み抜きなど造作もないことだ。
一番堪えるのは嫌味である、容姿のことはもちろん性格の悪さなどを無理矢理に捏造して噂をばらまかれるのだ。
気にしなければ良いだけだが、耳に入れば良い気分ではない。
わずか16歳にして胃潰瘍を患った、これもまた治癒魔法で凌げたが友人ひとり出来ない寂しさは魔法では払拭できない。
しかも、庇ってくれるべき母親と妹まで彼女の才能と約束された将来に嫉妬を向けるのだ。
「お姉様はなんでも出来るのですから、何をされても平気でしょ?」
「そうよ、妹のアマリアが可哀そうだわ。この子がいくら努力しても魔法が使えないのですからね」
とんでもない言いがかりだが、魔法の才能を譲り分ける事が出来ないのだからどうしようもない。
事情を知る父親はただ申し訳なさそうに俯くだけで何もしてくれない。
取り立てて大きな実害がないため、彼女は泣き寝入りするしかないのだ。物理でももって攻撃されたほうが余程楽なのである。
「叩かれたら反撃できるのに、悔しいったらないわ」
益々と孤立していく彼女は夜会や茶会を毛嫌いするようになって顔をみせなくなった。
婚約者の第二王子ブルーノは催しごとがある度にエスコートに現れたが形ばかりに思えた。
世界でも希少な魔法使いである彼女を国に留ませるためだけに親切そうな振る舞いをしていると思うのだ。
なぜそこまで彼女が捻くれたかと言うと、王子もまた彼女が夜会で攻撃にあっていても見ぬふりを貫いていたからだ。
人前で取り乱したくない彼女は控室に閉じ籠り涙を拭っていた時だけ、王子は訪ねてくる。
さも”キミのことを慮っている”という体で現れるのが、とても悔しくて嫌だった。
「放っておいてください!今更なんですの?先ほどワインを浴びせられたのを見ていたでしょう!卑怯者、優しいふりをしても無駄ですわ」
「……カサンドラ」
名指しで呼ぶなと叫んだ彼女は部屋を飛び出して行く。
彼女の心は限界を超えていた。
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