電色チョコレートヘッド

音音てすぃ

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新しい四月

8話 パープルヘッド

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無事、新聞部部活動紹介ポスターを完成させ、掲示板に貼りに行った時だ。

「廻君、遅かったね」
「あぁ、麗乃がギリギリで押し付けて……って……」

画鋲を刺していた僕は振り返る。
そこにいたのは――――

生田目なばため 柴重しえ
中学性のころから一緒、長い黒髪が特徴の女子生徒。
男子生徒から人気が高く、後輩の面倒見がいいらしい。
生徒会役員を務め、生徒会長の座を狙っているらしい。
一年生の頃は、要君含め仲が良かったが、二年生になり、クラスが変わり(彼女はB組)特に話すことはなくなった。
そうそう、要君の転校が決まってから、元気がなくなった気がする。

「生徒会への反逆行為ってことで認識していいの?」
「いやぁ……そうじゃないんだよ!こっちも拘り入れたかったっていうか……ごめんなさい」
真面目に謝ってみるといいものだ。
柴重はポーカーフェイスを崩してしまった。

「ぷっ……ごめんなさい、面白くって」
「なに笑ってんだ、こっちとら本気で柴重ちゃん怒ってると思ったんだぜ?」

最後の画鋲を刺し終えた。

僕ら二人は、掲示板を背にして並んだ。
「――――新入部員はどう?入った?」
「まず二人な」
「ふーん」

何分だろう、沈黙が続いて、環境音しか聞こえなくなった。

「後何分部活出来るかな?」
柴重は腕時計を見た。
黒と黄色のカッコイイ時計だ。

「一分」
「当たり。よくわかったね」
よくわかる。
だって掲示板の上には時計があるんだもん。
顔を上げればいつだって確認できるし、黙って立っているから目に付く。

「じゃあ帰ろうか廻君」
そう言って柴重が足を僕から遠ざけようとした時。

「なぁ……」
僕がそれを止めていた。

「要君がいなくなってから、話したことなかったよな」
返事はない。
「柴重ちゃんはわかってるんだろ?僕のせいだって」
僕は何度かアイシグナルを送るが、背中を見せている柴重には届かない。

マズイ、この沈黙の長さは嫌われた!?
いや!それはそれでいい。
本音を言えない関係なんて御免だ。
この際、本音をぶちまけてやる。

「知ってたよ……葛城さんから聞いた」

思考が止まった。

葛城が?
どうして部外者に?
まぁ関係がなかったわけではないけれど。

「要君が悪いやつだって聞いた。けど……正直わかんないよ」

柴重の表情は曇り始めた、けど、僕は言わないとならない。

「僕だって、柴重ちゃんと同じく、要君を悪者なんて思いたくないよ。でも実際僕は命を狙われた。やられっぱなしでヘラヘラしていられる程、過去が大切な人間じゃないんだよ、僕はね」

踵を返す。
どうしようもない感情は、時が解決してくれる。
僕がどうにかしようなんて、おこがましい。

僕は振り返らなかった。
でも、距離を縮めたたかったのは彼女の方だった。

「待って、」

柴重は、僕を追いかけて、左手を掴んでいた。

「どうした?」
と、とぼけてみたものの、予想外の動きで心拍数が急に上昇し、体中の血管が幾つか死んだ。
ドキドキしたのは言うまでもない。

「私はさ、私はさぁ…あ!」

柴重は俯いたまま手を強く握った。
「あの、少し痛いです……柴重さん?」

「さびし……かったんだよぉ……!」

「あのここで泣かれると、非常にマズイというか、昨日散々やらかしたので、学校で変な噂がたちそうなので……」

「しるかぁあ!」

ついに泣き出してしまった。
ダムの決壊ってこんな感じなんだろうな。

「いつも……仲が良かった二人と、ずっと仲よく学校生活できるかなぁ?って思ってたのに……いきなりぃ!?意味わかんないって感じだよ!」

これが柴重の溜まりに溜まった感情だったのか。
僕は、これを引き出してやる義務がある。
たとえ、どんなにくだらないことでさえも。

「あぁ、そうか。柴重ちゃんも背負っていたものがあるんだな」

人は、時々、他人からはどうでもいいことを全力で背負う時がある。
そして、心と体が耐えられなくなった時、崩壊する。

「本当は要君にいなくなってほしくなかったし、記憶なくたってここで生活すればいいじゃんって思ってるし……」

「うんうん……」

僕はその後、彼女の発酵した叫びを二時間聞き続けた。

こんなんで間を修復できるなら安い、易い。
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