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王都
虎丸
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そこにあるのはボロボロになった屋敷。
随分、長い間……誰も住んでいないのだろう。
はっきり言えば、ここには用はない。
デュポンに住まいを構えるつもりはなかったし、家など買う金もなかった。
どの位で買えるのか知らないけど。
だが、立ち去ろうとリードを引っ張っても、虎丸は伏せて、動こうとしない。
虎丸と格闘してると、後ろから声を掛けられた。
「こんな所に客人とは珍しい。」
振り返ると、そこには小柄な老翁が立っていた。
「すいません、うちのが動こうとしなくて。」
老翁はしゃがみこんで、虎丸をジッと見つめながら。
「こ、これは………。」
老翁は虎丸の前に座り込み、手を合わせて、拝みだした。
戸惑ってると、老翁は立ち上がり、耳元で小声で。
「この御方がどなたかを言えば、マズイのは分かっておりますから、言いませぬ。もし、ココをお気に入りなら、御自由にお使い下さい。」
えっ??ここ、自由に住めんの?一瞬、喜んだが、ボロボロの屋敷を見ながら……。
〈リフォームすれば?王都なんだから、探せばしてくれるだろ。〉
虎丸を見ると、伏せたまま…チラッとこちらを見ていた。
「はぁ……ここに住みたいのか?」
虎丸は短く、吠えた。
老翁にリフォームをしても良いかを聞くと、「どうぞ、お気に召すままに。」との返答。
虎丸を見ながら、コイツ……凄いんだなって。
まぁ、改装を頼む前に腹が減った。
町中を歩きながら、小さな食堂を見つけた。
店の前を通ると、すげぇいい香りが漂っていた。
店の戸を開くと、そこには母娘が食事していた。
「あっ、もしかして……お客様ですか?」
娘らしき女の子が慌てて。
「もしかして、営業終わってる?」
母親は慌てて、片付けながら。
「いえ、営業してますよ。直ぐに致しますから。」
「この子も良い?」
虎丸を見せると、女の子は嬉しそうに。
「あっ、ワンワンだ。」
そう言いながら、ギュッと抱きついた。
「他にお客さんもいないので、どうぞ。」
適当にオススメを頼むと、厨房からは凄くイイ香りが漂ってきた。
女の子は虎丸に抱きついたままだった。
「ほら、リザ……お客さんに迷惑かけないの。」
厨房からお母さんはたしなめる。
「だって、このワンワン……フワフワなんだよ。ワンワン、迷惑じゃないよね?」
リザは虎丸に問いかけた。
虎丸は目を細めていた。
「まぁ、良いですよ。虎丸も嫌じゃないみたいだし。」
「すいません……。お待たせしました。」
そう言いながら、テーブルに料理が置かれた。
そこには久々に見る美味しそうな料理が。
「ほら、リザ………これ、持っていって。」
虎丸用に盛られた器を置き。
たっぷりの野菜と肉が煮込まれた料理を一口、口に運ぶと……。
「美味しい………。」
心からあふれ出した感想だった。
この店に来るまでいくつも店があったが、そこは何処も客が入っていた。
この店も立地が悪いとかはなく、客がいないのが理解出来なかった。
「そうだよ、ママの料理は美味しいんだよ。王都一なんだから。」
リザは焼かれた肉に食らいつく虎丸の隣で立ち上がり、胸を張っていた。
お母さんを見ると、やや表情が曇っていた。
何かあるんだろうなって思いながら、食事を終え、店を出る事にした。
虎丸用の料理はリザの相手をしてくれたお礼だと言われたので、お礼を言い、店を後にした。
「ワンワン、また来てね。」
リザは手を左右に振りながら。
さて、あの屋敷直してくれる大工探すか……。
だが、何も分からないココではどう探していいかも分からない。
〈はぁ……、商業ギルドに行けば、情報集まるんじゃないか?〉
あっ、それもそうだよな。
早速、商業ギルドに行き、聞くと。
「大工?その様な職は聞いた事が……。」
説明すると。
「あぁ、石工ですね?」
この世界には大工という職はないようだ。数年暮らしてるが、人とあんまり関わってないからな。
「今すぐに何とか出来る石工は……残念ながらいないと思われます……。あっ、一人だけおられますが……やはり難しいかと。」
受付の人は何とも言いにくそうに言葉を選びながら。
「えっと、その人に一度、会えますか?交渉してみますから。」
受付の人は何度も少し待てば、他の方も手が空きますからと。
