6 / 9
6
指輪から発動したユリアネの呪いはカリーナに容赦はしない、朽ちかけの老木のようになった彼女は姉の全てを欲しがったことを後悔することになる。
『姉様の物は全部欲しいの!』
『そう、わかったわ。全部あげる』
かつてカリーナの誕生日で躱した言葉である、その日の彼女はなんでも許されて横暴が過ぎた。それを容認した両親がすべて悪いのだ、結果、姉ユリアネの部屋は塵以外なにも残らなかった。
必要最低限の家具さえ奪われたユリアネは悲しそうな顔を演技した、そうすることでカリーナの欲は満たされる。わかっていて姉は敢えてそう見せつけたのだ。
『あっはっは!ざまぁ!姉様は虫みたいに床で寝れば良いのよ!』
全て奪い取り満杯になった己の部屋を眺めてカリーナは上機嫌であった、代わりに親たちが上等な家具類を姉に提供しなければならないことを知らずに。
『年上の者は欲しがる目下の者に与えなければなりません、よろしくて?』
『ユリアネ……あなたという子は!』
妹に奪われたものと同等の数を搾取せんとユリアネは母に侮蔑の視線を向けながら物品を漁った。強欲なところが似ているのか金に物を言わせて作らせた一点物のアクセサリーが山のように鏡台の引き出しから現れた。
粗方を奪われた母は号泣したが、因果応報なのでどうしようもない。
ユリアネは親たちが言い放った言葉をそのまま呪術契約にしたのである、このような結果になるとわかっていて両親はカリーナに好き勝手させているのだ。
そして、心に傷を負った代償を払うのは父親だ。溜め込んでいたへそくり金貨のほとんどをユリアネに差し出さなければならなかった。当然激高する父だったが呪いの契約を反故すれば相応の罰が与えられる。
一度だけ支払いを拒否した彼は手酷い呪いを受けて片目の視力を失い片足の自由を奪われた、父親は大慌てで娘に懺悔して慈悲を請いたが戻されたのは視力だけだった。
『これに懲りたら出し渋りを止めることですわ』
『……わかった、今後は満額支払うだからどうか……』
呪いが嫌ならばカリーナの性格を矯正するなり、制止すれば良いのにとユリアネは思うのだが両親は態度を改める様子はないまま今日まで過ごしてきた。
「これもまた呪いなのかしら、私のではなく妹カリーナが掛けた強欲の呪いに」
「左様ですね、まったく理解し難い心理でございます」
そうとしか思えない所業だったので、彼女と侍従らはそう解釈をせざるをえない。
***
「あぁあああ!嘘でしょ……私の愛らしかった顔が真珠のように美しかった白い肌がぁ!」
積年の恨みをその身に受けた妹は生気をすべて吸い取られたかのような姿になった、まるで老婆のような彼女を見てアロイスはあっさりと婚約破棄を申し出て逃げた。
形だけでなく愛そうとした矢先の出来事にカリーナは捨てられて日々泣いて暮らす羽目になった。
しかも四肢がまったく動かなくなり寝具から起きられない状態になっている。
これは寝たきりになっていたユリアネの身体の状態を貰い受けたせいだ。カリーナが望んだ「姉様のものは全部欲しい」と願った報いなのだ。心から懺悔しようともう取り返しがつかない。
そして、アロイスの心変わりはさっそく形になり姉へ再婚約を申し出てきたのである。
「不随になったカリーナでは嫁として迎え入れるわけにいかなくなった。どうかこれまでの事を水に流してくれないか」
「水に流すですって?愚かな物言いだこと、それは許す側の言葉だわ。彼方は脳味噌までもカリーナの毒に浸食されたの?とても真面とは思えないわ」
「そこを何とか!二度も婚約を失敗した私はどこの家からも相手にされないんだ!」
歴史が長く裕福なアロイスの子爵家だが、好条件とはいえ下位貴族で曰く付きとなれば寄って来る家はないようだ。
「そうですか、わかりました。ですが条件がございます」
「条件とは?私はなんでもするぞ!」
彼の不幸はいま始まった。
『姉様の物は全部欲しいの!』
『そう、わかったわ。全部あげる』
かつてカリーナの誕生日で躱した言葉である、その日の彼女はなんでも許されて横暴が過ぎた。それを容認した両親がすべて悪いのだ、結果、姉ユリアネの部屋は塵以外なにも残らなかった。
必要最低限の家具さえ奪われたユリアネは悲しそうな顔を演技した、そうすることでカリーナの欲は満たされる。わかっていて姉は敢えてそう見せつけたのだ。
『あっはっは!ざまぁ!姉様は虫みたいに床で寝れば良いのよ!』
全て奪い取り満杯になった己の部屋を眺めてカリーナは上機嫌であった、代わりに親たちが上等な家具類を姉に提供しなければならないことを知らずに。
