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王子のお茶会に来たけれどお茶飲んでないわ
アルファの君は
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それからというもの、お茶会の回数は以前よりも少なくなっていたが、
俺とアリスはお茶会に呼ばれる度にルーク王子に挨拶だけして、その後は別室で自由に過ごす事が決まりとなっていた。
初めの頃は俺とアリス、レイナード王子とフィルさん4人で過ごしていたのだが、
ある時アリスが、
「ちょっと王宮を散歩してくる。」
と言い1人で何処かへ行くようになってしまった。
じっとしているのが嫌なのかな?
それからは毎回、俺とレイナード王子とフィルさんの3人で過ごすようになっていた。
フィルさんも初めは一緒にお茶を飲んで過ごしていたのだが、次第に最初から部屋の隅で本を読むようになり、
俺は毎回レイと2人で遊ぶようになっていた。
遊ぶといっても一緒にこの世界の卓上ゲームをしたり、それぞれ本を読んで過ごしたり、お菓子を食べながら話したり。
本当に普通の遊びだ!この世界で友達と遊んでる!!!
レイ自身も王子なのに全然気取ったりしないし、
アリスと同じ年齢で俺より年上なのだが一緒にいて楽!!!
そして…レイの優しい香りを感じると凄く幸せな気持ちになれる。
時折レイの香りをもっと近くで感じたくなるのだが、流石にそれは気持ち悪いと思うのであまり近づきすぎないよう我慢している。
…今度ツイスターゲームしてみようかな。
そうして俺達はルーク王子のお茶会へはほとんど参加する事なく、自分達で気楽に楽しく過ごし、今では王宮に行くのをとても楽しみにしている自分がいた。
そしてある日、俺の家族がアリスの別宅へとやって来た。
俺がまだ家に帰る事が出来そうにもないため様子を見に来たのだ。
アリスがどの様に説明したのかは分からないが、こちらで長期間過ごせるよう俺の荷物などを色々持って来てくれている。
あ!これお気に入りの本!今度レイに勧めてみよう!
そんな気楽に荷解きをしている俺とは別に、ヨアンは凄く心配した表情で俺を見ていた。
そしてみんなの前で、俺を今すぐ家に連れて帰ると言い始めた。
しかしアリスがヨアンを引っ張って別室に連れて行き、
しばらくしてアリスが1人で戻ってくると、俺にヨアンの事は心配ないと言ってきた。
どうやって説得したのか聞いてみたが、アリスはニッコリ笑って答えてくれなかった。
ヨアン…心配してくれてありがとう。
でもルーク王子の個人的過ぎる話なので上手く説明出来ないんだけれど…数年したら帰るから!
数年したら…俺は家に帰ってアリスと結婚するのか…?
最近は今の生活が快適すぎて、ここを離れるのが想像しにくくなっている。
そんな自分に少し驚く。
そして両親とヨアンが帰る時、3人がそれぞれ優しく俺を抱きしめてくれた。
ヨアンのハグは少し長かったけれど、何だか最後のお別れみたいな雰囲気があった。
アリス…一体何て説得したんだろ…。
それからも俺達は王宮へ通ったり、アリスの別宅で勉強や剣術を習ったりと、とても充実した毎日を過ごしていた。
しかしある時、俺はアリスの様子がおかしい事に気付く。
アリスはいつも王宮で1人何処かへ行ってしまうのだが、帰る時間には部屋に戻ってきて俺と一緒に帰っている。
しかし、最近は帰ってくる度に何だかアリスの元気が無くなっている。
そしてアリスの爽やかな香りが、少しずつだが弱くなってきている…。
香りが弱いと言う事は、アリスは気持ちが落ち込んでいるのだろうか?
今思えば…王宮で俺は婚約者であるアリスを1人にして、レイと楽しく過ごしている。
いつも一緒にいるからそんなに気にしていなかったけれど、今の状況は婚約者としてダメだよな?
俺が初めての友達と、しかも男2人で楽しんでいるから、俺達に気を遣って何処かへ行ってしまっていたのだろうか?
