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17.峰打ち
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「推奨、退避」
「ですよねー」
敵が発砲を開始。
僕とキリカは左右それぞれの柱へ走ってとりあえず退避した。
そして僕らも先程奪った銃を装備、発砲!しかし訓練すらしたことがないのだ、キリカは当たりもしない。持っているのも辛そうだ。
確かにライフルは重い。自動拳銃ならよかったのだが。
「キリカ、もう銃はいい!」
「忠告前に弾切れ……こっからどうすればいいの!?」
「僕がどうにかする!」
正直銃なんて珍しいものミルザンドでは扱ったことがない。
僕は彼らに近づくことにした。こちらの火力をぶつけるにはそれしかない。
「ほいっ」
僕はライフルを柱から放り投げた。
すると人が飛び出したと思ったのか、その銃は僕の身代わりになって銃弾を浴びた。
その隙を見て射線外へ飛び出し、「鬼神剣」を発動、高速で駆け抜け一番奥の兵士Fを拘束した。
首にルーンナイフを突き立てて発砲を止めさせた。
「動くなよ……首に刃物あるからな……」
「わ、わかった……」
兵士FはCR1を前方へ放り投げた。
「お前ら全員だ、銃を置け!──速く!」
僕が怒鳴りつけると、兵士達ではゆっくりと銃を置く。
「キリカ!今だ!」
僕の前方──兵士の後方──白い閃光が駆け抜けた。
「オトメ君、三人やった。全員峰打ち」
「お手柄だ!」
僕は拘束していた兵士を壁に激突させ気絶させた。
残りの兵士はすぐに銃を取り、発砲を再開した。
「くそっ……コイツら!」
しかし、超近距離では僕らに当たらない。
「キリカは残り三人を……あと四人は僕がやる」
「まかせて」
キリカは隙のない動きで三人をあっという間に峰打ちで無力化した。ほとんどが頭部を狙った打撃、兜を割る勢いだった。
一方僕の方は、兵士が銃は当たらないと判断し、剣を構えた。
近接戦闘は大得意だ。
「キョウスケ、頼むよ」
「rr了解です」
キリカの「りりりー」を真似ているらしい。彼女も「了解」と言いたかっただけなのだろうけど……少しかわいい。
最近のキョウスケは人間味がある気がする。学習なのだろうか。
残り兵士ABGJ、AとJ二人が斬り掛かるが──イノセントの赤白い帯が三の字を描く。上から順番に三連続の回転斬り。兵士の剣は弾かれ、足から血が流れた。
「大丈夫、すぐ治る傷だ……多分」
イノセントの切れ味は僕がいままで手にした剣で最高。
ただし打ち合いには弱く、盾にするとすぐに刀身が悪くなるので注意しなければいけない。
「クッソ!」
立ち尽くすBと僕に斬り掛かるG、僕は足を払い顔に蹴りを入れた。兜が固い、すごく足が痛い。
「最後はお前だ」
痛みを頑張って無視して、兵士Bを見るが彼は僕の目の前にはいなかった。
「あれ、どこに……」
「後方」
「オトメ君、後ろ!」
「はi?」
「くたばれ人殺し!」
兵士Bが振り下ろした剣を僕は左手で護衛の剣改を出現させ防いだ。
「あぶね」
護衛と言う名が付くだけに防御面の性能は素晴らしく、CPへの負担がほとんどなかった。
「何っ!この剣は……ルーイ隊長の物……」
剣を凝視した兵士は膝から崩れてしまった。
「何故だ……何故貴様がその剣を持っている!」
僕とキリカは剣を収めた。
護衛の剣改を兵士達に見せつけ、僕は真実を話すことにした。
「ルーイは、お前らの言うところの姫様を助けるために僕と戦った。結果引き分けだった。でもそこにツルバが現れて、カイナ……いや、お前らのレン姫は誘拐され、ルーイはツルバに殺された」
端的に言葉を並べてみたが簡単に信じてもらえるだろうか。
「嘘だ!ツルバ軍師がそんなことをするものか!どうせお前がルーイ隊長を殺してその剣を奪ったんだろう!」
無理だろうな。
僕がルーイの剣を持っている。この事実は彼らには死を直視させるものだっただろう。僕がルーイを殺したと結論されても無理ない。
「違う!僕は託されたんだ……姫を守って欲しいって……もう自分には出来ないからって……だから、僕はルーイの代わりにお前らの姫様を救いに来た!」
言っていて自覚する、ルーイのHPを削ったのはツルバだけじゃない。僕だってそうなのだ。自分を棚に上げているようで気持ち悪かった。でもやっぱり許せないものはある。
言いたいことが山のようで、言葉が渋滞している。それでもいい、話せ。
