完結 妹がなんでも欲しがるので全部譲りました所

音爽(ネソウ)

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姉から指輪を強奪して有頂天になり食事の席へ向かうカリーナは最大の過ちを犯したことに気が付いていなかった。
自宅のテラスで用意された昼食のテーブルにはすでに婚約者の姿があった。
姉のモノだから欲しがって手に入れたアロイスだったが、微かに愛情のようなものが芽生えていた。
それなりの家格で生涯困らない程度の財を持つ彼は結婚相手としては申し分ない。

「おまたせアロイス!さっそく食事にいたしましょう、デザートはバニラアイスに梨のコンポートらしいわ」
甘い物が好きらしいアロイスはさぞ喜ぶだろうと席に着いて早々に伝えた。
少し子供っぽい顔をするカリーナに彼は少し眉を動かしたが、愛しい相手には違いない。この日は結婚式の打ち合わせを兼ねているのだ。



「やはり両家の都合上は来年の春頃になるだろうね、はっきりした期日は教会からの返事次第だよ」
「ふふ、そうね。招待する親戚も遠方の家が多いもの」
二人は王都の大きな教会で盛大に式を挙げる予定である。だが親戚筋が必ずもタウンハウスを所持しているわけもなく、かなり田舎のカントリーハウスを拠点にしてる者も多い。祝ってもらいたい側としては王都に寝泊まりする場所を提供しなければ失礼になる。

お花畑のカリーナとてそれくらいの常識は親に叩きこまれていた。
見栄を張ってなんぼの貴族なのだから金を出し渋っていては舐められる。それ故、出来るだけ盛大にするには資金の準備期間がいると言うわけだ。
「あぁ楽しみだわ~王都一のテーラーに予約したドレスはどれくらい仕上がったかしら」
「はは、気が早いな。先週採寸したばかりじゃないか」
何かと逸り過ぎな婚約者に呆れながらも注がれたワインで口を湿らせてほんのり酔うアロイスだ。

ランチコースが次々進み、いよいよデザートという所でアロイスはテーブルの端に置いた小さな箱に気が付いた。
よくよく見れば自分がユリアネに贈った指輪の箱だ、怪訝な顔をするアロイスの様子を見たカリーナは「バレたか」と悪戯な笑みを浮かべた。
「うふふ~貰ってきちゃった!ピンクダイヤは私のほうが似合うでしょ?」
「……キミって子は、動けない彼女の慰めにと贈ったものなんだよ。欲しいなら別に作らせて贈るさ」
さすがに彼女の行き過ぎた強欲を窘める彼だがカリーナはどこ吹く風だ。

「やーね、姉のモノだから欲しいのよ。それに婚約者の私を差し置いて彼方に物乞いするなんて非常識じゃなくて?」
すべてにおいて非常識な振る舞いをしてきたカリーナが姉を糾弾するとは呆れたことだ。
何か言おうとした彼を無視して、匣を乱暴に開けるとカリーナは己の指に指輪を填めこんだ。
「ほーら!やっぱり私に似合っているわ!」
地味な彫金だったが差し込む陽に照らされてピンクダイヤはキラキラ美しく輝く。

彼女がウットリそれを眺めていると透けた輝きだったはずの石がどういうわけか濁りだした。
「え!?なによこれ!……汚れてるのかしら」
手巾を取り出して台座の石を磨いてみたが、いっこうに曇りが取れない。それどころかどんどん濁りは増えて淡い桃色が黒ずんでいく、どういう事かと驚く二人は騒ぎだした。

「き、気持ち悪い!なんなのよこれは!」
カリーナは怒り指輪を外そうと躍起になったが、その不気味な指輪は外れる様子がない。



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