虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)

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11(甘)

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残暑が僅かに残る初秋の王家の庭園では、紅葉しだした樹木が緩やかに揺れている、その中央に在る噴水がサワサワと音を立てていた。そこに足を浸して歓談するのはアルベリックとオフェリアだ。
王子は半年の間にずいぶん面差しが大人びていた、髪型を整えスーツの色を変えたことも影響している。ふたつ年上のオフェリアに相応しくなりたいとかなり背伸びをしていた。

婚姻まで約1年半、待ち遠しいと王子は何度言ったことだろう。
近頃は王に押し付けられた町の復興にも着手して、忙しさは増すばかりだった。久しぶりの逢瀬となるこの日、オフェリアの方が甘えを発揮して彼の肩に凭れて頬を染めている。
王子は擽ったいその甘い触れあいにデレデレになって顔面が土砂崩れでも起きたかのようなだらしない顔をしている。
「リアが甘えてくれるなんて、ボクの心臓が早鐘のようにウルサイよ。その唇に触れたらどうなってしまうんだろう。あ!いやそんなはしたない劣情を持つなんて……ごめんリア」
多感な年頃の王子は色々な感情が吹き出して、己の心を制御できていない様子だ。だが、婚約者の彼女は”そんなアルも素敵”と心の奥で呟く。

「リア、ボク達は相思相愛と思って良いんだよね?そうだよね?」
「まぁ今更そんなことを聞くなんて、アルは意外と鈍いのですのね。私は貴方を思うだけで心臓が煩くなりますのよ」恥ずかしそうに気持ちを吐露したオフェリアは「キャ」と言って顔を手で覆う。はしたないことを口走ってしまったと思っているようだ。
「奥ゆかしいリアが好きだよ、おや、耳まで赤くして……照れた顔が見たいな~ねぇ?」
「アルったら!許して頂戴ほんとうに恥ずかしいの!きっと真っ赤でブサイクになっているわ!」

覆う手を外そうとする王子とそれを必死に抵抗する彼女、そこに側近がいたなら「いい加減にしろ」と切れいていたに違いない。照れて可愛らしいオフェリアの姿を独り占めしている王子は人払いをしておいて良かったと思うのだった。
「あぁリア大好きだ、愛しているよ」
「私もです、アル」
王子は更に赤くなった彼女にちゃんと愛していると言って欲しいと強請った。恥ずかしさのあまり口にすることを避けていた彼女の顔は火を噴くのではないかと思うほど熟れたホオズキのようになった。
「もう!きょうのアルは少し意地悪ですわね!私の気持ちはおわかりでしょう?」
ポカポカと彼の胸板を叩くオフェリアの顔はさらに赤くなって破裂寸前の炮烙玉のようになった。もうこれ以上は赤くはなれないだろう。

「ごめんごめん、だって可愛いからつい……照れすぎて倒れたら大変だ」
揶揄い過ぎたことを詫びて王子は彼女を抱きしめた、すると互いの鼓動が共鳴するようにドクドクと脈打っているのがわかった。
「ボクはとても幸せだ、初恋は実らないと言うけれどそんなことは無かった」
「は、初恋!?い、いつ、いつから私を見ていて下さったの?」
急に冷静になったらしいオフェリアは王子に詰め寄って彼を困らせてくる、立場が逆転した。

「え、え……いつって。そんなこと聞かないでおくれ!」
今度は王子のほうが、ボワッと顔から火を噴くかの如く真っ赤になって抵抗するではないか。優勢となったことに気が付いたオフェリアは大胆にも彼の膝の上に乗り上目遣いで「教えて」と懇願をしてくる。
グンと距離をつめてきた彼女の柔らか肢体が、まだ幼い彼の心を揺さぶって来る。艶やかな唇がおねだりしてくるし、大きく膨らんだ胸元から目が離せなくなった王子は、再び欲が湧いてきて「勘弁してくれ」と嘆く。

「教えて!お願い!秘密にするから!王妃様にも言わないわ」
「ちょ、ちょっとそれ以上は……ああああ、これはなんの拷問なの!?ふにふにプニプニ……」
柔かく丸い感触が彼の腕を刺激してきて欲情を煽ってくるのだ、そうとは知らない彼女は告白に照れているのねと調子に乗り出した。
「ね~え、どうして目を背けるの?お願いこっちを向いて寂しいわ」
「わ、わかったから!一旦落ち着こうよ!」
迫る彼女からなんとか逃げようと仰け反る王子だったが、そこは縁が狭い噴水だ。失念していた彼はバランスを崩して――

バシャン!
「わーー!」
「きゃーー!」
二人同時に水の中へ落ちてしまった、幸い深さはないので尻もちを着いただけで済んだ。だがしかし、濡れネズミとなった彼らの体に衣服がペッタリ張り付いた、王子はともかくオフェリアのサマードレスは薄い生地なために透けている。でも艶めかしい姿になってしまった彼女は自身の現状を理解していない。濡れた髪の毛を払いあげる仕草が妖艶過ぎた。
「水の女神がボクを誘惑している……」
「え?」

限界を超えたアルベリックは男の顔になった、そして彼女を抱き寄せると桃色の唇を奪っていた。
激し目に吸い付かれたオフェリアは突然のことに目を見開いたまま固まる。
異性とキスなどしたことがない彼女はパニックになり息が出来なくなった。どうやって呼吸していたかわからなくなったらしい。
そして、ペチペチと肩を叩かれていることに気が付いた王子は「ご、ごめん!」と我に返る。つうっと糸を引く愛の残滓が官能的だ。

「り、リアあのビックリしたよね。ごめん!あぁボクはなんてことを」
狼狽えてはいるが彼の腕は彼女の身体を離そうとはしなかった。ちゃっかりスケベな王子。
「……アル。私はとっても……幸せよ」
慣れない乱暴な口づけだったが、彼女には十分に愛が伝わったようで、頬を染めて潤んだ瞳で彼を見つめている。それがまた煽情的な顔だった。

「ああー!もうボクはボクはーーー!」

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