「僕は数週間前に皆さんの言うところのレン姫に会いました。彼女は記憶をなくしてミルザンドにいた。それを僕は見つけた」
数人が目を開いて聞いていた。レン姫の行方不明、死人の復活、記憶喪失、僕よりここでの生活が長い彼らなら結論は早いだろう。
「数日後だったかな?ルーイが僕たちを見つけて連れ戻そうとした。勿論カイナ……レン姫はルーイの記憶なんてない。その後ルーイが力ずくで取り戻そうと剣を振った。勿論僕は死にたくないから応戦した。結果は互いにボロボロ。漁夫の利でツルバに殺されたってところ。これが真実」
漁夫の利ってなんだっけ。頭にこびりつく何かを追うが途中であきらめた。
「報告と違う……本当にそれが真実だというのか?」
「どうせツルバにルーイを殺したのは僕だと報告されてんだろ。僕は自己満足でも事実を言いたかっただけだ。信じてほしいけど、信じなくてもいい。もらった剣で責任を果たすだけだ」
僕が彼らだったらどう思うだろう。隊長クラスの人間を殺したと報告された人物が本気で「僕は殺していない」と言い張り、本気で何か使命めいたものを果たそうとする人。もしかしてと疑った結果、それでも信じるなんて出来ない。命を懸けたギャンブルに近い覚悟でもない限り信じるなんて到底無理だ。
それでも僕は言いたかっただけだった。エゴでも、やっぱり偽りの像を当てられるのは気分が悪い。
だから最悪場合、全員切り倒す。
「レン姫は記憶が無い。だったら誰が殺した?心当たりはないですか?」
質問はなぜか敬語になってしまった。
姫様であった時のカイナを誰かが殺した。ここにいる全員がその結論に至ってる……かもしれない。
もしかしたら、彼らなら、容疑者に心当たりがあるかもしれない。
「俺、姫様をチラッと見たが、俺らのこと覚えてなさそうだったよな……」
「確かに……」
「本当に記憶が無い?」
「まさか……なら誰かがレン姫様を誰かが殺……」
「止めろ!そんなことするやつがいるか!」
「でも実際に」
兵士達が混乱している。
どうやら兵士達もカイナの記憶が無いことに心当たりがあるみたいだ。
「僕は──」
皆僕に注目した。
「ツルバ絡みの人間、もしくはツルバ本人が姫を殺したと思っている!」
「ハッタリもいい加減に……」
一人、兵士Gが言うと、兵士Bが割った。
「俺は……その考えを……支持する……」
小さな勇気なある声だった。
恐らくこの隊の頭だろう。
「完全に信じたわけではない。可能性の一つとしてだ。皆は城が動くと聞いたらまず最初にこの国の伝説を思い浮かべるだろう?」
僕が事前に調べておいたこと、つまり、数百年前にこの城が動いていたという話のことだろう。
「ツルバ軍師はこの城を動かしたいと言っていた。だけど昔からそれは無理だと言われてきた。俺も王様が無理だって言ってたのを思い出したよ」
王様?そりゃ王様いるよね。この上かな。
「王様が無理だと言った。なら無理だと信じるのが国民のやることだ。だけどな、俺ら兵士は知ってんだ。この城は動く」
「は?マジ?」
「エネルギー源は知らん、それには鍵が必要だ。鍵がどんななのかは王様しか知らない。それをツルバは知っている。そして今軍師は『操縦室』という所にいる」
操縦という言葉と動く城、親和性が高い組み合わせに頭がフル回転した。
つまり、ツルバは鍵を手に入れたということではないのか。
「何をしようとしているかは知らない、見に行くとだけ聞いたな……まぁつまり指名手配のあんたのいうこと全て本当なら、ツルバは王の裏切りになる。城を動かす……のは無理だが、その城を動かそうとするのはこの国では御法度だ」
彼らの法を僕は知らない。どれだけ禁忌であるかは表情で読み取るしかなかった。
「そんなに関わっちゃいけないものなの?」
「……こんな危なくてでけぇ戦車、動かそうなんてするかい?」
僕はこの国の周りの壁に多くの兵器が露出しているのを思い出した。動かしてはいけない。そんなの当たり前のことだった。
「ツルバは動かしたいと言っていたが、そん時は冗談と思ったよ。今でも思ってる。だからこの話はもしもの話だ」
そう、これはもしもの話。彼らにとって僕は仇そのものなのだから。
「そうだ、王様っているんだろ?どこにいる?その人に会って……」
喋っている内に、パブでの会話やキョウスケの収音情報を考える。どうしレン姫様という単語しか出てこなかった?おい、だれも王様の話しないじゃないか。
「レン姫様を残し、王族は数か月前に全員殺されたよ。皆知ってる。なぜお前は知らない」
「……おい、なんだそれ」
父も母も殺されたというのか。誰に?この国は狂ってるのか!
