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「え?結局してないの?あの状況で?」
次の日、イツキが驚きと呆れた様子で俺に言った。俺は元気なく頷く。
昨日、マサキ君から"人間"という言葉を聞いて激しく動揺してしまった俺は、
「…っ、俺…寝るわっ!!!」
と言って、慌てて自分の布団に潜り込んでしまった。
その後、マサキ君は俺に何も言わなかったし、何もしてこなかった。
俺は一晩中、マサキ君に触られた頬を手で抑えながら、眠れずにずっと布団にこもっていた。
もしかしたら、夜中にマサキ君が俺に何かするのではと構えていたが…結局何もなく、そのまま次の日になっていた。
マサキ君を巻き込んで申し訳なく思うけれど、マサキ君が俺ともやれるならやりたいと言ったのは意外だった。
昨日の感じだと、お願いすれば軽い気持ちでやってくれるのかもしれない。他の悪魔に頼る手もあるんだろうけど…。
俺は以前に無理やり俺を引っ張って行った奴を思い出す。
いくら生きるためだからって、やっぱり知らない奴とやるのは抵抗がある。というか…普通にマサキ君だろうが誰だろうが抵抗あるんだけどな!?
「たっくん、冗談じゃなくて本当にこのままだとまずいよ?」
「…」
隣にいるイツキが、いつも以上に真剣な顔をしている。
イツキに言われなくても、徐々に体調が悪くなっているのはもちろん、今日は特に気分が悪い。
本当にこのままだと俺は死んでしまうのか?
ーーー二度も?
その瞬間、俺は胸がぎゅっと苦しくなる感じがした。思わず胸を押さえ、その場にうずくまる。
イツキが俺に寄り添い、背中をさすってくれた。
「たっくん…やっぱりこのままだと駄目だよ。うーん、本当は僕が相手してあげたいけど…。僕、たっくん相手は我慢出来そうにないし…」
「あ、本当にお気持ちだけ受け取っておきます」
俺は一瞬体調の悪さを忘れ、少し冷静になって答える。すると、イツキは不服そうな顔をしていた。
「じゃあたっくん。どうしてマサキ君と出来ないの?彼かっこいいじゃん!」
「いや…いくらイケメンでも…いや、イケメンだからこそか…抱ける気が…」
「…え?たっくん…抱く気だったの?」
「え…?違うの?」
「…」
イツキが今まで見た事のないような表情をした。そして俺の肩にポンポンと手を当てる。
「たっくん。今からマサキ君の部屋に行って」
「え?なんで?イツキは?」
「僕はマサキ君を探してすぐに向かうから。本当に冗談なく一刻の猶予もないから」
「…」
俺は黙ってうなずいた。
実際、俺は今思考が働いていない。頭がぼんやりとしてきている。このままでは本当にまずいのかもしれない。
イツキは「とにかく先に部屋に行ってて」と言ってどこかへ駆け出し、俺はふらつきながらマサキ君の部屋へと向かった。
もう、流されよう。淫魔とかなんでもいいや。俺は何も出来ないんだから、抵抗せずに、されるがままに…。
マサキ君の部屋の前に辿り着き、ドアノブに手を掛けようとしたとき、俺のポケットでごそごそと動く気配がしていた。けれど、俺はそれを確認する気にもなれなかった。
ポケットに何が入っていたっけ?まあいいか。とにかく、俺は今…部屋に、戻ればいいんだよな?
どうしてか分からないけれど…部屋に戻って…そしてーーー。
気が付くと、俺のそばに見知らぬ人物が立っていた。俺はその人物を見る。
誰だか分からない。俺に何か用なのか?
ぼーっとしている俺に、その人物は声を掛けて来た。
「や、この前の変な淫魔君」
ようやく俺は、その人物が以前俺を襲おうとした奴だったと思い出す。俺はじっと相手を見る。相手はそんな俺を見て、不思議そうな顔をしていた。
「君ってさ、”強欲”の悪魔といるんだよね?」
俺は全く相手の話が頭に入っていなかった。相手が喋っているのをただ眺めているだけだ。けれど、相手はそんな俺に構わず話し続ける。
「でもさ、君ってあいつに独占されてる感じにも見えないし…どう?一度、俺ともやってみない?」
そう言って相手が俺のすぐそばまで近づいてくる。俺は何も言わずにじっと相手を見たままだった。
もう何も思わない。ポケットの中身が相変わらず動いていても、全く気にならない。
相手が俺に手を伸ばしていても。
その手が今、俺の頬に触れていてもーーー。
ぼんやりとした意識の中、体の感覚だけは何故か敏感になっていた。
最初は痛みを感じたが、それも一瞬で、次第に気持ち良くなっていた。
苦しさが、次第に暖かくて気持ちよくなっていた。
なんとなくだけれど、相手は俺を大事にしてくれているように感じる。俺に触れる手が優しくて、強引だけれども俺に合わせてくれている気がする…。
俺はされるがままに相手に体を預け、声を上げ、感覚に浸っていた。
そして、一瞬のような永遠のような時を過ごし、いつしか意識を失っていたーーー。
次の日、イツキが驚きと呆れた様子で俺に言った。俺は元気なく頷く。
昨日、マサキ君から"人間"という言葉を聞いて激しく動揺してしまった俺は、
「…っ、俺…寝るわっ!!!」
と言って、慌てて自分の布団に潜り込んでしまった。
その後、マサキ君は俺に何も言わなかったし、何もしてこなかった。
俺は一晩中、マサキ君に触られた頬を手で抑えながら、眠れずにずっと布団にこもっていた。
もしかしたら、夜中にマサキ君が俺に何かするのではと構えていたが…結局何もなく、そのまま次の日になっていた。
マサキ君を巻き込んで申し訳なく思うけれど、マサキ君が俺ともやれるならやりたいと言ったのは意外だった。
昨日の感じだと、お願いすれば軽い気持ちでやってくれるのかもしれない。他の悪魔に頼る手もあるんだろうけど…。
俺は以前に無理やり俺を引っ張って行った奴を思い出す。
いくら生きるためだからって、やっぱり知らない奴とやるのは抵抗がある。というか…普通にマサキ君だろうが誰だろうが抵抗あるんだけどな!?
