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仮嫁の雇用形態
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白い結婚の契約は一月もせずに締結されたわ。
なにか焦っているようにも感じたけれど、今さら彼に興味は持てない。
契約の内容は概ね互いの生活に干渉しないことだった。
それは良いのだけど、本邸の経費については少し揉めたわ。
修繕費、雑費はイーライが出すけれど、使用人の給金はなぜか私が負担するというものだ。
向こうの言い分は『本邸に住む者の責任だ』と主張したのよ。
伯爵家当主の自覚がないのかしら?
この家に行く末が見えた気がしたわ。
まったく巫山戯たことだわ、でも良いでしょう。本邸の使用人が私に忠誠を誓うなら負担しますよ。
ただし、家令だけはイーライがコキ使う人材なのだからと突っぱねてあげた。
そればかりは承服しかねるとね、あちらの弁護士も有り得ない条件だったと自覚があったらしく受け入れられた。
イーライ本人は納得してなかったけど、直接の雇用は彼なのだから当たり前よね。
あまりにゴネるので、私が『女主人に従わない家令は本邸に必要ない人材なので解雇する』と追い打ちをかけたら文句を言う口を噤んだ。
ざまぁですわ。
あまりに考えなしなのでイーライの弁護士が気の毒になったわよ。
それから生活費のことですが、イーライが出し渋って月金貨1枚なんて提示したので「不要です」と答えた。
なんてケチ臭い当主でしょう。
今後のことで揉める要因になりそうだったから辞退したのですわ。
僅かな金額で恩を売られるのも困ります。払った、払わないで下らない言い合いはしたくないので。
しかし、なにを勘違いしたのか、イーライは節約できたと喜び、雇用弁護士は冷や汗を掻いていたわ。
当たり前よ、離縁の時の慰謝料の上限に関わりますからね。
目先の利益に目が眩むなんて、おバカさん。
貴方がこちらを冷遇するほど、こちらには有利になるのよ。
***
契約してすぐに、本邸にいた家令は離れで従事することになった。
気の毒かって?全然だわ。
イーライと同様に私を見下していましたからね、虐げられた妻などに素直に尽くすわけがないもの。
でも、本邸から出ていけと言われた時はあまりにもショックだった様子。
ついでに、残った使用人を集めて宣言しました。
「私にとって家令は目障りな存在でした、女主人に尽くせない使用人に給与は払いたくありませんから。執事と侍女、その他も同様です、働く気がないと判断した者は解雇です」
やや恫喝に近い物言いに流石に太々しい態度だった執事長と侍女長が怯んだ。
しかし、そこは長年雇用されていた古狸たち『ならば、別邸に移動します』とイーライに付こうとしたわ。
別に引き止めませんが?
給与が高いだけで無能な上級使用人などこちらから願い下げですから。
彼ら二人は私に侮蔑の視線をくれると別邸へと去っていったわ。
別邸には必要最低限の使用人は確保済みのようだから果たして雇ってくれるかどうか。
案の定、5分もしないうちに本邸に戻されて悄気ていたわ。
私にあんな視線を向けて置いて雇用しろと言って来た。分厚い面の皮を鞣してあげたい。
「荷物を纏めて出て行きなさい、紹介状は書きません。どうしても欲しいならば旦那様にお願いするのね」
私は冷たく追い払いました。
彼らは素直に応じるわけがなく、散々喚いたり泣いて縋って鬱陶しかったので憲兵隊を呼ぶと脅しました。
解雇されたあげく逮捕されたら、今後の人生は真っ暗だと判断した彼らはスゴスゴと出て行きました。
はぁ、無駄に疲れました。
後に、タウンハウスの義両親へ泣きついたようですが、イーライが不要とした人材と判断したようで門前払いされたようです。息子に甘い二人ですから当然の結果かと。
蟄居した義両親には上級使用人に払う金子の余裕はなかったみたい。
うーん、どうやら想像以上にガバイカ家は財政難のようです。資金繰りは大丈夫なのでしょうか?
イーライが本邸の管理を私に任せたのはその辺の事情があったのかも。屋敷を維持管理する上で一番お金がかかるのは人件費ですもの。
まんまと私は押し付けられ……いいえ、嵌められたのですね。
本邸に住まわせてくれるから、少なからず妻の立場を尊重してくれたと勘違いしてしまいました。
なんと悔しい!