俺はアリスに余計な気を使わせたくない。
元気が無いのも気になる。一度きちんと話しを聞いてみよう。
俺はそう決心し、帰りにアリスと話しをしようと思った。
しかしアリスはいつものように何処かへ行って部屋に戻ってくると、アリスの香りがいつものように復活していた!
そしていつもの素敵な笑顔で俺に話しかけてきた。
「レオンス!私は、騎士になれる!!!」
「!?おっ、おめでとう!?」
俺は反射的に答えていた。
そしてその後、アリスから説明があったのだが、
アリスはこの別室で自由に過ごせるようになってから、自ら王宮にある騎士の修練場へ行き、自分を騎士の一員として受け入れてもらえるよう売り込みに行っていたようだ。
身分や年齢などで初めは相手にされていなかった様だが、
何度も諦めることなく通い続け、実力を見てもらい、とうとう騎士見習いになれるよう話しをつけて来たと言う。
アリスの行動力!
そういえば公開プロポーズも出来る子でしたね!
アリスが5年間お茶会に縛られる事をあっさりと受け入れていたのは…もしかしてこの為!?!?
俺は驚きを隠さずにアリスを見つめていたが、
アリスが心から嬉しそうに笑っているのを見て、本当に良かったと思えた。
俺とアリスも、このままこの王宮で過ごしていけそうな気がする。
そうして俺たちは数年間、ここでの生活を続ける事になる。
そんなある日、いつもの様にレイと部屋で過ごしていると、見せたいものがあるから別室へ行こうとレイが俺を誘ってきた。
もちろんフィルさんも一緒で、俺たちはレイに案内されてある部屋にやって来た。
その部屋に入ると、部屋の真ん中には大きなグランドピアノが置いてあった。
あ、ピアノだ。この世界で初めて見た。
一目見た瞬間ピアノだと分かったが、
何故か部屋に入りピアノを見た瞬間、俺はそのまま動けなくなってしまった。
レイは1人そのままピアノへ近づき、椅子に座ってピアノを弾き始めた。
どうやら俺にピアノを聴かせたかったようだ。
レイのピアノの音色は優しく、そしてとても上手にピアノを弾いた。
明るさもあるけれど、どこか淋しさも感じさせるような曲だった。
でもとても心地よくて聴きやすい。
俺の隣に居るフィルさんも、とても気持ちよさそうに聴いている。
しかし俺はレイが曲を弾き終えると、そのままゆっくりとピアノに近づき、
そのままレイの隣に座った。
そして鍵盤に右手を置き、ゆっくりと、とても簡単なメロディーを弾き始めた。
俺はとても短くて明るいメロディーを何度も何度も繰り返す。
するとしばらく隣で聞いていたレイが、俺のメロディーに合わせて伴奏を弾き始めた。
そして俺は思い出したんだ。
俺は前にいた世界でも、ピアノを弾いた事がある。
今弾いているこのメロディーを、今よりもずっと小さな手で…レイが弾いてくれているように…隣で母親が…伴奏を俺と一緒に…弾いてくれていた…。
俺は明るいメロディーを繰り返し弾き続けながら、
気が付くと静かに涙を流していた。
俺はこの世界にやって来て、
本当はずっと1人ぼっちだったんだ。
どんなにこの世界の人達が俺を大切にしてくれていても、
俺は何処かで自分はよそ者だと思っていたんだ。
俺が急にピアノを弾き始め、しかも急に泣き始めているのに、
レイは伴奏を止める事なく弾き続けてくれた。
俺は自分が転生している事、
ずっと孤独を抱いていた事は、
他の誰にも理解してはもらえないと思った。
でも、
今こうして一緒にピアノを弾いるレイには、
そんな俺を理解するのではなく、受け入れてくれている気がした。
ピアノを弾き終えると俺は静かに手を下ろし、
そのまま隣にいるレイに抱きつき、声を出して泣いていた。
10歳の誕生日会で、
オメガが嫌だと泣いた時とは違う。
俺はレイに、
俺の心の一部を受け止めてもらえた気がして、
涙が止まらなくなっていた。
そしてレイは、そのまま何も言わず、
俺が泣き止むまで、
ずっと優しく抱きしめてくれた。
俺とアリスはお茶会に呼ばれる度にルーク王子に挨拶だけして、その後は別室で自由に過ごす事が決まりとなっていた。
初めの頃は俺とアリス、レイナード王子とフィルさん4人で過ごしていたのだが、
ある時アリスが、
「ちょっと王宮を散歩してくる。」
と言い1人で何処かへ行くようになってしまった。
じっとしているのが嫌なのかな?