その石工って、そんなに何か問題あるのかと不安になりながらも……無理に教えてもらった。
「多分、酒場にいらっしゃると思います。」
随分、長い間……誰も住んでいないのだろう。
はっきり言えば、ここには用はない。
デュポンに住まいを構えるつもりはなかったし、家など買う金もなかった。
どの位で買えるのか知らないけど。
だが、立ち去ろうとリードを引っ張っても、虎丸は伏せて、動こうとしない。
虎丸と格闘してると、後ろから声を掛けられた。
「こんな所に客人とは珍しい。」
振り返ると、そこには小柄な老翁が立っていた。
「すいません、うちのが動こうとしなくて。」
老翁はしゃがみこんで、虎丸をジッと見つめながら。
「こ、これは………。」
老翁は虎丸の前に座り込み、手を合わせて、拝みだした。
戸惑ってると、老翁は立ち上がり、耳元で小声で。
「この御方がどなたかを言えば、マズイのは分かっておりますから、言いませぬ。もし、ココをお気に入りなら、御自由にお使い下さい。」
えっ??ここ、自由に住めんの?一瞬、喜んだが、ボロボロの屋敷を見ながら……。
〈リフォームすれば?王都なんだから、探せばしてくれるだろ。〉
虎丸を見ると、伏せたまま…チラッとこちらを見ていた。
「はぁ……ここに住みたいのか?」
虎丸は短く、吠えた。
老翁にリフォームをしても良いかを聞くと、「どうぞ、お気に召すままに。」との返答。
虎丸を見ながら、コイツ……凄いんだなって。
まぁ、改装を頼む前に腹が減った。
町中を歩きながら、小さな食堂を見つけた。
店の前を通ると、すげぇいい香りが漂っていた。
店の戸を開くと、そこには母娘が食事していた。
「あっ、もしかして……お客様ですか?」
娘らしき女の子が慌てて。
「もしかして、営業終わってる?」
母親は慌てて、片付けながら。
「いえ、営業してますよ。直ぐに致しますから。」
「この子も良い?」
虎丸を見せると、女の子は嬉しそうに。
「あっ、ワンワンだ。」
そう言いながら、ギュッと抱きついた。
「他にお客さんもいないので、どうぞ。」
適当にオススメを頼むと、厨房からは凄くイイ香りが漂ってきた。
女の子は虎丸に抱きついたままだった。
「ほら、リザ……お客さんに迷惑かけないの。」
厨房からお母さんはたしなめる。
「だって、このワンワン……フワフワなんだよ。ワンワン、迷惑じゃないよね?」
リザは虎丸に問いかけた。
虎丸は目を細めていた。
「まぁ、良いですよ。虎丸も嫌じゃないみたいだし。」
「すいません……。お待たせしました。」
そう言いながら、テーブルに料理が置かれた。
そこには久々に見る美味しそうな料理が。
「ほら、リザ………これ、持っていって。」
虎丸用に盛られた器を置き。
たっぷりの野菜と肉が煮込まれた料理を一口、口に運ぶと……。
「美味しい………。」
心からあふれ出した感想だった。
この店に来るまでいくつも店があったが、そこは何処も客が入っていた。
この店も立地が悪いとかはなく、客がいないのが理解出来なかった。
「そうだよ、ママの料理は美味しいんだよ。王都一なんだから。」
リザは焼かれた肉に食らいつく虎丸の隣で立ち上がり、胸を張っていた。
お母さんを見ると、やや表情が曇っていた。
何かあるんだろうなって思いながら、食事を終え、店を出る事にした。
虎丸用の料理はリザの相手をしてくれたお礼だと言われたので、お礼を言い、店を後にした。
「ワンワン、また来てね。」
リザは手を左右に振りながら。
さて、あの屋敷直してくれる大工探すか……。
だが、何も分からないココではどう探していいかも分からない。
〈はぁ……、商業ギルドに行けば、情報集まるんじゃないか?〉
あっ、それもそうだよな。
早速、商業ギルドに行き、聞くと。
「大工?その様な職は聞いた事が……。」
説明すると。
「あぁ、石工ですね?」
この世界には大工という職はないようだ。数年暮らしてるが、人とあんまり関わってないからな。
「今すぐに何とか出来る石工は……残念ながらいないと思われます……。あっ、一人だけおられますが……やはり難しいかと。」
受付の人は何とも言いにくそうに言葉を選びながら。
「えっと、その人に一度、会えますか?交渉してみますから。」
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「多分、酒場にいらっしゃると思います。」
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