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王女リリアと西の魔王
魔王の部屋・3
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「なんだ、ぬか喜びでねえか、これ、魔王じゃなくて鎧だけなんだべ」
ジョージが言った。
「で、でも、ここに鎧があるってことは、魔王と戦う時に有利にはなりますよ! 相手は生身です!」
ホルスが私を慰めてくれる。
「う、うん……魔王の中身を探しましょっ」
結局、空っぽの鎧だった西の魔王(と、私が思っていたもの)をほっておいて、部屋の中を探すことにした。
とはいえ、探すもなにもない。
部屋は確かに思ったよりも広くて、百メートル四方ばかりはあるんだけど、でも、魔王の中身が鎧と別にいるとしたら、そんな巨人が隠れるようなスペースなんてないのだ。
「中身だけお出かけなのかな?」
私が言うと、
「んでもそんなことあるもんだべか。魔王が鎧もなしに出かけたらあぶねえべ。背の高さが二十メートルもあったら、こっそりってわけにもいかねえと思うし……」
と、ジョージが疑問を言う。
「あ、見てください」
ホルスが、壁を指して言った。
指した先には、小さな扉がある。
本当に小さくて、私とホルスならなんとか通れるけど、人間の大人なら厳しいぐらいだ。
「あの扉、なんでしょう」
「ちっちゃいわね……小物置き場かなにかかな」
どちらにしろ、見かけたなら調べておいた方がいいだろう。
私は、扉のノブに手をかけた。
不用心にも、ノブには鍵がかかっていない。
私はノブを回して扉を開けた。
※
扉を開けると、そこは、小さな部屋だった。
部屋の中で、一人の背の低い男が、机に向かってなにやらいじっている。
「ふっふっふ……この力の腕輪さえあれば、わし自身も最強になれるのじゃ」
なんてつぶやきながら。
そう、私たちの目の前にいる小さな男が、お城から盗まれた秘宝、力の腕輪を机の前でいじっているというわけだ。
ちなみに、肌の色は紫色だから、おそらくは妖魔のたぐいで、人間じゃないだろう。
「こんにちは」
私は、男に声をかけてみた。
すると、男はびくっと飛び上がって、私たちの方を見る。
「な、なんじゃ、貴様ら! この部屋は厳重に立ち入り禁止じゃぞ!」
男は大慌てだ。
私は、ジョージの持ったデュラハンの頭に、
「このちっこいおじさんのこと、知ってる?」
と、聞いてみたが、
「知らん」
って、不機嫌な一言が返ってきた。
「……もしかして、あなたが、西の魔王さんじゃないんですか」
ホルスが言った。
すると、小さなおじさんは大慌てになって、
「な、なにを馬鹿な! 偉大なる最強最大の鋼鉄の男、最高の魔族である西の魔王が、わしのようなみすぼらしい男であるものか!」
と、叫ぶ。
「おじさん、そんなに自分のこと悪く言うもんじゃないわよ」
私は、思わず慰めてしまう。
「んだな、自分のことを悪く言ってると、自己肯定感が落ちるだぞ」
ジョージもうなずく。
「やかましい! とにかく、わしは、西の魔王じゃないわい!」
「じゃあ、あそこにある西の魔王の鎧は、一体誰が着てるっていうのよ」
私が言うと、
「に、西の魔王様の中身は、今、お散歩中なのじゃ!」
と、小さな紫のおじさんは言った。
「へー……あのね、私、ポッツンケップから来たんだ。こう見えても王女なの」
「それがなんじゃ」
「西の魔王の奴が、うちのお城のお宝を取ってっちゃって、力の腕輪っていうんだけど……そこの机の上にあるのにそっくりの腕輪でさ」
ホントは、私自身は力の腕輪の見た目をよくは知らないんだけど、このおじさんが自分で力の腕輪ってひとりごとを言っちゃってたもんね。
「……」
「ま、おじさんが西の魔王じゃなくて、倉庫番かなんかだっていうなら、それもいいわ。討伐するために、西の魔王を、ここで待たせてもらうから」
私はそう言って、小さな机の上に腰を下ろした。
そして、紫のおじさんをじっくりと見つめる。
ジョージが言った。
「で、でも、ここに鎧があるってことは、魔王と戦う時に有利にはなりますよ! 相手は生身です!」
ホルスが私を慰めてくれる。
「う、うん……魔王の中身を探しましょっ」
結局、空っぽの鎧だった西の魔王(と、私が思っていたもの)をほっておいて、部屋の中を探すことにした。
とはいえ、探すもなにもない。
部屋は確かに思ったよりも広くて、百メートル四方ばかりはあるんだけど、でも、魔王の中身が鎧と別にいるとしたら、そんな巨人が隠れるようなスペースなんてないのだ。
「中身だけお出かけなのかな?」
私が言うと、
「んでもそんなことあるもんだべか。魔王が鎧もなしに出かけたらあぶねえべ。背の高さが二十メートルもあったら、こっそりってわけにもいかねえと思うし……」
と、ジョージが疑問を言う。
「あ、見てください」
ホルスが、壁を指して言った。
指した先には、小さな扉がある。
本当に小さくて、私とホルスならなんとか通れるけど、人間の大人なら厳しいぐらいだ。
「あの扉、なんでしょう」
「ちっちゃいわね……小物置き場かなにかかな」
どちらにしろ、見かけたなら調べておいた方がいいだろう。
私は、扉のノブに手をかけた。
不用心にも、ノブには鍵がかかっていない。
私はノブを回して扉を開けた。
※
扉を開けると、そこは、小さな部屋だった。
部屋の中で、一人の背の低い男が、机に向かってなにやらいじっている。
「ふっふっふ……この力の腕輪さえあれば、わし自身も最強になれるのじゃ」
なんてつぶやきながら。
そう、私たちの目の前にいる小さな男が、お城から盗まれた秘宝、力の腕輪を机の前でいじっているというわけだ。
ちなみに、肌の色は紫色だから、おそらくは妖魔のたぐいで、人間じゃないだろう。
「こんにちは」
私は、男に声をかけてみた。
すると、男はびくっと飛び上がって、私たちの方を見る。
「な、なんじゃ、貴様ら! この部屋は厳重に立ち入り禁止じゃぞ!」
男は大慌てだ。
私は、ジョージの持ったデュラハンの頭に、
「このちっこいおじさんのこと、知ってる?」
と、聞いてみたが、
「知らん」
って、不機嫌な一言が返ってきた。
「……もしかして、あなたが、西の魔王さんじゃないんですか」
ホルスが言った。
すると、小さなおじさんは大慌てになって、
「な、なにを馬鹿な! 偉大なる最強最大の鋼鉄の男、最高の魔族である西の魔王が、わしのようなみすぼらしい男であるものか!」
と、叫ぶ。
「おじさん、そんなに自分のこと悪く言うもんじゃないわよ」
私は、思わず慰めてしまう。
「んだな、自分のことを悪く言ってると、自己肯定感が落ちるだぞ」
ジョージもうなずく。
「やかましい! とにかく、わしは、西の魔王じゃないわい!」
「じゃあ、あそこにある西の魔王の鎧は、一体誰が着てるっていうのよ」
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ホントは、私自身は力の腕輪の見た目をよくは知らないんだけど、このおじさんが自分で力の腕輪ってひとりごとを言っちゃってたもんね。
「……」
「ま、おじさんが西の魔王じゃなくて、倉庫番かなんかだっていうなら、それもいいわ。討伐するために、西の魔王を、ここで待たせてもらうから」
私はそう言って、小さな机の上に腰を下ろした。
そして、紫のおじさんをじっくりと見つめる。
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