転生したら、HEROになれるはず

緋咲 ツバメ

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王都

無力感

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一角鹿を食い終えたのか、虎丸は戻ってきた。
何か大きくなっていた…:毛並みもさっきまでよりツヤが良くなってるよな。
もしかして、他のモンスターを食えば強くなるのか?
「そうだよ、戦いでも強くなるけど……エサの質や能力でも強くなるんだ。」
虎丸は答えてくれた。
今後は虎丸にあげるエサも考えた方が良いんだなって。
街に帰り、寝具や日用雑貨を買い揃えた。

屋敷に戻り、虎丸を屋敷において、出かける事にした。
理由としては虎丸のフェイクは上位ランカーには見抜かれる可能性が高いとの判断と……虎丸はまだ子供なので、眠たいらしい。
帯刀して、街中へ繰り出すことにした。
明日からこの屋敷の改装が始まると、多分あまり自由に出歩けなくなるだろうから。
街中をブラブラと歩いてると、ある事を思い出した。

紙を取り出し、そこに書かれた場所へ向かった。

目の前にそびえ立つ建物は派手さはなかったが、堅実な佇まいであった。
門番が門の前に立ち、街の門兵に比べても威圧感があった。

「ティーロ・カシューム殿に面会をお願い致したい。」

門番は約束がなければ、面会はできないとの一辺倒の返事であった。
仕方なく、諦める事にした。
だって、あの門番も騎士なんだよな……それにどんどん他の人も集まってくるし、怖いやん。

そういえば、お腹すいたな……。
昨日の飯屋にでも行こうかな。
店に行くと、相変わらず他に客は居なかった。
「あれ?今日はワンワン居ないの?」
女の子は少し寂しそうに迎えてくれた。
「ごめん、今日は一人なんだ。」
「また今度、連れてきてね。」
お母さんはそんな娘を何とも言えない表情で見つめていた。

料理を出しながら、小さな声で。
「閉店するんです、ここ。」
えっ、美味しいのにな。
食事を終え、店を出ると、入れ替わりにいかにもガラの良くなさそうな男達が店へと。
気になったので、聞き耳を立てた。

話はよくある話であった。
旦那が料理人でありながら、冒険者の夢を捨てれずに黙って、金を借り、冒険に出たが………音沙汰なし。
利息は何とか返していたが、借金の相手が知らない内に替わり、全額払えないなら、店を貰う。
足りない分はいい働き先を紹介してやるよ的な事だ。
ここでカッコ良く、借金を立て替えれたら良いんだが………到底無理なのは金額を聞くまでもない。
可哀想だなって、思う以外何もしてあげられない。
屋敷に戻る途中、不意に呼び止められた。
「何、そんな暗い顔してるんだ?」
振り向くと、セリが立っていた。
さっきの店の話をすると。
「可哀想だけど、男を見る目がないのが悪いんだよ。金貸しに下手に手を出せば、大怪我するぞ。」
金貸しの中には貴族の地位を金で買った様な輩も居るらしい。
この国は階級社会であり、貴族に逆らえば血縁者全て、磔も有り得るらしい。
但し、騎士や高ランクは別格らしいが。
Eランクのオレは問答無用で磔だろうな。

「ここでは結構ある話だ……忘れちまえ。」
セリは少し顔を曇らせながら、そう言った。

そうだよな、まだ知り合って間もない人を救おうだなんて………。
そんな力なんてないんだ……。

そこでセリと別れ、屋敷に戻った。
虎丸は丸くなって、眠っていた。
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