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「貴方なしでは生きられないわ」
「僕こそだよ、愛しいロミー」
愛の逃避行を選んだ二人は愛の世界に浸かって互いを抱きしめ合い怠惰な生活を始めていた。婚約破棄と婚約者交代を申し出たセシルであったが、両親バーノル夫妻に猛反対をされたのは言うまでもない。
不安がるロミーに「ボクを信じていれば問題ない」と彼に言い包められてバーノル伯爵家が所有する別荘へ籠っていた。
「ボクは経営学を学び、領地運営だって即座にこなせる自信があるんだ。だからこそコリンソン伯爵から是非婿にと申し出があったのさ」実際は帳簿一つ付けた経験がないのだが、法螺吹きが得意な彼は熱弁をふるってロミーに聞かせている。
「まぁ、優秀なのねセシー」
「婚約相手は不満だったけどね、でもそれも間もなく解決さ!」
ロミーの頬に唇を落としてそう言った。婚約者を都合よく交代することは不可能なのだが、婚姻する当人の気持ちが優先されて当たり前なのだと信じて疑わない。貴族同士の利害関係を求めた契約婚を甘く見過ぎている。
「ボクが当主に就いたら領地をさらに広げ開拓して、どこよりも豊かにするつもりさ」
「領地って増やせるものなの?知らなかったわ」
平民のロミーだったが、さすがにホイホイと土地を貰えるとは思っていない。国土は有限であって王が有能な臣下を見極めて下賜するものだから。
「ふふ、国王様は優れた者に褒美をくださる。ボクが頭角を露わせば放っておかないさ」
「そうなのね、私は良い奥様になれるかしら?不安だわ」
彼女は眉を下げて小動物のように震えた、演技とは知らないセシルは”可愛い”と言って抱き寄せる。
「ボクが支えるさ、意地悪するような輩がいたらどんな相手でも盾になるよ」
「なんて頼もしい……とっても素敵よ私のセシー」
しがない庭師の娘から焦がれ続けてきた伯爵夫人の座が手に入る、そして、成長するにつけ目障りに感じてきたオフェリアを蹴落とせると確信を持ったロミーは、彼の胸元に顔を埋めて黒い笑みを浮かべた。
『私があんたの全部を貰ってあげる』
***
その頃、落ち着きを取り戻してきたコリンソン家では婚約の白紙に向けて動き出していた。バーノル夫妻は良縁が台無しになったことを悲嘆していたが「やむを得ない」事態になったことで合意したのだ。
「どうして浅はかなことをしたのかしら?継ぐ家がない3男こそ厳しくしてきたのに」
自宅のベランダにでて空を見つめるバーノル夫人が悲しそうに呟いた。それから息子有責で高額な慰謝料を払う羽目に陥り、少し傾いてしまった我が家の事情に胃にキリリと痛みが走る。
そこへ白髪が増えた夫がふらついた足取りで現れた、少し酒臭いと感じた夫人は鼻に皺を寄せる。
「貴方、ほどほどになさいませ」
「……うむ、わかっている。……融資先をさがすのに疲れてしまったよ」
伯爵とはいえ莫大な出費は頭が痛い、しかも慰謝料は一括である。縁戚中に頭を下げてなんとか集めたが、信頼が落ちた伯爵の仕事に陰りが出て来たのだ。穀倉地を持つバーノル家は麦と芋類の生産が生業だったが、似たような貴族はいくつか存在する。
「足元を見られ始めたぞ、麦の売値が落ちてしまった。なのに肥料の買い付けが……はぁ~」
「貴方、長男に家督を渡す時期かもしれませんわ」
「……そうだな、そうかもしれない」
問題を起こした当代より次代に期待するのが世間の目というものだ。勇退を進めるのは妻だけではなかった。
「僕こそだよ、愛しいロミー」
愛の逃避行を選んだ二人は愛の世界に浸かって互いを抱きしめ合い怠惰な生活を始めていた。婚約破棄と婚約者交代を申し出たセシルであったが、両親バーノル夫妻に猛反対をされたのは言うまでもない。
不安がるロミーに「ボクを信じていれば問題ない」と彼に言い包められてバーノル伯爵家が所有する別荘へ籠っていた。
「ボクは経営学を学び、領地運営だって即座にこなせる自信があるんだ。だからこそコリンソン伯爵から是非婿にと申し出があったのさ」実際は帳簿一つ付けた経験がないのだが、法螺吹きが得意な彼は熱弁をふるってロミーに聞かせている。
「まぁ、優秀なのねセシー」
「婚約相手は不満だったけどね、でもそれも間もなく解決さ!」
ロミーの頬に唇を落としてそう言った。婚約者を都合よく交代することは不可能なのだが、婚姻する当人の気持ちが優先されて当たり前なのだと信じて疑わない。貴族同士の利害関係を求めた契約婚を甘く見過ぎている。
「ボクが当主に就いたら領地をさらに広げ開拓して、どこよりも豊かにするつもりさ」
「領地って増やせるものなの?知らなかったわ」
平民のロミーだったが、さすがにホイホイと土地を貰えるとは思っていない。国土は有限であって王が有能な臣下を見極めて下賜するものだから。
「ふふ、国王様は優れた者に褒美をくださる。ボクが頭角を露わせば放っておかないさ」
「そうなのね、私は良い奥様になれるかしら?不安だわ」
彼女は眉を下げて小動物のように震えた、演技とは知らないセシルは”可愛い”と言って抱き寄せる。
「ボクが支えるさ、意地悪するような輩がいたらどんな相手でも盾になるよ」
「なんて頼もしい……とっても素敵よ私のセシー」
しがない庭師の娘から焦がれ続けてきた伯爵夫人の座が手に入る、そして、成長するにつけ目障りに感じてきたオフェリアを蹴落とせると確信を持ったロミーは、彼の胸元に顔を埋めて黒い笑みを浮かべた。
『私があんたの全部を貰ってあげる』
***
その頃、落ち着きを取り戻してきたコリンソン家では婚約の白紙に向けて動き出していた。バーノル夫妻は良縁が台無しになったことを悲嘆していたが「やむを得ない」事態になったことで合意したのだ。
「どうして浅はかなことをしたのかしら?継ぐ家がない3男こそ厳しくしてきたのに」
自宅のベランダにでて空を見つめるバーノル夫人が悲しそうに呟いた。それから息子有責で高額な慰謝料を払う羽目に陥り、少し傾いてしまった我が家の事情に胃にキリリと痛みが走る。
そこへ白髪が増えた夫がふらついた足取りで現れた、少し酒臭いと感じた夫人は鼻に皺を寄せる。
「貴方、ほどほどになさいませ」
「……うむ、わかっている。……融資先をさがすのに疲れてしまったよ」
伯爵とはいえ莫大な出費は頭が痛い、しかも慰謝料は一括である。縁戚中に頭を下げてなんとか集めたが、信頼が落ちた伯爵の仕事に陰りが出て来たのだ。穀倉地を持つバーノル家は麦と芋類の生産が生業だったが、似たような貴族はいくつか存在する。
「足元を見られ始めたぞ、麦の売値が落ちてしまった。なのに肥料の買い付けが……はぁ~」
「貴方、長男に家督を渡す時期かもしれませんわ」
「……そうだな、そうかもしれない」
問題を起こした当代より次代に期待するのが世間の目というものだ。勇退を進めるのは妻だけではなかった。
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