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オメガであるということは
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俺が泣いた事について、レイもフィルさんも何も言ってこなかった。
その日の帰り、泣き腫らした俺の顔を見たアリスも、何も聞いてこなかった。
きっと2人がアリスに上手く話しておいてくれたのだろう。
そして俺はあの日からいつものように過ごせて…いなかった!
あの日レイに抱きついて泣いてしまった…レイに、抱きついてしまった!!!
泣いた事はもういい、忘れよう!
レイに抱きついてしまった日から、俺の調子がおかしい。
なんだかずっとそわそわする。
確かに日頃からもっと近くで香りを感じたいとは思っていたが…。
それがいきなりのゼロ距離になったからか!?
でもあの時は香りを感じるどころじゃなかったし…とにかくあの日以来、レイが近くにいると落ち着かない。
しかもレイの近くにいて落ち着かないならまだしも、家に帰り1人になっても落ち着かない。
自分の部屋で1人になると、ふとその日レイと話した内容を思い出し、レイに言われた事を思い出しては嬉しくなり、自分がレイに言った事を思い出して恥ずかしくなり…。
そうなると何だか我慢ができなくなって、ベッドでジタバタするを繰り返していた。
情緒不安定過ぎる!
え、俺今までどうやってレイと過ごしていたんだっけ???
ほんと誰か助けて!
俺は何とか今まで通りにしようと必死なのだが、なかなか思うようにいかない。
そんな俺の態度のせいなのか、最近レイもいつもと様子が違う。
俺と一緒にいても何か考え事をしていたり、心ここに在らずって感じだ。
俺と一緒にいて…楽しくないって思われてる?
やばい…そうだとしたら泣きそう!
いやもう当分泣きたくは無いんだけど!泣いて抱きついちゃったし!あっ、また思い出してしまった!!!
自分の事にいっぱいいっぱいだった俺は、この時ある大切な事を忘れていた。
ある日いつものように別室に行くと、部屋にはレイしかいなかった。
フィルさんがいないのは珍しい。そして、レイがすごく真剣な表情で俺を見ている。
わーあんまり見ないでほしい、緊張するから!
俺はギクシャクしながらソファーに座ると、レイが黙って俺の隣に座る。
隣!?いや、隣に座ることもあったよな。普通普通、落ち着け俺。
そんな俺にレイは落ち着いて話しかけてきた。
「レオンス、今日は大事な話があるんだ。」
「はいっ!?何でしょうか!?」
「レオンスに…お礼が言いたいんだ。」
「…お礼?」
「私は今まで、王子として何不自由なく生きてきた。
でも私は兄上のように優秀ではないし、特にやりたい事もなくただ毎日を過ごしていただけなんだ。
でもレオンスと出会い、この場所で一緒に過ごすようになった。
ここにいる時、私たちは何か特別な事をしている訳ではない。
でもたわいのない事でもとても楽しくて、レオンスに会える事を考えて毎日を過ごすようになっていた。
こんな事は初めてだった。
そしてレオンスはあの日…私がピアノを弾いた日、自分の気持ちを私に見せてくれた。
あの時、初めて他人が私に心を見せてくれた気がする…。
そして、初めて私は他人と関われた気がしたんだ。
レオンス、私と出会ってくれて、色んな気持ちを教えてくれて、本当にありがとう。」
レイが俺に微笑む。
どうしよう…すごく嬉しい!
凄く真剣な顔をしていたから何事かと思ったけど…お礼を言おうとして緊張してたのか!
でも俺はレイにお礼を言われるような事は何もしていない。
どちらかと言えば俺がお礼を言う立場だ。…泣きついちゃたし。
そう思い、話そうとした俺の言葉をレイが遮る。
「だから…もうすぐお別れだと思うと…正直とても辛いんだ。」
…お別れ?
あ、そういえば俺がここに通っているのは、期限付きだった!
もう5年経つの?早っ!レイともう会えなくなる?
よく考えれば…レイは王子様だった!
友達として一緒に過ごしすぎて正直忘れてた!そうだよ、俺王宮に通ってるんだ。
ここ王宮!!!友達の家だけど普通の家じゃない、ここ王宮!!!
