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侍女エイラの嘆き
しおりを挟む王女の侍女は不満そうに愚痴る、それはそうだろう。本来のメリントンは地味な栗毛でもなく瞳の色も違うのだから。
「あぁ……何故にこのような地味な色味なのでしょう。本当は美しい金髪に天色の瞳をされているというのに」
グチグチと零しながら髪を梳く侍女ことエイラは何度目かわからない溜息を零す。
「だって仕方ないわ、本来の髪色と瞳の色は目立ち過ぎるのだもの。王族特有のこの青は隠すしかないのよ」
「うぅ……メリントン様の美しさが陰ってしまいますぅ」
「だから”メリル・デイトリクス”だと言ったでしょ、覚えてよね」
彼女は憂鬱そうにそう告げると「そろそろ出るわ」と鞄を受け取り動いた。慌てて侍女も同じ制服を着て「お供します」と主の鞄を奪う。
「ちょっと、自分の事は…」
「ダメです、”お嬢様”なんですからね」
「もう、甘やかさいないでよ……」
寄宿舎を出て三学年の校舎に差し掛かった所で思わぬ事件が起きた。あのポルドワン・ランブールがワザとぶつかって来たのだ。門で偶然にも”遭遇”してお近づきになる作戦のようだ、ベタである。
「きゃっ!」
「わぁ!済まない!」
ここまでは彼の作戦通りである、ところがぶつかったのはメリル・デイトリクスではなく、侍女のエイラの方だった。しかもしっかりと身体を密着させて抱きしめている、エイラは突然の事に「何をなさいます」と言って頬をビンタした。
「え、あれーーー?」
人違いをやらかし驚いたポルドワンは素っ頓狂な声を上げて尻餅を付く。とんだ三文芝居だ。
「あら、やり過ぎよエイラったら。そこの貴方だいじょうぶ?」
「は、はあ……」
経緯はどうあれきっかけを作ったポルドワンは立ち上がり詫びを入れる、ドジっ子作戦は何とかなったのだ。申し訳ないとヘラヘラ笑い自己紹介する。
「ポルドワン・ランブールと言います、以後お見知りおきを」
「ちょっと!お見知りおきではないわ、私のお尻を触ったでしょう!許せないわ!」
「まぁ?」
思わぬエイラの主張に驚くメリルだ、確かにワザと打つかり合い身体を密着させた際、軽く尻を撫でていた。それはメリル・デイトリクスと思ってのことだ。ポルドワンはとんだスケベということだ。
「ま、待って!不可抗力というものだよ、申し訳ない」
「どこが!しっかり指が食いついていたわよ!」
そんなふたりの言い合いを見て「さっそく仲良しねぇ」とメリルは微笑んだ。
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