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鉄扇と指輪
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帝国が進軍して各国を掌握していく事実を、冒険者の体験にすり替えて話すクレイブ。
彼が皇太子として戦いに参加していた実際の話なので若干血生臭い。
だが、王女はちっとも怯まないで聞き入った。
「凄いわーとっても勇敢なのね!私も冒険者になりたいわ」
「王女様が?王が許さないだろう」
「そーなのよね!でもわたし結構強いのよ!城の剣士に負けないもの、王子に生まれたら良かった!」
「キミが男では俺が困るよ」
少し赤くなりボソボソいうクレイブ。
「え、なにか言った?」
クレイブは顔を真っ赤にしながら「手合わせしないか」と誘って誤魔化した。
「いいわよ!舐めたらケガするからね?」
「うん、もちろん油断しないさ」
クレイブは錆びた剣、ハウラナは暗器で戦うことになった。
居室は狭いからとハウラナの転移魔法で城の中庭に移動した。
そこには見回り中のはずの兵達が寝転んでいて、ハウラナは驚いた。
「ごめん、俺が眠らせたんだ」
「ふふ、面白い術を使うのね」
屈強な兵士達が、子供みたいな顔で寝腐っているのを見て二人は笑い転げた。
「魔法は使う?私が空間魔法を使ったら貴方は秒で負けるわよ、亜空間に飛ばされた一生戻れないから」
「それは困るな、魔法は禁止!俺も使わない」
互いに了承し合うと微笑みあって試合がはじまった。
キンキンと金属がぶつかり合う音が庭に響く、ハウラナは得意の鉄扇と猫爪を使いクレイブを押してきた。
「くっ、細腕で良く動くね!それ相当重いだろ?」
「貴方も鈍ら一本のくせにやるじゃない!」
防戦一方のクレイブは悔しそうに唇を噛んだ。
舞うようにクルクルと攻撃してくるハウラナは、死角からクナイを何本も飛ばしてくる。
それを躱すのに手いっぱいなクレイブは、つい術を使ってしまった。
「あ!?」
魔法なしと油断していたハウラナは脳に≪≪転がれ≫≫と命令されて尻もちをついた。
我に返ったクレイブが駆け寄って謝罪する。
「ご、ゴメン!つい術を……俺の負けだ」
「ふぅ……ズルイわ、でも仕方ない。貴方は錆びた剣だけだったでしょう、相子にしない?」
そういう事ならと互いに手を握り合って痛み分けにした。
「ところで君の名を聞いてない」
「あら、ウッカリしてた。私はハウラナよ。」
「ハウラナ……古の言葉で春の花だね。可愛いキミにピッタリだ」
そういうクレイブにハウラナは頬を染めた、家族以外に褒められたことがない彼女はどうして良いかわからない。
「あうぅぅぅ!」
「どうしたのハウラナ?」
何でもないと彼女は頭をブンブンと振って顔を覆う。
クレイブが何か言いかけた時、倒れていた兵士たちが立ち上がって王女のほうへ駆け寄って来た。
「あ、時間切れみたいだ。残念、帰らなきゃいけない」
「え、なにクレイブ急にどうしたの?」
じぶんは招かれざる客だと簡単に説明してクレイブは彼女に別れを告げた。
「あ、待って!途中で困ることがあったらこれを使って!」
ハウラナは自分の指から抜き取ったものを彼に握らせた。
「指輪、いいの?大事な物なんじゃ」
「暗器のひとつだから宝飾価値なんてないわ。役には立つけどね?」
彼女はウィンクすると使い方を教えて、離れた。
「2回分仕込んであるわ、大事に使ってね」
そう言って手を振る彼女に彼も片手を挙げて応えた。
クライブは城壁を駆けあがり去って行った、途中で2回ほど白い煙が上った。
役立たずになった使い捨ての指輪は、少し錆びて今も彼の小指に収まっていた。
ハウラナと再会するまで。
彼が皇太子として戦いに参加していた実際の話なので若干血生臭い。
だが、王女はちっとも怯まないで聞き入った。
「凄いわーとっても勇敢なのね!私も冒険者になりたいわ」
「王女様が?王が許さないだろう」
「そーなのよね!でもわたし結構強いのよ!城の剣士に負けないもの、王子に生まれたら良かった!」
「キミが男では俺が困るよ」
少し赤くなりボソボソいうクレイブ。
「え、なにか言った?」
クレイブは顔を真っ赤にしながら「手合わせしないか」と誘って誤魔化した。
「いいわよ!舐めたらケガするからね?」
「うん、もちろん油断しないさ」
クレイブは錆びた剣、ハウラナは暗器で戦うことになった。
居室は狭いからとハウラナの転移魔法で城の中庭に移動した。
そこには見回り中のはずの兵達が寝転んでいて、ハウラナは驚いた。
「ごめん、俺が眠らせたんだ」
「ふふ、面白い術を使うのね」
屈強な兵士達が、子供みたいな顔で寝腐っているのを見て二人は笑い転げた。
「魔法は使う?私が空間魔法を使ったら貴方は秒で負けるわよ、亜空間に飛ばされた一生戻れないから」
「それは困るな、魔法は禁止!俺も使わない」
互いに了承し合うと微笑みあって試合がはじまった。
キンキンと金属がぶつかり合う音が庭に響く、ハウラナは得意の鉄扇と猫爪を使いクレイブを押してきた。
「くっ、細腕で良く動くね!それ相当重いだろ?」
「貴方も鈍ら一本のくせにやるじゃない!」
防戦一方のクレイブは悔しそうに唇を噛んだ。
舞うようにクルクルと攻撃してくるハウラナは、死角からクナイを何本も飛ばしてくる。
それを躱すのに手いっぱいなクレイブは、つい術を使ってしまった。
「あ!?」
魔法なしと油断していたハウラナは脳に≪≪転がれ≫≫と命令されて尻もちをついた。
我に返ったクレイブが駆け寄って謝罪する。
「ご、ゴメン!つい術を……俺の負けだ」
「ふぅ……ズルイわ、でも仕方ない。貴方は錆びた剣だけだったでしょう、相子にしない?」
そういう事ならと互いに手を握り合って痛み分けにした。
「ところで君の名を聞いてない」
「あら、ウッカリしてた。私はハウラナよ。」
「ハウラナ……古の言葉で春の花だね。可愛いキミにピッタリだ」
そういうクレイブにハウラナは頬を染めた、家族以外に褒められたことがない彼女はどうして良いかわからない。
「あうぅぅぅ!」
「どうしたのハウラナ?」
何でもないと彼女は頭をブンブンと振って顔を覆う。
クレイブが何か言いかけた時、倒れていた兵士たちが立ち上がって王女のほうへ駆け寄って来た。
「あ、時間切れみたいだ。残念、帰らなきゃいけない」
「え、なにクレイブ急にどうしたの?」
じぶんは招かれざる客だと簡単に説明してクレイブは彼女に別れを告げた。
「あ、待って!途中で困ることがあったらこれを使って!」
ハウラナは自分の指から抜き取ったものを彼に握らせた。
「指輪、いいの?大事な物なんじゃ」
「暗器のひとつだから宝飾価値なんてないわ。役には立つけどね?」
彼女はウィンクすると使い方を教えて、離れた。
「2回分仕込んであるわ、大事に使ってね」
そう言って手を振る彼女に彼も片手を挙げて応えた。
クライブは城壁を駆けあがり去って行った、途中で2回ほど白い煙が上った。
役立たずになった使い捨ての指輪は、少し錆びて今も彼の小指に収まっていた。
ハウラナと再会するまで。
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