俺が内心焦っていると、気づけばレイが俺の前にいて…片膝をつき、俺の片手をそっと握った。
あ、これ…見たことある。
「レオンス…君がアリスと婚約している事は分かっている。
そしてもうすぐ兄上はフィルと婚約する。そうするとレオンスはアリスと共に、この王宮から私の手の届かない所へ行ってしまう。
私は今まで何に対しても興味がなかった。
でもレオンス、私は君が欲しい。君だけは諦めたくない。
けれど、私はアリスから無理矢理レオンスを奪おうとしているんじゃない。
私がレオンスの側にいる為には、レオンスに私を選んでもらわないといけない。
どうか一度でいいから私の事を考えてみて欲しい。
私の側で、共に生きて欲しいんだ。
私と…番になって欲しい。」
そう言ってレイは、握っている俺の手の甲に軽く口づけをする。
!?!?!?!?!?!?
俺はしばらく固まった。
そして急に立ち上がり、全力で部屋から逃げ出していた。
廊下を歩きながら、俺は内心パニックになっていた。
え?レイが俺を好きって事?いや俺もレイが好きだけど、今のは…え?そういうこと????
え?これってレイがアルファで俺がオメガだから…そういう事???
あれ?俺って男と結婚するのが嫌でアリスと婚約して…でもレイと一緒にいるのは楽しくて…そのレイが俺に側にいて欲しいって…番にって…え、俺…どうしたらいいの???
俺は泣きそうになっていた。
泣きそうになりながら、ただ必死に歩き続ける。
すると遠くから、俺に近づく人影が見えた。
…アリスだ。
帰る時間になり部屋まで迎えに来てくれたんだろう。
俺はアリスに向かって早足で歩き続ける。
俺がアリスの側まで来ると、アリスは泣きそうな俺の顔を見て驚いていた。
「レオンス!?泣いているのか?…いや、レオンスがそんな顔をするのは…。」
少し考え、そしてアリスはあっさりと言う。
「ああ、レイから求婚でもされたか?」
いやちょっとほんとアリスぅぅぅぅうううう!!!
その日の帰り、泣き腫らした俺の顔を見たアリスも、何も聞いてこなかった。
きっと2人がアリスに上手く話しておいてくれたのだろう。
そして俺はあの日からいつものように過ごせて…いなかった!
あの日レイに抱きついて泣いてしまった…レイに、抱きついてしまった!!!
泣いた事はもういい、忘れよう!
レイに抱きついてしまった日から、俺の調子がおかしい。
なんだかずっとそわそわする。
確かに日頃からもっと近くで香りを感じたいとは思っていたが…。
それがいきなりのゼロ距離になったからか!?
でもあの時は香りを感じるどころじゃなかったし…とにかくあの日以来、レイが近くにいると落ち着かない。
しかもレイの近くにいて落ち着かないならまだしも、家に帰り1人になっても落ち着かない。
自分の部屋で1人になると、ふとその日レイと話した内容を思い出し、レイに言われた事を思い出しては嬉しくなり、自分がレイに言った事を思い出して恥ずかしくなり…。
そうなると何だか我慢ができなくなって、ベッドでジタバタするを繰り返していた。
情緒不安定過ぎる!
え、俺今までどうやってレイと過ごしていたんだっけ???
ほんと誰か助けて!
俺は何とか今まで通りにしようと必死なのだが、なかなか思うようにいかない。
そんな俺の態度のせいなのか、最近レイもいつもと様子が違う。
俺と一緒にいても何か考え事をしていたり、心ここに在らずって感じだ。
俺と一緒にいて…楽しくないって思われてる?
やばい…そうだとしたら泣きそう!
いやもう当分泣きたくは無いんだけど!泣いて抱きついちゃったし!あっ、また思い出してしまった!!!
自分の事にいっぱいいっぱいだった俺は、この時ある大切な事を忘れていた。
ある日いつものように別室に行くと、部屋にはレイしかいなかった。
フィルさんがいないのは珍しい。そして、レイがすごく真剣な表情で俺を見ている。
わーあんまり見ないでほしい、緊張するから!
