転生したら、HEROになれるはず

追放

偉そうなヤツ

一瞬、森へ行こうかなって考えがよぎったが、流石にそれは直ぐに選択肢から削除した。

物足りなさを感じながらも、毎日の夜鍛錬をこなしていた。

１ヶ月、２ヶ月経てば経つほど……どんどん物足りなさは募っていったが、レイは忙しいのか、最近手紙もくれなくなった。
また手紙を出しても、返事は来なかった。

そんなある日、サラがまたこっちに来るらしいと村中が大騒ぎになっていた。

まるで興味がなく、ブライに｢ちょっと外に鍛練に出てくる。｣と告げ、村の外へ。
サラが来る方向とは違う野犬や野ウサギが出る草原へ行き、その奥に流れる川のほとりに向かった。
野犬の集団は相変わらず遠巻きに俺を見ている。

川のほとりに座り、川の流れを見ながら。
｢オレ、このままでいいのかな？｣
目的もなく、ただ剣を振る程、虚しさが募っていった。
少し前まではレイに失望されたくなかったから、頑張っていたが………他のヤツらは。
｢またアイツ、見放されたのかな。それとも亡くなったのか、あいつの先生が。｣
ぼんやりいろいろ考えてると、辺りが少し暗くなってきていた。
急いで村へ戻ると、サラ一行は来たらしいが、何かいつもと雰囲気が違った。
｢オマエがサラが言ってたリョーか？｣
馬に跨り、そんなに使い込まれてない鎧兜を身に着け。
構わずに無視しようと、軽く会釈だけし、横を通り過ぎようとした瞬間。

つま先で腹を蹴られた。
一瞬、呼吸が止まり、地面でもがいた。
｢望まれぬ者の分際で無視しようとは……。｣
地面を転がりながら…実は知っていたんだ、村の人が俺を避けてたから……調べたんだよ。
黒は厄わざわいをもたらす存在だって、この世界では呼ばれてる事。
｢お前など追放する事くらい簡単なんだぞ。｣
馬上から偉そうに言ってるが……。
｢サガン、それはしないって……。｣
サラは慌てた様に。
｢今、ボクは機嫌が悪いんだ。こいつをかばうなら、パパに言って、この村の税を重くしちゃうよ。｣
ある村人から。
｢もう出て行ってくれ。やっぱりお前は厄を生む。｣
多くの村人から｢出ていけ｣などと罵声がとんできた。
それをサガンと呼ばれる男は嬉しそうに見ていた。
｢ブライさん、プレートってさ、直ぐに貰えんの？｣
ゆっくりと立ち上がり、そう言うと。
｢えっ……あぁ……。でも、この村を離れて行くあてはあるのか？ギルドにもまだ入れないんだぞ。｣
｢村に居たら、迷惑かけちゃうから。｣
ブライがサガンにオレが村から追放するまでに一週間の猶予を頼み込んだ。
サガンはまた一週間後に来ると、帰って行った。
その夜、サラが家に来て。
｢出ていくって、アンタ馬鹿じゃない。税なんか関係ないじゃない。まだアンタ、何も出来ないでしょ？｣

【前の人生も貧乏くじばっかだったな。やっぱ家柄良くないとダメなのか。】
｢ありがとう。でも、人って……何とか生きていけるもんだよ。｣
｢生きていけるって……。｣
サラは何か言いかけたが、家を出て行った。
よく考えれば、サラが何か言った事が原因なんだろうから、謝るのが一番初めにする事だろって思ったのは秘密だけどな。

身支度しながら、ここを離れる事をレンやカシューには知らせておこうと手紙を出した。
ここを離れる期限も後一日になった日、この村へやって来た。
サガンと白髪混じりの小太りの男がやってきた。
｢コイツが噂の望まれぬ者か……。｣
｢そうだよ、パパ。｣
サガンが言ってた父親か。
ブライは汗をかきながら。
｢このような僻地へわざわざお越しいただきまして。｣
｢知らぬ内にこの様なモノを置いておくとは……ブライ殿、問題ですな。｣

｢それではお世話になりました。｣
頭を下げ、村を後にしようとしたが。
｢おい、待て。村を出て、生きていけるか確かめてやろう。｣
そういうと、ビートの弟子達が目の前に現れた。
｢最後に稽古をつけてやるよ。｣
｢これは私闘ではないですよね？｣
｢あぁ…。｣
その言葉を聞くと、安心して、木剣を抜いて、構えると。
一人ずつかかってこようとしてたが、気付かぬうちににやけていたが。
｢一気にかかってきても、良いんだよ。｣
木剣を振るうと、目の前に現れたビートの弟子は吹き飛んだ。
それも口から泡を吹きながら。
ビートの弟子達は慌てて、一気にかかってきたが……相手になどならなかった。
ビートの喉元に木剣を突きつけ。
｢この程度か？｣
ビートは悔しそうに唇を噛み締めていたが、自ら相手になるとは言わなかった。
｢次はどちらが相手になって下さるのかな？｣
微笑みながら、サガン親子を見ると。
顔を青くしていた。
｢では、ブライ殿………お世話になりました。プレート貰えますか？｣
ブライは少し手を震えさせながら、プレートを差し出してきた。

こうして、14歳を目前にして、住む村を追放されたのだった。