この調子では白い結婚期間の満了を待たずして離縁になりそうだわ。
ちなみに、他の使用人たちの雇用ですが、4割くらい出て行きました。
というか解雇です。
反抗的な態度を崩さなかった連中はお払い箱にされて当然です。
退職金も貰えず紹介状もない彼らはどうする気だったのか……。
大方、タウンハウスで雇って貰えると考えていたのかもしれませんね。
数日後、執事長たちと同様にあしらわれた彼らは屋敷に戻ってきて土下座してきました。
ですが、いまの私は慈悲慈愛という心が反抗期に入ってましたので全員お帰りいただきました。
なにか焦っているようにも感じたけれど、今さら彼に興味は持てない。
契約の内容は概ね互いの生活に干渉しないことだった。
それは良いのだけど、本邸の経費については少し揉めたわ。
修繕費、雑費はイーライが出すけれど、使用人の給金はなぜか私が負担するというものだ。
向こうの言い分は『本邸に住む者の責任だ』と主張したのよ。
伯爵家当主の自覚がないのかしら?
この家に行く末が見えた気がしたわ。
まったく巫山戯たことだわ、でも良いでしょう。本邸の使用人が私に忠誠を誓うなら負担しますよ。
ただし、家令だけはイーライがコキ使う人材なのだからと突っぱねてあげた。
そればかりは承服しかねるとね、あちらの弁護士も有り得ない条件だったと自覚があったらしく受け入れられた。
イーライ本人は納得してなかったけど、直接の雇用は彼なのだから当たり前よね。
あまりにゴネるので、私が『女主人に従わない家令は本邸に必要ない人材なので解雇する』と追い打ちをかけたら文句を言う口を噤んだ。
ざまぁですわ。
あまりに考えなしなのでイーライの弁護士が気の毒になったわよ。
それから生活費のことですが、イーライが出し渋って月金貨1枚なんて提示したので「不要です」と答えた。
なんてケチ臭い当主でしょう。
今後のことで揉める要因になりそうだったから辞退したのですわ。
僅かな金額で恩を売られるのも困ります。払った、払わないで下らない言い合いはしたくないので。
しかし、なにを勘違いしたのか、イーライは節約できたと喜び、雇用弁護士は冷や汗を掻いていたわ。
当たり前よ、離縁の時の慰謝料の上限に関わりますからね。
目先の利益に目が眩むなんて、おバカさん。
貴方がこちらを冷遇するほど、こちらには有利になるのよ。
***
契約してすぐに、本邸にいた家令は離れで従事することになった。
気の毒かって?全然だわ。
イーライと同様に私を見下していましたからね、虐げられた妻などに素直に尽くすわけがないもの。
でも、本邸から出ていけと言われた時はあまりにもショックだった様子。
ついでに、残った使用人を集めて宣言しました。
「私にとって家令は目障りな存在でした、女主人に尽くせない使用人に給与は払いたくありませんから。執事と侍女、その他も同様です、働く気がないと判断した者は解雇です」
やや恫喝に近い物言いに流石に太々しい態度だった執事長と侍女長が怯んだ。
しかし、そこは長年雇用されていた古狸たち『ならば、別邸に移動します』とイーライに付こうとしたわ。
別に引き止めませんが?
給与が高いだけで無能な上級使用人などこちらから願い下げですから。
彼ら二人は私に侮蔑の視線をくれると別邸へと去っていったわ。
別邸には必要最低限の使用人は確保済みのようだから果たして雇ってくれるかどうか。
案の定、5分もしないうちに本邸に戻されて悄気ていたわ。
私にあんな視線を向けて置いて雇用しろと言って来た。分厚い面の皮を鞣してあげたい。
「荷物を纏めて出て行きなさい、紹介状は書きません。どうしても欲しいならば旦那様にお願いするのね」
私は冷たく追い払いました。
彼らは素直に応じるわけがなく、散々喚いたり泣いて縋って鬱陶しかったので憲兵隊を呼ぶと脅しました。
解雇されたあげく逮捕されたら、今後の人生は真っ暗だと判断した彼らはスゴスゴと出て行きました。
はぁ、無駄に疲れました。
後に、タウンハウスの義両親へ泣きついたようですが、イーライが不要とした人材と判断したようで門前払いされたようです。息子に甘い二人ですから当然の結果かと。
蟄居した義両親には上級使用人に払う金子の余裕はなかったみたい。
うーん、どうやら想像以上にガバイカ家は財政難のようです。資金繰りは大丈夫なのでしょうか?
イーライが本邸の管理を私に任せたのはその辺の事情があったのかも。屋敷を維持管理する上で一番お金がかかるのは人件費ですもの。
まんまと私は押し付けられ……いいえ、嵌められたのですね。
本邸に住まわせてくれるから、少なからず妻の立場を尊重してくれたと勘違いしてしまいました。
なんと悔しい!
この調子では白い結婚期間の満了を待たずして離縁になりそうだわ。
ちなみに、他の使用人たちの雇用ですが、4割くらい出て行きました。
というか解雇です。
反抗的な態度を崩さなかった連中はお払い箱にされて当然です。
退職金も貰えず紹介状もない彼らはどうする気だったのか……。
大方、タウンハウスで雇って貰えると考えていたのかもしれませんね。
数日後、執事長たちと同様にあしらわれた彼らは屋敷に戻ってきて土下座してきました。
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