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「まあ、なんて素敵なの!大輪の薔薇ばかりだわ」
あれから一週間後、ニーナはアルベルトに誘われて薔薇園にいた。そこは国内屈指の花園であり、その評判から王族も良く訪れている。
「気に入って貰えて良かったよ、さぁそこのベンチで眺めようか。ついでにお茶を楽しもう」
「ええ、嬉しいですわ!」
そこの庭園には簡易なテーブルセットがあり、いつでもお茶や軽食が楽しめるのだ。早速と侍女らがポータブルティーセットを準備をしてあっと言う間に茶が供された。
「ふぅ、美味しいわ……今日のはセイロンね」
彼女はニコニコと上機嫌で茶と薔薇を楽しんでいた、目に写る花園はもちろん彼女を喜ばせたが、もっと楽しませるのはアルベルトの存在だ。
ちらりと横を見れば彼はウットリとした表情でニーナの顔を見ている、途端にドキリと心臓が跳ねて茶を吹きそうになった。
「んん!サルバティーニ様……そのように見られたら穴が空いてしまいます」
頬を赤らめながら小さく抗議するニーナはソッポを向いてしまう。
「ああ、ごめんよ。片時も目を離したくないんだ、少し拗ねた所もその横顔も愛らしい。目に焼き付けておかないと勿体ない」
「ま……まぁ、大袈裟です」
カァーと熱くなった頬は益々と赤くなり、炮烙玉のようになったニーナは湯気が立ちそうなほど赤い。
「ふふ、まるで熟れたトマトのようだ。その反応から察するに私は期待していいのかな?だと嬉しいのだけれど」
「う……恥ずかしいです、サルバティーニ様」
「名で呼んでくれていいよ、私のハニー。アルヴィと呼んでくれないか、親しい者はそう呼ぶんだ」
「え、と……アルヴィ様……」
紅潮しきったニーナは俯いてそう言うのが精いっぱいだ、そんな彼女の金髪をひとふさ手にとってキスを落とす。
「ひゃ!ひゃー!アルヴィ様!」
「うん、なんだい?」
***
幸福な微睡の中で漸く目を開けたアルミロはすぐ横で寝息をたてているレシアを抱擁した。
「んーなぁに、まだ眠いわ」
「ふふ、ボクの可愛い人、愛おしいよ。じつは決めたんだ、キミを正式に婚約者に迎えようと思う」
その言葉を聞いた彼女は目をパッチリと開けて「ほんとうに?」と起き上がった。
「もちろんだとも、ボクは自分の気持ちに嘘は付けない!ニーナみたいなギスギスした痩せ女など嫌いだからね」
「あぁ、その言葉を待っていたわ!とても嬉しいわ!」
豊満な肉体をさらけ出してアルミロに飛びついた、彼も嬉しそうにそれを受け止める。だが、いきなり抱き着いたものだからアルミロは咳き込んでしまう。
「ゲホゴホ!ゴホン!」
「あら、ごめんなさい。やり過ぎたかしら?」
「ううん、これくらい平気さ。ゲホゲホ……ふう、じゃあ早速と父上に報告だ。お叱りは受けるだろうがなんとかして見るよ」
「うふふ、期待しているわ」
ホテルを後にして辻馬車を乗り継ぎようやっとルファーノ伯爵邸に戻った。彼は愛しいレシアを横に抱くようにして意気揚々と屋敷に入った。その時に門番がいなかった事に気が付いたが「どうせトイレかなんかだろう」と気にも留めない。
「ん?どうしたことだろう、侍女も執事も出て来ないじゃないか。職務怠慢だな!」
彼は若干苛立ち門を潜る、すると外套を着こんだ父親と出くわす。
「やあ、父上!お出かけですか?その前に話したいことがあるんだ、是非聞いてくれないか?」
「……はぁ、なんだ手短に頼むよ」
窶れた顔の父親はいつもの覇気が見られない、訝しむアルミロだったが先ずは婚約の事を切り出さなければと気を取り直す。
「実はこの女性、レシアと正式に婚約したい!お願いだ父上!ボクは自分の気持ちに嘘はつけないんだ!」
「はぁ……勝手にしろ、私は疲れたよ」
「へ?本当に良いのですか?やったー!」
何も知らないアルミロは万歳してレシアと抱き合ったのである。
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