ソード・プリンセス! ~剣術王女の冒険日記~

吉口 浩

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王女リリアと西の魔王

魔王の部屋・2

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 扉をそっと開けて、中に入った。
 扉の小ささと裏腹に、部屋の中は広い。
 もっとも、二十メートルの大巨人が使ってる部屋なんだから、当たり前か。

「げげっ」

 ジョージが声を上げた。

「わっ」

 私の方も、思わず、声を上げてしまう。
 部屋に入ると、私たちの目の前に、西の魔王が――身長二十メートルの鉄巨人が横たわっていた。

「……寝てる時で助かりましたね」

 ホルスが言い、私はうなずいた。

「寝てるにしては、寝息が聞こえねえだが……」

 と、ジョージは疑わしげだ。
 私たちより耳がいい分、これだけ巨大な相手が寝ているのに寝息の一つも聞こえて来ないのは、おかしいと思うんだろう。

「たしかに、おかしいといえばおかしいです」

 ホルスも同意する。
 私は、別に二人に反論する気はないけど、一応、

「うーん……魔族だからかな?」

 と、言ってはみた。

「吸血鬼やゾンビなんかは確かに息をしねえだが、魔族もそうなんだべか……」

 ジョージはまだまだ、疑ってるようだ。

「まあ、その辺は考えてもしょうがないわ」

 私は、剣を抜いて、寝ている西の魔王に近づいた。

「正々堂々とは言えないけど、寝首をかかせてもらうわよ」

 流石に、あの魔貴族のラムザが大きくなったような相手と正面から戦って、簡単に勝てるとは思わない。
 相手が寝ているなら、そこを突かせてもらう。

「はあっ!」

 私は、大ジャンプして、寝ている西の魔王の胸元に飛び乗った。
 そして、その首めがけて、

 ザンッ

 と、剣を振り下ろす。
 すると、あっけないもので、西の魔王の首はちょん切れて、その頭は体から離れ、頭がごろりと床に転がった。

「魔王様!!」

 そう叫んだのは、ジョージの抱えているデュラハンの頭だった。

「これで魔王さも、おめえと仲間になっちまったな」

 ジョージはデュラハンの頭に、慰めてるんだか煽ってるんだか分からないことを言った。

「うーん……これで一件落着、なのかな……?」

 私は、魔王の体から飛び降り、自分の斬り落とした、魔王の頭の首元を見た。
 あまり見たいわけでもないけど、そこには、斬り落とされた首の断面があるはず……だった。
 でも実際には……。

「からっぽじゃない」

 私は、魔王の頭の中を見て、思わず言ってしまう。
 そう。
 魔王の頭の中身は、なにもない、からっぽだ。
 ただ、表側を形作る鎧だけがあって、その中身がないのだ。

「空、ですか?」

 ホルスが言う。

「うん、からっぽ。中身がなんもない」

 私はそう言いながら、体の方も見てみる。
 やっぱり、というべきか、体の方もからっぽだった。
 つまり、私が首を斬り落とした西の魔王の体は、中身もなんもないからっぽの鎧だったのだ。
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