ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)

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新天地篇

ナザルリーフにさよならを

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契約という名の横暴を、ボクが拒否したことにより魔導士としての資格剥奪を匂わせる副会長。
「ふっふーん。上の指示に従わないならやむを得ない処遇にするけど?」

「はい、魔導士は諦めます」
「うんうん、そうよね!じゃあこれにサイン……!はぁ?諦めるですって!?」

だって別に肩書が欲しいわけじゃないし、ただの偵察だから。
とりあえず想像通りの腐った機関だというのはわかった、だから長居は無用だなってことで。

「ラミンも良いよな?べつに肩書要らないだろ」
「はいです!坊ちゃんと旅が出来ればそれで良いのですぅ♪」
「だから言ったではないか、人と関わると碌なことがないのである!」

肩の上でグルドがプリプリ怒った、胡桃を一個あげればすぐに黙る。単純だな。


そそくさと退室しようとしたボクらに信じられないと副会長が叫ぶ。
「ちょっと待ちなさいよ!逆らえば一生魔導士になれないのよ!今後ずっとよ!?」
「ええ、別にかまいませんので」

ボクはニッコリ笑うとドアを閉めた、追いかけてくる気配があったので蔦でガッチリ固定は忘れない。
だいじょうぶ、ボクらが外に出れば解くから。でも今は尿意とやらが来ても我慢してね。

「ラミン、人間の尿意とはどんな感覚だろうね」
「さぁ?私達は排泄行為しませんから未知の感覚ですねぇ。出さないと病気になるらしいですよ、不便ですねぇ」

なるほど、人間の身体とは厄介なものだね。

***

呑気な事をふたりで話していたら、他3人が玄関ホールで待っていた。
「遅いので心配しましたよ」
マホガニーが普段から神経質な顔をさらにピリピリさせている、なにか不機嫌な様子だ。

「どうした、そっちでなにか良くない情報があったのか?」
「……ラミンの下僕から接触がございました」


カリュアス国で大きな動きはないらしいが、ゲノーモスが忽然と消えたという良くない報せだった。
土の加護で賜った宝石類の産出が突如とまり、金銀どころか宝石までがすべてただの土塊になって消失したらしい。

下僕からの報告によればゲノーモスは地下牢に封じこまれた様子だという、あれほど強い彼女がどうして?

「ひょっとしてフォード絡みか?」
「御明察通り、やつは精霊を弱体化する道具を所持していたようです。しかしながら不可解なのです。フォードはカリュアス城の地下牢前で息絶えていたとか」

フォードが死んだ?
いままでヤツの狙いが判然としなかったが、計画半ばで果てるとは信じられない。
ゲノーモスを負かすほどの力を持ちながら死んだとは辻褄が合わないぞ。

「ううん、わからない釈然としない。アイツは一体なにが目的で動いているのだろう」
その時、グルドが悲鳴のような声を出した。何事かと一斉に彼へ仲間の視線が集まる。

「グルド、どうしたんだお前らしくないぞ」
「……済まないのである、しばし懐で休ませてくれ」

そういうとボクの上着の内ポケットにすっぽり隠れてしまった。
「ふむ、きょうのグルドはなんか調子悪いみたいだ」

胡桃の食べ過ぎでしょうとマホガニーが憎まれ口を叩く、いつもなら這い出してきて応戦するグルドであるがそれすらしない、ほんとうに調子が悪いようだ。



協会を後に移動しつつ魔導士達から聞き込んだ情報をマホガニー達から受けたがそれほど変わった話はなかった。
ただこの国もやはり食糧難で四苦八苦してるらしく、派遣された方々の国から戻らない者が増えてきているという。

「ほう、それじゃ偉そうな協会もいずれ散会する運命じゃないか」
「左様ですね、ナザル王家も威光を失っており、更に協会も力を失うとなればナザルリーフは地図から消えるでしょう」

カリュアスもナザルリーフもどうして自滅へ向かうのだろう。
目先の欲ばかり追う人間の末路、ボクら精霊にはとんと理解できない。

ずっと無言でボクらの会話を聞き入っていたエリマが口を開いた。
「坊ちゃん、気を引き締めましょう。そもそもフォードはこの地ナザルリーフへ我らを呼び寄せようと画策していたのですから」
普段は口数の少ないエリマが進言してきた、そうだなフォードの死がフェイクである可能性が高い。
冷静な彼女が危機感を感じるほどに事態はひっ迫しているのだ。

ボク達は一刻も早くナザルから遠ざかるべく動きだした。
比較的に豊かで穏やかな国、南のサウスバーグへ向かうことで全員の意見が一致した。

「サウスと言えば海!海の幸ですよ坊ちゃん!」
こんな時だというのにアクティは子供のようにはしゃぐ、そんな彼をマホガニーが窘めたが実は僕も海っていうのを見てみたいんだ。

ちょっと楽しみだなんて浮かれていた、この時のボクは軽率だったと後に猛省することになる。

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