俺はギクシャクしながらソファーに座ると、レイが黙って俺の隣に座る。
隣!?いや、隣に座ることもあったよな。普通普通、落ち着け俺。
そんな俺にレイは落ち着いて話しかけてきた。
「レオンス、今日は大事な話があるんだ。」
「はいっ!?何でしょうか!?」
「レオンスに…お礼が言いたいんだ。」
「…お礼?」
「私は今まで、王子として何不自由なく生きてきた。
でも私は兄上のように優秀ではないし、特にやりたい事もなくただ毎日を過ごしていただけなんだ。
でもレオンスと出会い、この場所で一緒に過ごすようになった。
ここにいる時、私たちは何か特別な事をしている訳ではない。
でもたわいのない事でもとても楽しくて、レオンスに会える事を考えて毎日を過ごすようになっていた。
こんな事は初めてだった。
そしてレオンスはあの日…私がピアノを弾いた日、自分の気持ちを私に見せてくれた。
あの時、初めて他人が私に心を見せてくれた気がする…。
そして、初めて私は他人と関われた気がしたんだ。
レオンス、私と出会ってくれて、色んな気持ちを教えてくれて、本当にありがとう。」
レイが俺に微笑む。
どうしよう…すごく嬉しい!
凄く真剣な顔をしていたから何事かと思ったけど…お礼を言おうとして緊張してたのか!
でも俺はレイにお礼を言われるような事は何もしていない。
どちらかと言えば俺がお礼を言う立場だ。…泣きついちゃたし。
そう思い、話そうとした俺の言葉をレイが遮る。
「だから…もうすぐお別れだと思うと…正直とても辛いんだ。」
…お別れ?
あ、そういえば俺がここに通っているのは、期限付きだった!
もう5年経つの?早っ!レイともう会えなくなる?
よく考えれば…レイは王子様だった!
友達として一緒に過ごしすぎて正直忘れてた!そうだよ、俺王宮に通ってるんだ。
ここ王宮!!!友達の家だけど普通の家じゃない、ここ王宮!!!
俺が内心焦っていると、気づけばレイが俺の前にいて…片膝をつき、俺の片手をそっと握った。
あ、これ…見たことある。
「レオンス…君がアリスと婚約している事は分かっている。
そしてもうすぐ兄上はフィルと婚約する。そうするとレオンスはアリスと共に、この王宮から私の手の届かない所へ行ってしまう。
私は今まで何に対しても興味がなかった。
でもレオンス、私は君が欲しい。君だけは諦めたくない。
けれど、私はアリスから無理矢理レオンスを奪おうとしているんじゃない。
私がレオンスの側にいる為には、レオンスに私を選んでもらわないといけない。
どうか一度でいいから私の事を考えてみて欲しい。
私の側で、共に生きて欲しいんだ。
私と…番になって欲しい。」
そう言ってレイは、握っている俺の手の甲に軽く口づけをする。
!?!?!?!?!?!?
俺はしばらく固まった。
そして急に立ち上がり、全力で部屋から逃げ出していた。
廊下を歩きながら、俺は内心パニックになっていた。
え?レイが俺を好きって事?いや俺もレイが好きだけど、今のは…え?そういうこと????
え?これってレイがアルファで俺がオメガだから…そういう事???
あれ?俺って男と結婚するのが嫌でアリスと婚約して…でもレイと一緒にいるのは楽しくて…そのレイが俺に側にいて欲しいって…番にって…え、俺…どうしたらいいの???
俺は泣きそうになっていた。
泣きそうになりながら、ただ必死に歩き続ける。
すると遠くから、俺に近づく人影が見えた。
…アリスだ。
帰る時間になり部屋まで迎えに来てくれたんだろう。
俺はアリスに向かって早足で歩き続ける。
俺がアリスの側まで来ると、アリスは泣きそうな俺の顔を見て驚いていた。
「レオンス!?泣いているのか?…いや、レオンスがそんな顔をするのは…。」
少し考え、そしてアリスはあっさりと言う。
「ああ、レイから求婚でもされたか?」
いやちょっとほんとアリスぅぅぅぅうううう!!!
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