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初めての相棒
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ドーラの乱入に最初は何かと抗っていた町長だったが、屋敷の者たちがすべて石のように固まり、役立たずと知り咆えたところでどうにもならない理解するや泣きながら謝罪した。愛人らしき女どもは魔女に髪の毛をチリチリされて逃げ出ていった。しばらくは坊主なままだろう。
「はいはい、きっちりしっかり徴収したわ。後は町長達の采配次第でしょ」
彼女はドッシリ重い袋を縮こまったままのティモへ手渡す。受け取りを渋る彼に無理矢理に押し付ける。
「ま、待ってこんな大金を持ち歩くなんて怖いよ!それに重くて途中でばら撒いちゃうだろ」
「もう、仕方ないわね。空間収納で預かってあげる、使いたくなったら言って」
何もないはずのそこに黒い洞のようなものを出現させてポイッと投げ入れる様子を見たティモは「メチャクチャだ」と言ってその魔法に驚く。
「キミが手ぶらで歩いてる理由がわかったよ、デタラメ過ぎて追い付けないけど」
「慣れて貰わないと困るわ、私は”稀代の魔女”らしいから」
「う、うん」
どこか怯えている彼を見て旅に誘ったのは強引過ぎただろうかと、ドーラは急に寂しくなった。無理強いすることは良くないと誰より知っている彼女は改めて彼の意思を確認する。
「ねぇ、ティモは誰にも遠慮することなく自由に生きて良いのよ。無理して同行する必要はないわ」
「え、どういう意味?ドーラが誘ってくれたんじゃないか」
彼女に余所余所しさを感じたティモは眉をハチの字に下げて「ボクは一緒に歩きたい」とはっきり意思表示をした。
住み慣れた土地を捨てドーラとの旅を選んだのは言葉に翻弄されたわけではないと伝える。
「ほ、ほんと!?私の事怖くない?ずっと一緒にいてくれるの?」
「うん、ドーラは勇敢で強い子だ。怖いわけがないよ、ボクに自由をくれたじゃないか。お礼が出来ないのが心苦しいけど」
町長からせしめたお金を半分に分けようと言ったのだが、彼女は「お金には困ってない」と断わっている。どう恩を返したら良いのかティモは悩んでいるのだ。
「恩ね……だったら一つお願いがあるわ」
彼女は少しモジモジしながら「友達になって」と小さく言う。
「友だち、いいね。ボクも欲しかったんだ!」
すると互いに笑い合って「旅の相棒にして友人」となったことを大いに喜ぶのだった。
***
灯台からはすでに引き払っていたので、彼らはそのまま町を出ることにした。
旅発つ前に保存に利く食べ物と小物を購入して街中を巡ったが、誰も元灯台守りの少年に気が付かなかった。
どれほど彼に無関心であったのかが露見する。
「呆れたものね、海を護っていた恩人に誰も関心がないだなんて」
「仕方ないよ、ボクは14歳からほとんど外に出てないからね……」
苦笑するティモにドーラは心の奥に共通した痛みを感じて、無意識に彼の手を握っていた。
「ドーラ?」
「なんでもないの、空を飛ぶか道を這うかで悩んだだけよ」
「げ!空は勘弁してほしいかな」
初めての飛行体験が少々乱暴だったせいか、ティモは空の移動に苦手意識を持ってしまった。
空の旅は気持ちが良いのにとドーラは悄気たが、暫くは地を行くことにしたのである。
「何故かしら、ティモには嫌われることをしたくないのよね」
「そうなの?ボクはドーラを嫌うはずがないけど」
どうなるかなど、この先わからないという言葉を彼女は飲み込んで街道へと急ぐ、二人はとても晴れ晴れした顔をして町の境界線を跨いだ。
「さあ、ほんとうに自由になったわ。今後ともよろしくね!」
「うん、こちらこそよろしく!」
手を繋いだままだった事を彼らは途中で気が付いたが、暫くはこのままでいたいと互いに知らんふりをした。
「ねぇ行く当てはあるの?」
「そんなものないわよ、行きたいところへ適当に。ティモが望むなら海の街を探しても良いわ」