『年上の者は欲しがる目下の者に与えなければなりません、よろしくて?』
『ユリアネ……あなたという子は!』
妹に奪われたものと同等の数を搾取せんとユリアネは母に侮蔑の視線を向けながら物品を漁った。強欲なところが似ているのか金に物を言わせて作らせた一点物のアクセサリーが山のように鏡台の引き出しから現れた。
粗方を奪われた母は号泣したが、因果応報なのでどうしようもない。
ユリアネは親たちが言い放った言葉をそのまま呪術契約にしたのである、このような結果になるとわかっていて両親はカリーナに好き勝手させているのだ。
そして、心に傷を負った代償を払うのは父親だ。溜め込んでいたへそくり金貨のほとんどをユリアネに差し出さなければならなかった。当然激高する父だったが呪いの契約を反故すれば相応の罰が与えられる。
一度だけ支払いを拒否した彼は手酷い呪いを受けて片目の視力を失い片足の自由を奪われた、父親は大慌てで娘に懺悔して慈悲を請いたが戻されたのは視力だけだった。
『これに懲りたら出し渋りを止めることですわ』
『……わかった、今後は満額支払うだからどうか……』
呪いが嫌ならばカリーナの性格を矯正するなり、制止すれば良いのにとユリアネは思うのだが両親は態度を改める様子はないまま今日まで過ごしてきた。
「これもまた呪いなのかしら、私のではなく妹カリーナが掛けた強欲の呪いに」
「左様ですね、まったく理解し難い心理でございます」
そうとしか思えない所業だったので、彼女と侍従らはそう解釈をせざるをえない。
***
「あぁあああ!嘘でしょ……私の愛らしかった顔が真珠のように美しかった白い肌がぁ!」
積年の恨みをその身に受けた妹は生気をすべて吸い取られたかのような姿になった、まるで老婆のような彼女を見てアロイスはあっさりと婚約破棄を申し出て逃げた。
形だけでなく愛そうとした矢先の出来事にカリーナは捨てられて日々泣いて暮らす羽目になった。
しかも四肢がまったく動かなくなり寝具から起きられない状態になっている。
これは寝たきりになっていたユリアネの身体の状態を貰い受けたせいだ。カリーナが望んだ「姉様のものは全部欲しい」と願った報いなのだ。心から懺悔しようともう取り返しがつかない。
そして、アロイスの心変わりはさっそく形になり姉へ再婚約を申し出てきたのである。
「不随になったカリーナでは嫁として迎え入れるわけにいかなくなった。どうかこれまでの事を水に流してくれないか」
「水に流すですって?愚かな物言いだこと、それは許す側の言葉だわ。彼方は脳味噌までもカリーナの毒に浸食されたの?とても真面とは思えないわ」
「そこを何とか!二度も婚約を失敗した私はどこの家からも相手にされないんだ!」
歴史が長く裕福なアロイスの子爵家だが、好条件とはいえ下位貴族で曰く付きとなれば寄って来る家はないようだ。
「そうですか、わかりました。ですが条件がございます」
「条件とは?私はなんでもするぞ!」
彼の不幸はいま始まった。
あなたにおすすめの小説
貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。
全てを奪われてしまいそうなので、ざまぁします!!
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
義母に全てを奪われたジュディ。何とかメイドの仕事を見つけるも義母がお金の無心にやって来ます。
私、もう我慢の限界なんですっ!!
婚約破棄されてイラッときたから、目についた男に婚約申し込んだら、幼馴染だった件
ユウキ
恋愛
苦節11年。王家から押し付けられた婚約。我慢に我慢を重ねてきた侯爵令嬢アデレイズは、王宮の人が行き交う大階段で婚約者である第三王子から、婚約破棄を告げられるのだが、いかんせんタイミングが悪すぎた。アデレイズのコンディションは最悪だったのだ。
裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!
サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。
「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」
飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう――
※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。