「たっくん、冗談じゃなくて本当にこのままだとまずいよ?」
「…」
隣にいるイツキが、いつも以上に真剣な顔をしている。
イツキに言われなくても、徐々に体調が悪くなっているのはもちろん、今日は特に気分が悪い。
本当にこのままだと俺は死んでしまうのか?
ーーー二度も?
その瞬間、俺は胸がぎゅっと苦しくなる感じがした。思わず胸を押さえ、その場にうずくまる。
イツキが俺に寄り添い、背中をさすってくれた。
「たっくん…やっぱりこのままだと駄目だよ。うーん、本当は僕が相手してあげたいけど…。僕、たっくん相手は我慢出来そうにないし…」
「あ、本当にお気持ちだけ受け取っておきます」
俺は一瞬体調の悪さを忘れ、少し冷静になって答える。すると、イツキは不服そうな顔をしていた。
「じゃあたっくん。どうしてマサキ君と出来ないの?彼かっこいいじゃん!」
「いや…いくらイケメンでも…いや、イケメンだからこそか…抱ける気が…」
「…え?たっくん…抱く気だったの?」
「え…?違うの?」
「…」
イツキが今まで見た事のないような表情をした。そして俺の肩にポンポンと手を当てる。
「たっくん。今からマサキ君の部屋に行って」
「え?なんで?イツキは?」
「僕はマサキ君を探してすぐに向かうから。本当に冗談なく一刻の猶予もないから」
「…」
俺は黙ってうなずいた。
実際、俺は今思考が働いていない。頭がぼんやりとしてきている。このままでは本当にまずいのかもしれない。
イツキは「とにかく先に部屋に行ってて」と言ってどこかへ駆け出し、俺はふらつきながらマサキ君の部屋へと向かった。
もう、流されよう。淫魔とかなんでもいいや。俺は何も出来ないんだから、抵抗せずに、されるがままに…。
マサキ君の部屋の前に辿り着き、ドアノブに手を掛けようとしたとき、俺のポケットでごそごそと動く気配がしていた。けれど、俺はそれを確認する気にもなれなかった。
ポケットに何が入っていたっけ?まあいいか。とにかく、俺は今…部屋に、戻ればいいんだよな?
どうしてか分からないけれど…部屋に戻って…そしてーーー。
気が付くと、俺のそばに見知らぬ人物が立っていた。俺はその人物を見る。
誰だか分からない。俺に何か用なのか?
ぼーっとしている俺に、その人物は声を掛けて来た。
「や、この前の変な淫魔君」
ようやく俺は、その人物が以前俺を襲おうとした奴だったと思い出す。俺はじっと相手を見る。相手はそんな俺を見て、不思議そうな顔をしていた。
「君ってさ、”強欲”の悪魔といるんだよね?」
俺は全く相手の話が頭に入っていなかった。相手が喋っているのをただ眺めているだけだ。けれど、相手はそんな俺に構わず話し続ける。
「でもさ、君ってあいつに独占されてる感じにも見えないし…どう?一度、俺ともやってみない?」
そう言って相手が俺のすぐそばまで近づいてくる。俺は何も言わずにじっと相手を見たままだった。
もう何も思わない。ポケットの中身が相変わらず動いていても、全く気にならない。
相手が俺に手を伸ばしていても。
その手が今、俺の頬に触れていてもーーー。
ぼんやりとした意識の中、体の感覚だけは何故か敏感になっていた。
最初は痛みを感じたが、それも一瞬で、次第に気持ち良くなっていた。
苦しさが、次第に暖かくて気持ちよくなっていた。
なんとなくだけれど、相手は俺を大事にしてくれているように感じる。俺に触れる手が優しくて、強引だけれども俺に合わせてくれている気がする…。
俺はされるがままに相手に体を預け、声を上げ、感覚に浸っていた。
そして、一瞬のような永遠のような時を過ごし、いつしか意識を失っていたーーー。
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