ソード・プリンセス! ~剣術王女の冒険日記~

吉口 浩

文字の大きさ
27 / 33
王女リリアと西の魔王

魔王の部屋・4

しおりを挟む
 私が机の上に腰を下ろしてから、しばらくの時間が経った。
 紫のおじさんは、気まずそうな顔でだまりこくっていたけど、やがて、

「ああ、ああ、認めます! わしが西の魔王じゃわい!」

 と、叫んだ。

「やっぱりね」
「もっと早く言ってくださいよ」
「下手な嘘さ、いつまでもつくもんでねえだぞ」

 と、私とホルスとジョージは言ったが、デュラハンの頭だけはびっくりしたみたいで、

「なんと! あの輝かしき鋼鉄の魔王様の中身が、かような貧相な妖魔だったとは……」

 なんて感じで、ショックを受けた様子だった。

「あんたが、あの鎧を操って、西の魔王を名乗ってたってところかしら?」

 私が聞くと、紫のおじさんは――西の魔王は、こくりとうなずいた。

「あの鎧の頭の中に入って念じるとな、鎧全体がわしの思いのままに動くのじゃ」

 と、西の魔王は言った。

「廃城になったこの城を調査している時に見つけたんじゃ――おおかた、古代文明の遺産かなにかだとは思うが……」
「なーるほど。で、それを見つけたのをいいことに、西の魔王になって、近場の魔物を支配してたってわけなのね」

 西の魔王はうなずく。

「えーい、恥を知れ、恥を!」

 そう叫んだのはデュラハンだ。
 ま、騙されてこんな弱そうな相手に仕えていたんだから、こいつが怒るのも無理はないか。

「でも、なんで、うちのお城から、力の腕輪を盗んだのよ?」
「わしだって、鎧ばっかりに頼らずに、自分の力を強くしたいと思うわい」
「魔法の腕輪に頼って強くしたって同じことでしょ、自分で鍛えなさい」

 私が言うと、西の魔王は、

「…………はい」

 と、うなだれる。

「ドワーフの里を襲ったのはなんでなんだべ?」

 ジョージが聞くと、

「最近、鎧があちこち壊れがちで……治すために、ドワーフたちの守る魔法の金属シンメリルが必要だったのじゃ」

 と、西の魔王。

「お師匠さまの秘伝のピクルスを盗んだのはなんでなんです」

 そう言ったのはホルスだ。
 ……ホルスのお師匠のゴウトさんが盗まれたのって、ピクルスだったんだ。
 なんかすごい、魔法のアイテムだとばっかり思ってた。

「ありゃあの辺を通った部下が気まぐれに盗み出しただけじゃ、まあ美味しかったけど……」

 と、西の魔王。

「ええ、食べちゃったんですか。それじゃ、ボク、怒られちゃいますよ」

 と、ホルスもがっくりした。
 でも、食べ物を盗まれてそのまま取り返してこいなんて、ホルスのお師匠さんの言うのが無茶だと思うけどなあ……。

「なーんだ、結局のところ、別に西の魔王が新しくすごい悪さを企んでるってわけじゃなかったんだべな」

 ジョージが言う。
 ま、終わってみれば拍子抜けだ。

「えーい、なんということだ! このような小物に、我々が仕えていたなどとは……おい! 私の体を返してくれ! このチンケな魔物をぶったぎってくれる!」

 ジョージの腕の中のデュラハンの頭だけが、ぷりぷりといつまでも怒っている。
 ともあれ、一件落着というところにはなりそうだから、なんとなく和やかなムードにさえなってきたところで、

「はっはっは! なかなか面白い結末だったね!」

 なんて声が、魔王の鎧の向こう側から聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

処理中です...