「なんだよそれ!残ったのは記憶を無くしたカイナだけだって?他の王族はどこで油売ってんだ?城のこと、鍵のこと忘れてなにやってんだよ!」
ツルバに訊くしかない。
「僕はその『操縦室』に行く、どこにある?」
「貴様、無謀とは思わないのか?俺らもまだ生きている、ツルバ軍師も魔術師としては……」
「最悪は殺していく。もう僕から言うことはない。黙って通せ、ツルバに直接聞きに行く」
「……そこの螺旋階段の上にある」
「隊長!何言ってんですか!」
「……助かる」
僕は示された螺旋階段へ向かう。城の中央から横に少しずれた位置から上に登っていくようだ。
「……出来るのは僕しかいないんだ。無謀でも関係ない!僕は姫様としてじゃなくて、一人の人間として生き始めたカイナを奪還して、自由に生きてもらいたい……それだけだ」
僕とキリカは上に向かうことが出来た。
「ですよねー」
敵が発砲を開始。
僕とキリカは左右それぞれの柱へ走ってとりあえず退避した。
そして僕らも先程奪った銃を装備、発砲!しかし訓練すらしたことがないのだ、キリカは当たりもしない。持っているのも辛そうだ。
確かにライフルは重い。自動拳銃ならよかったのだが。
「キリカ、もう銃はいい!」
「忠告前に弾切れ……こっからどうすればいいの!?」
「僕がどうにかする!」
正直銃なんて珍しいものミルザンドでは扱ったことがない。
僕は彼らに近づくことにした。こちらの火力をぶつけるにはそれしかない。
「ほいっ」
僕はライフルを柱から放り投げた。
すると人が飛び出したと思ったのか、その銃は僕の身代わりになって銃弾を浴びた。
その隙を見て射線外へ飛び出し、「鬼神剣」を発動、高速で駆け抜け一番奥の兵士Fを拘束した。
首にルーンナイフを突き立てて発砲を止めさせた。
「動くなよ……首に刃物あるからな……」
「わ、わかった……」
兵士FはCR1を前方へ放り投げた。
「お前ら全員だ、銃を置け!──速く!」
僕が怒鳴りつけると、兵士達ではゆっくりと銃を置く。
「キリカ!今だ!」
僕の前方──兵士の後方──白い閃光が駆け抜けた。
「オトメ君、三人やった。全員峰打ち」
「お手柄だ!」
僕は拘束していた兵士を壁に激突させ気絶させた。
残りの兵士はすぐに銃を取り、発砲を再開した。
「くそっ……コイツら!」
しかし、超近距離では僕らに当たらない。
「キリカは残り三人を……あと四人は僕がやる」
「まかせて」
キリカは隙のない動きで三人をあっという間に峰打ちで無力化した。ほとんどが頭部を狙った打撃、兜を割る勢いだった。
一方僕の方は、兵士が銃は当たらないと判断し、剣を構えた。
近接戦闘は大得意だ。
「キョウスケ、頼むよ」
「rr了解です」
キリカの「りりりー」を真似ているらしい。彼女も「了解」と言いたかっただけなのだろうけど……少しかわいい。
最近のキョウスケは人間味がある気がする。学習なのだろうか。
残り兵士ABGJ、AとJ二人が斬り掛かるが──イノセントの赤白い帯が三の字を描く。上から順番に三連続の回転斬り。兵士の剣は弾かれ、足から血が流れた。
「大丈夫、すぐ治る傷だ……多分」
イノセントの切れ味は僕がいままで手にした剣で最高。
ただし打ち合いには弱く、盾にするとすぐに刀身が悪くなるので注意しなければいけない。
「クッソ!」
立ち尽くすBと僕に斬り掛かるG、僕は足を払い顔に蹴りを入れた。兜が固い、すごく足が痛い。
「最後はお前だ」
痛みを頑張って無視して、兵士Bを見るが彼は僕の目の前にはいなかった。
「あれ、どこに……」
「後方」
