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油断と警戒
しおりを挟むその後のポルドワンはやたらとメリルを親切に接してきた、男性に免疫のない彼女は翻弄されがちだ。それも、しつこくするでもなくある程度の距離を取って来る。異性を落とす常套手段である。
「あの方は親切だわ、それに見目も悪くない。王配としては理想的ね」
そうポロリと零すメリルにギョッとするのは侍女のエイラである、彼女はポルドワンの胡散臭い優しさを警戒している。
「そうでしょうか、もっと警戒しないといけませんよ?」
「あら、そうなの。でも成績も悪くなさそうよ、第一候補として見ておくべきだと思うの」
「お嬢様……判断基準が緩すぎですわ、ユルユルでございます」
心配症の侍女は探りを入れることにした、護衛を兼ねている彼女はとても優秀なのだ。先ずはポルドワンの評判の聞き込みを始めるのだ。
「ごめんなさいお嬢様、いいえ王女様、しばしの間眠っていてください」
「え?……あぁ……ふにゃぁ……」
甘い香りを放ったエイラはメリルを惰眠に落とした、それから陰の者を使い寝室を何重にも包囲して彼女は出かける。
「良いこと、何人も通してはなりませんよ」
「は、お任せください!身命を賭しまして」
***
「え、ランブール様ですか?それは紳士的で女生徒に人気ですわ。黒薔薇の名は伊達ではありませんの」
「へぇ、そうなんですかー素晴らしい(棒)」
誰に聞いても似たような返事が返ってきた、それは返って”怪しんでください”と言っているようなものだ。エイラは長期戦になりそうかと思っていた。
ところが幾人かに質問を繰り返していたところ、不自然な視線を感じる。素早く振り返ると一人の女生徒が柱に隠れたのを見た。
「あら、何か御用なのかしら。御嬢さん、ランブールのことで何か?」
「ひぃ!ごめんなさい、ごめんなさい!悪気はなかったんですー!」
平身低頭で拝むように平伏した女生徒はガタガタと震えている、呆れた侍女は「そんなに恐れないで」と言って校舎陰に誘う。
「それで、何を知っているのかしら。どんな些細なことでも良いわ」
「……あの、情報料とか……貰えますか?」
「それは内容次第ね、最低でも金貨3枚なら支払うわ。どう?」
女生徒は一般生徒らしく擦り切れた制服を着ていた、どうやら裕福層ではないらしい。態度もどこかオドオドしている。彼女はミラ・ランドンと名乗った、平民で特待生として入学したらしい。
「あの実は、ランブール様は去年二学年の時に―――」
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