それからは毎回、俺とレイナード王子とフィルさんの3人で過ごすようになっていた。
フィルさんも初めは一緒にお茶を飲んで過ごしていたのだが、次第に最初から部屋の隅で本を読むようになり、
俺は毎回レイと2人で遊ぶようになっていた。
遊ぶといっても一緒にこの世界の卓上ゲームをしたり、それぞれ本を読んで過ごしたり、お菓子を食べながら話したり。
本当に普通の遊びだ!この世界で友達と遊んでる!!!
レイ自身も王子なのに全然気取ったりしないし、
アリスと同じ年齢で俺より年上なのだが一緒にいて楽!!!
そして…レイの優しい香りを感じると凄く幸せな気持ちになれる。
時折レイの香りをもっと近くで感じたくなるのだが、流石にそれは気持ち悪いと思うのであまり近づきすぎないよう我慢している。
…今度ツイスターゲームしてみようかな。
そうして俺達はルーク王子のお茶会へはほとんど参加する事なく、自分達で気楽に楽しく過ごし、今では王宮に行くのをとても楽しみにしている自分がいた。
そしてある日、俺の家族がアリスの別宅へとやって来た。
俺がまだ家に帰る事が出来そうにもないため様子を見に来たのだ。
アリスがどの様に説明したのかは分からないが、こちらで長期間過ごせるよう俺の荷物などを色々持って来てくれている。
あ!これお気に入りの本!今度レイに勧めてみよう!
そんな気楽に荷解きをしている俺とは別に、ヨアンは凄く心配した表情で俺を見ていた。
そしてみんなの前で、俺を今すぐ家に連れて帰ると言い始めた。
しかしアリスがヨアンを引っ張って別室に連れて行き、
しばらくしてアリスが1人で戻ってくると、俺にヨアンの事は心配ないと言ってきた。
どうやって説得したのか聞いてみたが、アリスはニッコリ笑って答えてくれなかった。
ヨアン…心配してくれてありがとう。
でもルーク王子の個人的過ぎる話なので上手く説明出来ないんだけれど…数年したら帰るから!
数年したら…俺は家に帰ってアリスと結婚するのか…?
最近は今の生活が快適すぎて、ここを離れるのが想像しにくくなっている。
そんな自分に少し驚く。
そして両親とヨアンが帰る時、3人がそれぞれ優しく俺を抱きしめてくれた。
ヨアンのハグは少し長かったけれど、何だか最後のお別れみたいな雰囲気があった。
アリス…一体何て説得したんだろ…。
それからも俺達は王宮へ通ったり、アリスの別宅で勉強や剣術を習ったりと、とても充実した毎日を過ごしていた。
しかしある時、俺はアリスの様子がおかしい事に気付く。
アリスはいつも王宮で1人何処かへ行ってしまうのだが、帰る時間には部屋に戻ってきて俺と一緒に帰っている。
しかし、最近は帰ってくる度に何だかアリスの元気が無くなっている。
そしてアリスの爽やかな香りが、少しずつだが弱くなってきている…。
香りが弱いと言う事は、アリスは気持ちが落ち込んでいるのだろうか?
今思えば…王宮で俺は婚約者であるアリスを1人にして、レイと楽しく過ごしている。
いつも一緒にいるからそんなに気にしていなかったけれど、今の状況は婚約者としてダメだよな?
俺が初めての友達と、しかも男2人で楽しんでいるから、俺達に気を遣って何処かへ行ってしまっていたのだろうか?