「オトメ君、後ろ!」
「はi?」
「くたばれ人殺し!」
兵士Bが振り下ろした剣を僕は左手で護衛の剣改を出現させ防いだ。
「あぶね」
護衛と言う名が付くだけに防御面の性能は素晴らしく、CPへの負担がほとんどなかった。
「何っ!この剣は……ルーイ隊長の物……」
剣を凝視した兵士は膝から崩れてしまった。
「何故だ……何故貴様がその剣を持っている!」
僕とキリカは剣を収めた。
護衛の剣改を兵士達に見せつけ、僕は真実を話すことにした。
「ルーイは、お前らの言うところの姫様を助けるために僕と戦った。結果引き分けだった。でもそこにツルバが現れて、カイナ……いや、お前らのレン姫は誘拐され、ルーイはツルバに殺された」
端的に言葉を並べてみたが簡単に信じてもらえるだろうか。
「嘘だ!ツルバ軍師がそんなことをするものか!どうせお前がルーイ隊長を殺してその剣を奪ったんだろう!」
無理だろうな。
僕がルーイの剣を持っている。この事実は彼らには死を直視させるものだっただろう。僕がルーイを殺したと結論されても無理ない。
「違う!僕は託されたんだ……姫を守って欲しいって……もう自分には出来ないからって……だから、僕はルーイの代わりにお前らの姫様を救いに来た!」
言っていて自覚する、ルーイのHPを削ったのはツルバだけじゃない。僕だってそうなのだ。自分を棚に上げているようで気持ち悪かった。でもやっぱり許せないものはある。
言いたいことが山のようで、言葉が渋滞している。それでもいい、話せ。
「僕は数週間前に皆さんの言うところのレン姫に会いました。彼女は記憶をなくしてミルザンドにいた。それを僕は見つけた」
数人が目を開いて聞いていた。レン姫の行方不明、死人の復活、記憶喪失、僕よりここでの生活が長い彼らなら結論は早いだろう。
「数日後だったかな?ルーイが僕たちを見つけて連れ戻そうとした。勿論カイナ……レン姫はルーイの記憶なんてない。その後ルーイが力ずくで取り戻そうと剣を振った。勿論僕は死にたくないから応戦した。結果は互いにボロボロ。漁夫の利でツルバに殺されたってところ。これが真実」
漁夫の利ってなんだっけ。頭にこびりつく何かを追うが途中であきらめた。
「報告と違う……本当にそれが真実だというのか?」
「どうせツルバにルーイを殺したのは僕だと報告されてんだろ。僕は自己満足でも事実を言いたかっただけだ。信じてほしいけど、信じなくてもいい。もらった剣で責任を果たすだけだ」
僕が彼らだったらどう思うだろう。隊長クラスの人間を殺したと報告された人物が本気で「僕は殺していない」と言い張り、本気で何か使命めいたものを果たそうとする人。もしかしてと疑った結果、それでも信じるなんて出来ない。命を懸けたギャンブルに近い覚悟でもない限り信じるなんて到底無理だ。
それでも僕は言いたかっただけだった。エゴでも、やっぱり偽りの像を当てられるのは気分が悪い。
だから最悪場合、全員切り倒す。
「レン姫は記憶が無い。だったら誰が殺した?心当たりはないですか?」
質問はなぜか敬語になってしまった。
姫様であった時のカイナを誰かが殺した。ここにいる全員がその結論に至ってる……かもしれない。
もしかしたら、彼らなら、容疑者に心当たりがあるかもしれない。
「俺、姫様をチラッと見たが、俺らのこと覚えてなさそうだったよな……」
「確かに……」
「本当に記憶が無い?」
「まさか……なら誰かがレン姫様を誰かが殺……」
「止めろ!そんなことするやつがいるか!」
「でも実際に」
兵士達が混乱している。
