不思議森の妖精ご飯

音爽(ネソウ)

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涙の意味

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テントウムシは花弁のハンカチをそっと当ててくれた。

「それはアナタのご飯よね、美味しくないの?」

「ううん、美味しいよ、美味しいはずなのに味がしないんだ」
ポロポロ落ちる温いものが止まらない。

テントウムシは前足をアゴあたりに添えて考えた。
「人間も悲しい時に塩水を流すって聞いたわ」

妖精さんも悲しいことがあったのねと、前足2本で背中をポンポンしてくれた。

ぽんぽんトントンぽんぽんトントン


優しいリズムは、涙が止まるまで続いた。




――――――――『・・・春にはお空にいっちゃうの』――――――――




今朝そう言ったテントウムシの言葉をボクはどうして……



☆★


眩しい光で目が覚めた。
泣いてるうちに疲れて寝てしまったようだ。

ベッドのサイドテーブルに花が揺れてる。
昨夜テントウムシが置いていったものだ。

薄紫の知らない花だった。

今朝は少し冷えて寒い、ちょっとづつ冬がやってきてるんだ。
キュッとなにか痛い。

葉っぱに溜まった朝露で顔を洗う、熱い目が気持ち良い。


居間に行って梁を見上げたけどテントウムシはいなかった。
朝ごはんへ出ているのかな。

帰ってくるかな?

泣き虫の面倒なんて疲れちゃったよね。ごめん……

タンポポのお茶でスッキリしよう。
カップに黄色い花が咲いた、見ているだけで幸せになる。

テントウムシが帰ってきたらいっぱい話そう、彼女の羽を磨いてあげよう。
そしていっしょに食べらるお菓子を考えてみよう。

きっと甘くて元気になるよ。
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