俺はアリスに余計な気を使わせたくない。
元気が無いのも気になる。一度きちんと話しを聞いてみよう。
俺はそう決心し、帰りにアリスと話しをしようと思った。
しかしアリスはいつものように何処かへ行って部屋に戻ってくると、アリスの香りがいつものように復活していた!
そしていつもの素敵な笑顔で俺に話しかけてきた。
「レオンス!私は、騎士になれる!!!」
「!?おっ、おめでとう!?」
俺は反射的に答えていた。
そしてその後、アリスから説明があったのだが、
アリスはこの別室で自由に過ごせるようになってから、自ら王宮にある騎士の修練場へ行き、自分を騎士の一員として受け入れてもらえるよう売り込みに行っていたようだ。
身分や年齢などで初めは相手にされていなかった様だが、
何度も諦めることなく通い続け、実力を見てもらい、とうとう騎士見習いになれるよう話しをつけて来たと言う。
アリスの行動力!
そういえば公開プロポーズも出来る子でしたね!
アリスが5年間お茶会に縛られる事をあっさりと受け入れていたのは…もしかしてこの為!?!?
俺は驚きを隠さずにアリスを見つめていたが、
アリスが心から嬉しそうに笑っているのを見て、本当に良かったと思えた。
俺とアリスも、このままこの王宮で過ごしていけそうな気がする。
そうして俺たちは数年間、ここでの生活を続ける事になる。
そんなある日、いつもの様にレイと部屋で過ごしていると、見せたいものがあるから別室へ行こうとレイが俺を誘ってきた。
もちろんフィルさんも一緒で、俺たちはレイに案内されてある部屋にやって来た。
その部屋に入ると、部屋の真ん中には大きなグランドピアノが置いてあった。
あ、ピアノだ。この世界で初めて見た。
一目見た瞬間ピアノだと分かったが、
何故か部屋に入りピアノを見た瞬間、俺はそのまま動けなくなってしまった。
レイは1人そのままピアノへ近づき、椅子に座ってピアノを弾き始めた。
どうやら俺にピアノを聴かせたかったようだ。
レイのピアノの音色は優しく、そしてとても上手にピアノを弾いた。
明るさもあるけれど、どこか淋しさも感じさせるような曲だった。
でもとても心地よくて聴きやすい。
俺の隣に居るフィルさんも、とても気持ちよさそうに聴いている。
しかし俺はレイが曲を弾き終えると、そのままゆっくりとピアノに近づき、
そのままレイの隣に座った。
そして鍵盤に右手を置き、ゆっくりと、とても簡単なメロディーを弾き始めた。
俺はとても短くて明るいメロディーを何度も何度も繰り返す。
するとしばらく隣で聞いていたレイが、俺のメロディーに合わせて伴奏を弾き始めた。
そして俺は思い出したんだ。
俺は前にいた世界でも、ピアノを弾いた事がある。
今弾いているこのメロディーを、今よりもずっと小さな手で…レイが弾いてくれているように…隣で母親が…伴奏を俺と一緒に…弾いてくれていた…。
俺は明るいメロディーを繰り返し弾き続けながら、
気が付くと静かに涙を流していた。
俺はこの世界にやって来て、
本当はずっと1人ぼっちだったんだ。
どんなにこの世界の人達が俺を大切にしてくれていても、
俺は何処かで自分はよそ者だと思っていたんだ。
俺が急にピアノを弾き始め、しかも急に泣き始めているのに、
レイは伴奏を止める事なく弾き続けてくれた。
俺は自分が転生している事、
ずっと孤独を抱いていた事は、
他の誰にも理解してはもらえないと思った。
でも、
今こうして一緒にピアノを弾いるレイには、
そんな俺を理解するのではなく、受け入れてくれている気がした。
ピアノを弾き終えると俺は静かに手を下ろし、
そのまま隣にいるレイに抱きつき、声を出して泣いていた。
10歳の誕生日会で、
オメガが嫌だと泣いた時とは違う。
俺はレイに、
俺の心の一部を受け止めてもらえた気がして、
涙が止まらなくなっていた。
そしてレイは、そのまま何も言わず、
俺が泣き止むまで、
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