どうやら兵士達もカイナの記憶が無いことに心当たりがあるみたいだ。
「僕は──」
皆僕に注目した。
「ツルバ絡みの人間、もしくはツルバ本人が姫を殺したと思っている!」
「ハッタリもいい加減に……」
一人、兵士Gが言うと、兵士Bが割った。
「俺は……その考えを……支持する……」
小さな勇気なある声だった。
恐らくこの隊の頭だろう。
「完全に信じたわけではない。可能性の一つとしてだ。皆は城が動くと聞いたらまず最初にこの国の伝説を思い浮かべるだろう?」
僕が事前に調べておいたこと、つまり、数百年前にこの城が動いていたという話のことだろう。
「ツルバ軍師はこの城を動かしたいと言っていた。だけど昔からそれは無理だと言われてきた。俺も王様が無理だって言ってたのを思い出したよ」
王様?そりゃ王様いるよね。この上かな。
「王様が無理だと言った。なら無理だと信じるのが国民のやることだ。だけどな、俺ら兵士は知ってんだ。この城は動く」
「は?マジ?」
「エネルギー源は知らん、それには鍵が必要だ。鍵がどんななのかは王様しか知らない。それをツルバは知っている。そして今軍師は『操縦室』という所にいる」
操縦という言葉と動く城、親和性が高い組み合わせに頭がフル回転した。
つまり、ツルバは鍵を手に入れたということではないのか。
「何をしようとしているかは知らない、見に行くとだけ聞いたな……まぁつまり指名手配のあんたのいうこと全て本当なら、ツルバは王の裏切りになる。城を動かす……のは無理だが、その城を動かそうとするのはこの国では御法度だ」
彼らの法を僕は知らない。どれだけ禁忌であるかは表情で読み取るしかなかった。
「そんなに関わっちゃいけないものなの?」
「……こんな危なくてでけぇ戦車、動かそうなんてするかい?」
僕はこの国の周りの壁に多くの兵器が露出しているのを思い出した。動かしてはいけない。そんなの当たり前のことだった。
「ツルバは動かしたいと言っていたが、そん時は冗談と思ったよ。今でも思ってる。だからこの話はもしもの話だ」
そう、これはもしもの話。彼らにとって僕は仇そのものなのだから。
「そうだ、王様っているんだろ?どこにいる?その人に会って……」
喋っている内に、パブでの会話やキョウスケの収音情報を考える。どうしレン姫様という単語しか出てこなかった?おい、だれも王様の話しないじゃないか。
「レン姫様を残し、王族は数か月前に全員殺されたよ。皆知ってる。なぜお前は知らない」
「……おい、なんだそれ」
父も母も殺されたというのか。誰に?この国は狂ってるのか!
「なんだよそれ!残ったのは記憶を無くしたカイナだけだって?他の王族はどこで油売ってんだ?城のこと、鍵のこと忘れてなにやってんだよ!」
ツルバに訊くしかない。
「僕はその『操縦室』に行く、どこにある?」
「貴様、無謀とは思わないのか?俺らもまだ生きている、ツルバ軍師も魔術師としては……」
「最悪は殺していく。もう僕から言うことはない。黙って通せ、ツルバに直接聞きに行く」
「……そこの螺旋階段の上にある」
「隊長!何言ってんですか!」
「……助かる」
僕は示された螺旋階段へ向かう。城の中央から横に少しずれた位置から上に登っていくようだ。
「……出来るのは僕しかいないんだ。無謀でも関係ない!僕は姫様としてじゃなくて、一人の人間として生き始めたカイナを奪還して、自由に生きてもらいたい……それだけだ」
僕とキリカは上に向かうことが出来た。
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