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しおりを挟むバストル王は畏れていた、本当にサラジーヌではなくシャリーがドリアードの力を有しているのか疑心暗鬼なのだ。王子は力一杯に「彼女こそが本物」と主張していた、だが実際にはコップ一杯の水を満たした程度である。
その直後、怒ったサラジーヌは異形の姿になって城を壊すほどの技を使った。
あれは人のなせるものではない、狂ったように暴れた蔦が重厚な壁をいとも簡単に壊したのだから。
「やはりサラジーヌか本物なのだろうか、余にはわからん……一部の者はあれは悪魔の所業と疑っている。もう少し様子を見るべきだ」
文献を漁って見てもドリアードが暴れたという記述は極わずかだ。しかもそれは害意を持つ者を討つ為に渋々の体で蔦を揮ったとある。
「害意か、確かにアンセルは彼女を糾弾して窮地に陥れた、だが王族に楯突くなどあってはならん」
堂々巡りの思考に陥った王は「わからん」と匙を投げたくなる。そこにアンセルが怒りを剥き出しにした顔で王の居室へ乱入してきた。
「父上!王太子任命は保留とはどういうことです!私アンセルでは力不足と言いたいのですか?」
茹蛸のようになって怒り狂う我が子を見て王は『愚か者が』と肩を竦める。
「力不足か、そうだなその通りだよアンセル。いまは公式の場ではないから許すとして、そうではない場面でも”父上”と呼ぶおる、そういう所だよ。お前が王太子として足りないのは、不安要素しかない」
王は深く溜息をして大袈裟に嘆いてみせた、その仕草一つで『考えろ』と暗に訴えているのだが、アンセルには通じないようだった。
「私の何が不満なのでしょう?勉学も及第点を取りました、政務のほうも手伝っておりますよ」
「はあ……及第点を取ったとしてそれを超える努力はしたのか?政務を手伝う?そんなものやって当たり前のことだ馬鹿者が!」
このままでは任名するのは側妃の子エメリアン・バストル王子にする他ないとまで言われるのだ。
***
「どうしてわかって下さらないのだ!父上は頭が固い!ガチガチだよ!よりにも寄ってエメリアンの名を出すとはな、あんなボンクラが王になどなれるものか!」
プリプリと怒るアンセルの顔はまるで駄々っ子のようだ、欲しい玩具が貰えずお預けを食らった子供のそれだった。それに侍る彼の側近たちは「その通り」「わかりますとも」と言って太鼓持ちをする無能集団である。
「あぁ、シャリーに会いたい。あの可愛らしい面差し……はぁ会いたいぞ」
そういうアンセルは本当は彼女のたわわな胸を思っていた、零れそうなほどに実ったふくよかな膨らみを思い出して「ぐふふ」と微笑む。
「ひっ!今何か恐ろしい視線を感じたわ!」
シャリーは何故か胸のあたりに鳥肌がたち「気色悪い!」とゴシゴシと拭いた。
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