「そっか、自由とはそういうことなんだね。なんて楽しいことだろう!」
どんどんと背後の海街は小さくなって行くが、彼らは一度とて振り向くことはなかった。
「はいはい、きっちりしっかり徴収したわ。後は町長達の采配次第でしょ」
彼女はドッシリ重い袋を縮こまったままのティモへ手渡す。受け取りを渋る彼に無理矢理に押し付ける。
「ま、待ってこんな大金を持ち歩くなんて怖いよ!それに重くて途中でばら撒いちゃうだろ」
「もう、仕方ないわね。空間収納で預かってあげる、使いたくなったら言って」
何もないはずのそこに黒い洞のようなものを出現させてポイッと投げ入れる様子を見たティモは「メチャクチャだ」と言ってその魔法に驚く。
「キミが手ぶらで歩いてる理由がわかったよ、デタラメ過ぎて追い付けないけど」
「慣れて貰わないと困るわ、私は”稀代の魔女”らしいから」
「う、うん」
どこか怯えている彼を見て旅に誘ったのは強引過ぎただろうかと、ドーラは急に寂しくなった。無理強いすることは良くないと誰より知っている彼女は改めて彼の意思を確認する。
「ねぇ、ティモは誰にも遠慮することなく自由に生きて良いのよ。無理して同行する必要はないわ」
「え、どういう意味?ドーラが誘ってくれたんじゃないか」
彼女に余所余所しさを感じたティモは眉をハチの字に下げて「ボクは一緒に歩きたい」とはっきり意思表示をした。
住み慣れた土地を捨てドーラとの旅を選んだのは言葉に翻弄されたわけではないと伝える。
「ほ、ほんと!?私の事怖くない?ずっと一緒にいてくれるの?」
「うん、ドーラは勇敢で強い子だ。怖いわけがないよ、ボクに自由をくれたじゃないか。お礼が出来ないのが心苦しいけど」
町長からせしめたお金を半分に分けようと言ったのだが、彼女は「お金には困ってない」と断わっている。どう恩を返したら良いのかティモは悩んでいるのだ。
「恩ね……だったら一つお願いがあるわ」
彼女は少しモジモジしながら「友達になって」と小さく言う。
「友だち、いいね。ボクも欲しかったんだ!」
すると互いに笑い合って「旅の相棒にして友人」となったことを大いに喜ぶのだった。
***
灯台からはすでに引き払っていたので、彼らはそのまま町を出ることにした。
旅発つ前に保存に利く食べ物と小物を購入して街中を巡ったが、誰も元灯台守りの少年に気が付かなかった。
どれほど彼に無関心であったのかが露見する。
「呆れたものね、海を護っていた恩人に誰も関心がないだなんて」
「仕方ないよ、ボクは14歳からほとんど外に出てないからね……」
苦笑するティモにドーラは心の奥に共通した痛みを感じて、無意識に彼の手を握っていた。
「ドーラ?」
「なんでもないの、空を飛ぶか道を這うかで悩んだだけよ」
「げ!空は勘弁してほしいかな」
初めての飛行体験が少々乱暴だったせいか、ティモは空の移動に苦手意識を持ってしまった。
空の旅は気持ちが良いのにとドーラは悄気たが、暫くは地を行くことにしたのである。
「何故かしら、ティモには嫌われることをしたくないのよね」
「そうなの?ボクはドーラを嫌うはずがないけど」
どうなるかなど、この先わからないという言葉を彼女は飲み込んで街道へと急ぐ、二人はとても晴れ晴れした顔をして町の境界線を跨いだ。
「さあ、ほんとうに自由になったわ。今後ともよろしくね!」
「うん、こちらこそよろしく!」
手を繋いだままだった事を彼らは途中で気が付いたが、暫くはこのままでいたいと互いに知らんふりをした。
「ねぇ行く当てはあるの?」
「そんなものないわよ、行きたいところへ適当に。ティモが望むなら海の街を探しても良いわ」
「そっか、自由とはそういうことなんだね。なんて楽しいことだろう!」
どんどんと背後の海街は小さくなって行くが、彼らは一度とて振り向くことはなかった。
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